昨日の夜は疲れ果てて、
倒れるように横になりました。
半分眠りながら捻り出した話がこちら。
こういう話がウケたりするから、何がウケるのか、分かりませんね。
今日の千夜一夜
バナナマン
俺はバナナマン。
小さな無人島で暮らしているのさ。
今日は、俺の素晴らしさを世界に伝えてやるために、街に行くぜ。
サーフィンボードに乗って、大波を出迎えてやる。
お前に乗ってやるぜ。
見事なサーフィンで大波に乗ると、ビーチまで一直線。
ビーチでは、大波をもとめて世界中からプロサーファーが集まっていた。
TVや有名YouTuberもたくさん動画を撮っている。
「なんだ!あのバナナは!」
みんな大騒ぎしはじめた。
今年1番のビッグウェーブに俺は乗っているぜ!
砂浜に着くと、サーフィンのチャンピオンが近づいてきた。
「オー!素晴らしいライディングだったヨ!」
「いいものを見せてやったぜ。お前もいい波に乗ってくれよな!」
クールなやり取りはたちまち世界中の動画サイトでバズった。
街を歩くと、一緒に写真を撮ってほしいって何人も寄ってきた。
そりゃあ、一緒に写真や動画を撮りたいよな。その気持ち、分かるぜ。
「写真をTシャツしていいかい?」
「いいぜ!売上の一部は恵まれない子供に届けてくれ。あとはお前の儲けにしな」
「バナナマン、最高だぜ」
そのやり取りの動画もバズりまくっちまった。
みんな、よっぽど俺が好きみたいだな。
しょうがない奴らだぜ。
一時間もすると、街では俺のイラストのTシャツが売られ始めた。
仕事の早い奴だ。
飛ぶように売れている。
街の大スクリーンには、俺の動画が繰り返し流れてやがる。
勝手なことをしやがって。
まぁいい。いい気分だ。
なんだか歌いたくなってきた。
デカいステージで、俺は歌うぜ。
目の前にマイケル・ジャクソンJrのライブポスターがあった。
今夜、10万人が集まるのか。
ちょっと少ないが、いいだろう。
決めたぜ。ここにしよう。
「あのー、サインしてもらいたいんですけど」
振り向くと俺の後ろにはバナナマンのTシャツを着た人々の長い列ができていた。
「いいだろう」
俺はサインをしまくった。
気がつくと夜になっていた。
まだまだサインの列は続いていた。
「悪いが、そろそろ行く時間だ」
俺は、ライブが行われるスタジアムに向かった。
入り口に行くとスタッフがいた。
「チケットを見せてください」
「そんなもんは持ってないぜ。俺はステージに用があるんだ」
「あ、関係者の方ですね。あっちの入り口から入ってください」
「ありがとよ」
俺は関係者入り口に行った。
スタッフはバナナマンのTシャツを着ていた。
「あ、バナナマン!まさか今夜のステージに出るんですか?」
話のわかるやつだ。
「そうだ。シークレットゲストは、俺だ」
俺はそのまま楽屋に行くと、マイケルがいた。
「よぉ、マイケル」
「え?今バズってるバナナマンがなんでここに?」
マイケルもバナナマンのTシャツを着ていた。しかもサイン付き。
「俺は今夜のステージに出ることにした」
「オッケー、ブラザー!みんな喜ぶよ」
「任せろ。最高のステージにしようぜ」
ライブが始まった。マイケルがステージを最高に盛り上げる。
「次はシークレットゲスト!」
10万人がざわめく。
「バナナマン!」
ステージに上がった俺をスポットライトが照らし、大画面に俺が映る。
悲鳴に近い声援が上がる。
「バナナマンだ!」
「バナナマン!バナナマン!バナナマン!」
俺はマイクを掴んで、息を大きく吸った。
「俺がきた!」
さらに大きく盛り上がった。
見ると半分くらいの観客はバナナマンのTシャツを着ていた。
それから俺とマイケルは最高のステージをぶち上げてやったぜ。
みんなに見送られながら、満月が光る夜のビーチに行く。
ビーチはお祭り騒ぎだ。
「俺は帰るぜ」
マイケルは少し驚いたみたいだ。
「こんな夜にサーフボードで?」
「月あかりがあれば充分さ」
「バナナマン!バナナマン!バナナマン」
俺はコールを背中に受けながら別れを告げる。
「またな」
静かな海をパドリングして、島に帰る。
島に帰ると、満月にこう言ってやったのさ。
「いいものを見ただろう?」
いい気分だ。最高の一日だったな。
