わかっているのに、どうしてこんなに辛いのか。
その週末は、秋がぐっと深まる予報だった。クマオと女の旅先はどこだろう。
そこも気温が下がるのかな。
私はクマオにラインを送った。女と熱い夜を過ごしているクマオ。
既読になんてならなくてもいい。返信だってなくてもいい。それでも送りたい。
「クマオさん、風邪ひかないでね」。
この一文に私は思いと気持ちを込めた。
案の定、私が眠るまでに既読になることはなかった。
翌朝、目が覚めると一番にラインを見る。1件のライン通知。クマオからであってほしい。
祈るような気持ちで開く。クマオだ!夜中の0時21分に「りこちゃん」と短い返信。
私は嬉しかった。私の名前を呼びかけるだけのライン。私が一番嬉しいライン。
用件もなく、ただ単に私のことを考えてくれたとわかるライン。
横には女がいるはずなのに。私はせつなくて涙が出そうになる。
がんばろう。今日はきっといいことあるはずだ。
土曜日だったが、私はその日も仕事に行った。