ミック・ジャガーとおしゃべり 3 | 俺はShattered

俺はShattered

50歳を過ぎて、「この調子なら100歳まで」と思っていたら、とんでもない苦境が待っていた。そこをくじけずに、生き延びようとする哀れで滑稽で笑止千万な人生の「後半部分」を再構成するシュールで決定的で虚無的なアメブロ。

(つづき)
ミックと初めて会って、インタビューしたのはシドニーのバックステージ。
激しいステージを楽しんだあと、エンターテインメント・センターの内部にある、かなり広い宴会場に
招待された。まず会場のエントランスで、僕の名前が書かれた封筒にバックステージパスが3枚封入されているのを渡された。(事前にアラン・ダンから「何名、必要か?」と聞かれていた。)

会場から観衆がみな笑顔でぞろぞろ出てゆく中、その封筒の中身を見た瞬間、興奮で一気に血が沸騰するのを
感じた。まわりが見えなくなるほどに。

そのパスをスタッフに指示された通りに胸に張り付け、
そして非常ドアからバックステージへの通路を歩いて、豪華な宴会場に辿り着いた。
そこはかなり広い宴会場のような風情で、すでに40人くらいのVIPが飲み物を持って談笑していた。
ファッション関係の人たち、スポンサーのリーボック関係者、英国大使館関係者である。

当時、ジェリー・ホールは自分のブランドを立ち上げて水着を販売しているとのこと。
それまで入った事のないような業界の派手な笑い、立ち居振る舞いに茫然として、辺りを観察していた。

それでもよく観察するとみな一様にドアのある出入り口を「ちら見」してスターの登場を待ち構えているようだった。それだけでミック・ジャガーの存在の重さを痛いほど感じた。その大スターが果たして実際に会ってくれるのであろうかという疑念が湧いてきた。このままパーティーが終わり、ミックに会えないのではないかという不安が湧いてきた。そこで素晴らしい姿態を披露しているモデル連中と談笑しているジェリー・ホールに思い切って勇気を出し、恐る恐る近づいていき、話しかけてみた。「ソリー、メイ アイ、トーク チュユー?」

するとジェリー・ホールはニコニコして、
「聞いてるわよ。私についてきて」とあらぬ方向のドアに向かって歩き始めた。
そのままついてゆくと、背後に多くの人の気配を感じた。振り向くとモデル連中がどっと後ろについてきたのである。ドアの前でジェリー・ホールは立ち止まり、後方の方々に「ごめんなさい。こちらだけなの」と言って我々だけをドアの向こうへ案内した。

ドアの向こうは殺風景な非常用階段。セキュリテイ1名がでんと構えて椅子に座っていた。
その階段を下りてゆく。ジェリーがそれまでとは違った歩き方で、そそくさと下へ下へ
降りて行ったのである。

辿り着いた場所は、いかにも地下駐車場にありそうな通路で狭い。
その向こうに部屋があり、入り口には怖そうなムッとした表情のジム・キャラハンを先頭にセキュリテイが2名立っていた。ジェリー・ホールが中に招き入れた場所は、さきほどの宴会場に比べれば狭い「ドレッシング・ルーム」だった。バックミュージシャンが、自分の荷物を片付けているような様子だった。

ギタリストのジョー・サトリアーニやバックボーカル/ドラムスなど、そそくさと荷物をまとめていた。
そしてスージーと言うサンフランシスコ出身の女性キーボードに、SP51号を見せて、カモンミネコの漫画の説明をしていたら、背後に人の気配。

ミック・ジャガーだった。説明をじっと聞いていたようだ。
かなり慌てた。たじろいだ。バッグの中からノートと録音機を取り出し、興奮のあまり無言で準備を開始。
ミックはそれをじっと見ている。心臓が喉から出そうだ。ドックンドックンと興奮のあまり、逃げたくなってきた。しかし、頭の中に女子学生の手紙と会員の顔が浮かんで、興奮を抑えて、ふんばった。

そして準備してあった質問ノートを出して、たどたどしい、つたない英語で問いかけた。
するとミックは顔をしかめて、質問のたびに、間が空き、僕は英語が通じてないのかとか、
質問の内容が気に入らないのかとか、あれこれ心配し、さらにぎこちなく硬直した。

インタビューはSP52号にかなり編集して掲載した。
実は質問の順番や内容は、あとで脚色したりわかりやすく手を加えた。前後を入れ替えたりしている。
そのうち驚いた事にミックは途中で、僕のぎこちない英会話に耐えきれなくなったのか、
「ちょっとノート見せて」と質問ノートを取り上げ、そのノートにじかに答えを書き始めた
「この質問の内容は、どういう意味?」と聞いてきたりした。
その間、辺りはシーンとして静かな空間になっていた。
緊張のあまり、汗びっしょりだった。(そのノートは結果的にミック直筆ノートで大切な「お宝ノート」になっている)

僕は厚いサングラスをしていた。寝不足でまぶたが腫れていたからだ。
するとミックは「サングラスを外して」と言ったが、緊張しつつも、
「ごめんなさい」と断った。今考えるととんでもない事だった。
ミック御大が「サングラス外して、素顔見せて」と頼んできたのに、
むげに断ったのだから。興奮してマナーも何も、考えられなかった。

そのあと、ジェリー・ホールと並んで写真を小谷君が撮影した。
ジェリーはミックより身長が高いので、そっと膝を曲げていた。
ミックに腕をまわして、ミックは「エビアン」のボトルを持っていた。
なかなかいい写真である。

(つづく)
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