気になる事があったので
父に確認した
それでまたあのスイッチを押してしまった

『少し金を稼ぐようになったからって調子にのりやがって』
『お前みたいな人間はこの先もずっと何をやってもだめだ』
『この家を出ても人に迷惑をかけるから、俺が首根っこ掴んでるんだ』
『俺が死んだってお前は普通じゃないから上手く生きてはいけないからな』
『お前みたいな人間だれも必要としてないんだよ』
立ったまま大声で1時間以上罵られた。

『ごめんなさい』『そうだね』『わかった』
『お父さんの言う通りだね』
すべての罵声にそう答えた。

自室に戻ると
悔しくて悔しくて涙が溢れた
負けてたまるかと思っても
自信も尊厳も気力も何もかも消え失せていく
父が言うように
自分は本当に価値のない人間に思えてくる
父が言うように
この先もずっとだめなままな気がしてくる

翌朝父は何事もなかったように新聞をひろげコーヒーを飲んでいる
私は洗面所の鏡に映った自分の青白さに
思わず声をあげる

随分前から気づいていたけれど
子供の頃から続くこの暴言で
私は身も心も壊れてしまっている

どうか明日このまま目が覚めませんように
毎晩そう願いながら眠りにつくほどに
昔から自宅に人が訪ねてくるのが嫌いだ
訪ねてきた人が父に会って
その時はニコニコ会話を交わしても
地雷は後からやってくるから

あの人は結婚して
子供もできて
独立して一人前にやっているのに
お前たちは何なんだ?
俺は一生懸命育ててやったのに
お前の育て方が悪いからだろう

言ってもどうしようもないことを
永遠と咎められる
それが嫌で嫌で仕方がない
繰り返してしまうけれど
何と罵られようが
今の私にはもはや
どうしようもできないことだから

最近友人が結婚して近所に越してきた
子どもと2人で時間をもて余すのだろう
頻繁に連絡をくれる
そして散歩がてら会いに行くと言う
何とか理由を作って私から会いにいくのだが
どうしても子どもを連れて
家に行きたいと言う

もう大人なんだから
4回も断ったなら
何かあるんだなと察してほしい
でもまさか
友人に子どもを見せに行くだけで
その後相手の家庭が荒れるなんて
普通の家庭で育った人には
きっと想像すらできないことなんだろうなと
わかっている

普通の父親に
普通に育ててもらえていたら
私も今頃子どもを抱いて
友だちと見せ合いっこして
普通に暮らせていたのだろうか
暗い気持ちで約束の時間を待つ合間に
そんなつらないことを
つい考えてしまう

私の時間なんて
100倍速くらいで進んで
とっとと終わってくれたらいいのに
あの頃2人で聴いた歌を
聴きながら1人で眠ったら
久しぶりに
あなたが夢に現れた

2人でエレベーターに乗って
ぐんぐん上昇する間に
どれだけこんな日を待っていたのかを
一生懸命説明した
ずっとずっと伝えたかったことを
精一杯伝えた
謝りたいこと
聞いてほしいことがたくさんあるのに
上手く頭がまわらない
きつくしがみついて
今度は二度と離れないと誓った
温かくて
幸せで
それはまるで
夢のような時間だった

目が覚めて
気がつけばまた1人
私だけ
いつまでもあの場所から抜け出せない
夢の中でさえあなたは
何も話してくれないんだね

あの頃犯した私の過ちは
このままずっと
赦されないままなのだろうか
優しいあなたを傷つけた私が受ける
これを罰と呼ぶのなら
それはもう15年目に差し掛かろうとしている