小説「闇の中のカタルシス」その4 池田祐司 | 俺はShattered

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50歳を過ぎて、「この調子なら100歳まで」と思っていたら、とんでもない苦境が待っていた。そこをくじけずに、生き延びようとする哀れで滑稽で笑止千万な人生の「後半部分」を再構成する決定的で虚無的なアメブロ。

8

清水君は成績は良かったが社会性がなく常識はずれであった。

とはいえ知識はふんだんにあり特に数学と歴史に詳しかった。

中学生なのに早熟でもあった。性に関する知識は豊富で、

「なぜ男性は女性に興味が湧くか?」とか

「生殖の方法と快感について」とか

「結婚制度と税の徴収システム」とか

「女性の月経に関する7つの気遣い」などと

真剣な表情で講釈してくれたのである。

そして、将来の願望についてもわかりやすく説明してくれた。

教育水準の高い高校に行き東大に進学し、安定した公務員に

なり高給を得て30歳には美人で賢い女性と結婚し2人の子供を作り

幸せな生活を目指すとスラスラと言ってのけた。

さらに公務員試験の詳細を説明してくれたりした。

将来の生活設計を緻密に頭に描き日記に書き留めているようだった。

そして、例えばクラスの女の子の品定めをして、

「A子の家庭は裕福だけど、顔に品がないからダメだ」とか

「S子の容姿は申し分ないけど、頭が悪いからダメだ」とか

「M子は賢く成績も良いけど、浮気性でダメだ」と言って、

なんと点数をつけて、まるで品評会みたいな事をしていた。

ただ、見た目の可愛い女子には無口になった。

それは多分、好きだったのだが、理由がはっきりしないから

言語化できなかったからなのかも知れない。

それはその子をアイツと呼んで行動観察していることからも

容易に了解できた。

「アイツは図書館に毎日通ってる」とか

「アイツの家は食堂を経営している」とか

「アイツの好きな食べ物はラーメン」とか

「アイツのお母さんは継母だ」とか

どこで知ったのか、調べたのか、聞きもしないのに

教えてくれるのだった。

 

9

W大学の3歳年上の前川さんは、とんでもない男だった。

趣味は麻雀に競輪競馬賭け事なんでもござれ。

そして、一番の関心ごとは女性だった。

いつも交際する女性と問題を起こしていた。

言うに事欠いて「この世で一番怖いものは、女の嫉妬である」

とまるで哲学者のように語るのである。

 

 

(続く)