子供の頃から 父がよく飛行場へ連れていってくれていた。
家からほど近いこともあるのだが
実は 父自身に思い入れがある場所なのだと
大人になって気付いた。
「海軍航空隊跡」の記念碑があり その脇の碑文には
「大東亜戦争中 この地に海軍飛行予科練習生あり
搭乗員たらんとして 日夜厳しき教育と訓練に耐へ
必勝の信念を以て敵に當たらんとこの隊門を出ず
(中略)
終戦 幾星霜往時の姿すでに無しとは言へこの地
海軍航空隊は我ら予科練の夢の跡也
以て隊址碑を建立す」とあった。
まさに父の青春であった予科練習生時代。
熱く胸を打つ一文が刻んであった。
そのDNAなのか 子供心に残る飛行機の残像なのか
ずっと 飛行機が好きだった。
もう50年以上も前 私が就職する時には
今のように女性が空港で働けるなど 思いもしない時代だった。
今や 中高生対象の職業体験の中には
地上での勤務で 航空業界を支える女性のスタッフが増え
① グランドスタッフ・・・カウンターでのチェックインの手続きなど
② 保安検査員・・・手荷物や乗客のセキュリティチェックなど
③ グランドハンドリング・・・機体の誘導 貨物の搭載など。
一昔前なら 男性の選択肢でしかなかった職種が
「飛行機好き」な女性から大人気だと言う。
「あの大きな機体を 自分の合図だけで動かせるのって 凄くないですか」
グランドハンドリング志望の女子学生が そう声を弾ませているのを聞いて
いい時代になったぁと しみじみ思うと共に
自分には もう叶わない夢なのだと諦めていたが
人生とはおもしろいものである。
縁あって 空港でお仕事をさせていただくことになった‼
ずっと持ち続けていた「憧れ」に息を吹き込んで
「応募」という種を蒔き 「採用」という芽が吹いて
やっとちいさな蕾が膨らみ始めた。
この歳でも お仕事をさせていただける幸せに 心から感謝しながら
まず デッキから臨む飛行機に手を合わせて
お仕事をスタートしている。
空を見上げると 父の微笑む姿が見えるようだ。

