私は、今こそ医療現場や介護現場の現実を、もっと社会に訴えていかなければならないと思います。
テレビドラマで描かれる医療や介護の世界は、あくまでも演出された世界です。実際の現場は、もっと厳しく、もっとギスギスした人間関係や空気が存在しているのかもしれません。
もちろん、人手不足や過重労働によって、看護師や介護職員が疲弊していることは理解できます。しかし、それだけが問題なのでしょうか。
「仕事だから仕方なくやっている」
「できるだけ面倒なことには関わりたくない」
「自分の仕事さえ終わればいい」
そんな気持ちが生まれてしまう職場環境になっていないでしょうか。
そして、もっと気になるのが、医療や介護の現場に広がる過度なリスク回避です。
転倒の危険があるから、一人で歩かせてはいけない。
事故につながる可能性があるから、できるだけ動かさない。
トラブルになる可能性があるから、入院患者や入所者同士の交流も制限する。
もちろん、安全を守ることは大切です。しかし、安全を優先するあまり、その人らしい生活や人間としての楽しみまで奪ってしまっていないでしょうか。
歩くことは、身体機能を維持するために大切なことです。
人と話すことは、心の健康を保つために大切なことです。
自分でできることを続けることは、その人の尊厳を守ることにもつながります。
事故を起こさないことだけが、医療や介護の目的ではありません。
患者さんや利用者さんが、少しでも元気になり、自分らしい生活を取り戻すこと。それこそが、本来目指すべき医療や介護ではないでしょうか。
そして、私たち自身にも問いかけたいと思います。
将来、自分が入院したとき、あるいは介護施設に入所したとき、そんな環境で過ごしたいと思いますか。
自分の家族を、そんな場所に安心して預けられますか。
人手不足だから仕方がない、制度だから仕方がない、事故が起きると困るから仕方がない。
そんな言葉で片付けてはいけないと思います。
医師、看護師、介護職員、それぞれの意識や職場環境、そして医療・介護制度そのものを見直す必要があります。
現場で働く人を責めるだけでは何も変わりません。しかし、現場の現実に目をつぶっていても何も変わりません。
私たちが将来、安心して暮らせる医療と介護とは何なのか。
きれいごとではなく、現場の実態をもっと社会に伝え、議論していく必要があると思います。