妄想のお話です
現実世界に帰れる方だけどうぞ
前作途中なのに間に挟んですみません(。-人-。)
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「うわっ」
「おおー!」
「これはすごいね」
「うーまーそー」
独特のイントネーションで言う隣の人の目は落っこちるんじゃないかってくらい見開いてキラキラしてる。
(ラッコ兄弟言うだけあるよね)
「どうしよっか?」
「やっぱ刺身とー炭焼きとー」
意気揚々と答えてくれるけど、
「炭焼きってどこでするのさ。刺身…貝は捌いたことないよ。もうさ、相葉くん呼ぶ?」
未知すぎる食材を前に思わず最近どんどん料理の腕を上げてる人を思い浮かべて苦笑しながら言うと、脇に入っていたビニールに包まれた紙をペラリと渡される。
ご丁寧にそこに書かれていたのは箱いっぱい詰められた食材の調理方法。
「えー」
講義の声を上げるけどラッコ兄はなんのその、「七輪買いに行っちゃおっかなー」とこちらの話なんか聞きやしない。
「ちょっと!いくら何でもベランダでBBQは苦情くるよ!」
「えー」
食べることに関してはどこまでも貪欲な人をなんとかコンロでの網焼きで勘弁してもらうことにして、とりあえずパントリーの中のビールの補充を頼んで自分はキッチンを出た。
「確かここにいれたはず…あった」
廊下の普段は滅多に開けない収納スペースからお目当てのものを探し出してキッチンに戻ったら既に翔くんは居なくてあれ?と見回したらベランダに人影。
「エアコン入れてんのに…」
全開で開放されてる窓にため息つきつつ覗きに行けば鼻歌交じりにテーブルと椅子の準備をしている。
「せめて窓締めなよ」
「あ、忘れてた」
「しばらく使ってなかったからちゃんと拭いといてね。雑巾、洗面台の下に入ってるから」
そう声をかけて窓を締めつつ再びキッチンに戻った。
「さて、と。まずは手強そうなとこからかなー」
親切丁寧な紙を広げてカトラリー入れからステーキナイフを取り出して、いつも使ってる炊事用ゴム手袋とさっき持ってきた軍手を2重に嵌めたら準備完了。
発泡スチロールから一つ目の対戦相手を取り出したらなんとなくゴングが鳴った気がした。
難攻不落の栄螺とスライスに手間取った鮑をなんとか刺身にして冷蔵庫の真空チルドにしまう。
振り返ると難しい顔をしながら帆立と格闘している人。
(まあ包丁持たせるよりはマシ、かな)
隣に並んで自分も二回戦目に取り掛かった。
岩牡蠣は親切に殻付きと剥き身の両方があったから殻付きは網焼きに回して剥き身は封を切ってザルに開ける。
塩と片栗粉でもみ洗いして水気を切っている間にフライパンを用意する。
オリーブオイルを多めに入れて唐辛子とニンニクのスライス。
(冷凍にストックしといてよかった)
弱めの火で香り出しをしてる間にペーパータオルで牡蠣の水気をちゃんと抑える。
「翔くん手が止まってるー」
大方匂いに釣られたのだろう、動きが止まってフライパンの中身に興味津々の人に続きを促す。
「なになに?何ができんの?」
「ちなみにこれは今日の分じゃないからね」
先回りして伝えとかないと大変なことになりかねない。
「えー」
ブーイングを無視して火を強めて牡蠣をフライパンに投入。
火力が回復した所に白ワインを入れてアルコールを飛ばしつつ牡蠣に火を通す。
加熱し過ぎは禁物だから適当なところで火を止めてボウルに牡蠣だけを引き上げてフライパンにオイスターソースを追加して煮詰める。
ある程度汁気がなくなったら牡蠣を戻して絡めて最後に醤油を回し入れる。
いい匂いがしたところで火を止めて大きくて深目のココット皿に移してローリエ、ホールの黒胡椒、唐辛子を追加して上から全部が隠れるくらいオリーブオイルを注いで完成。
「はい、牡蠣のオイル漬け」
「おー!」
帆立との格闘をなんとか制したらしい翔くんがオーバーアクションで喜ぶ。
(まあ悪い気はしないよね)
「そのままツマミにもなるけどパスタにしてもいいからとりあえず冷蔵庫に入れとくね。茹でて絡めるだけならできるでしょ」
今週は翔くんの方が上がりが早い日が多い予定だからこうして置いとけるものがある方が安心だ。
(あとは相葉サラダ頼んどこうかな)
「味見!味見しよ!」
「あー、はいはい」
(言うと思ったけどね。味見で済めばいいけど…)
小皿を出して取り分けてる間になにやらガサゴソしていると思ったら目の前に冷酒用のグラスが差し出される。
「え?なに?ってそれ料理用!」
さっきソテーする時にも使った白ワインが小さなグラスに注がれる。
「イイじゃん、食前酒と思えばさ」
(一応シャルドネだけどさー、俺もたまに料理しながら飲んしゃう時あるけどさー)
カチンと勝手に乾杯されて透明な液体は一口で飲み干される。
諦めて自分も飲み干すと二杯目が注がれるから「これでおしまいだよ」と冷蔵庫に瓶を戻すように伝える。
自分のグラスにも二杯目を注いで渋々栓をする不服そうな口元に箸で摘んだオイル漬けを差し出すとパクリと一口で食べられた。
「んーんー!っんまーい!」
「そりゃよかった」
咀嚼してワインを飲み干して破顔して。
それを見るだけでしあわせな気持ちになる。
いろんな不安もあったけど、こうしてまた戻ってきた日常が何よりもうれしい。
「ほれ」
今度は逆に翔くんが差し出してくれるから遠慮なく口を開ける。
まだほんのり温かい牡蠣は確かに翔くんが破顔する美味しさで久しぶりに同じものを一緒に食べるしあわせを感じさせた。
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またもやもうちょい続きます(^^;
サラッとライトに…なってねぇ(~_~;)