「かむやらい」ありがとう! | カムカムミニキーナ公演 vol.73『かむやらい』稽古場レポート

「かむやらい」ありがとう!

松村です。

東京大阪すべて終了いたしました。
ご来場の皆さま、ありがとうございました。

カムカムミニキーナという劇団表現を
現状できうる限界まで突き詰めて形にできたのでは?と思います。

素晴らしいゲスト陣の力も非常に大きかった。

そして何より観客の皆さんの反応が、
我々の背中を押して、さらに未踏の領域へと導いてくれた気がします。

やりきったな、と言う実感です。

たくさん素敵な感想いただきました。

とっつきにくい内容かもしれないと、
いつも心配するんですが、
今回はいつにも増して、
物語や背景に興味を示してくれる声が多かった気がします。
考察することが好きな人が世間に増えたのか。
そういう人がこの劇団をかぎつけるようになってくれたのか。
作者にとってはうれしいことです。

ビフォアートークでもいっぱい話しましたし、
パンフにも詳しい背景を書きましたが、
それでもまだ触れてないこといっぱいあります。

少しここでも書いておきましょう。

ラストのシーンに関わる「古事記」「日本書紀」にある背景です。

第十代崇神大王(ミマキイリヒコイニエ~ミッキー後半のモデルです)の世で、
飢饉や反乱で世が乱れ、
大王は宮中に祀っていた二つの神様が元凶であると追放します。
その一柱が太陽神の天照大神です。
恐らく海の民族たちの神様であったのではと思われます。
大王家の起源に関わる神様、あるいは勢力のシンボルだったのでしょうか。
(倭人=ワニンのモデルです。)

追放先はまず三輪山麓です。
大神神社から山野辺の道を少し歩いていくと
檜原神社というのがそれです。
当時の都が纏向だったとすれば、そこからもすぐのところ。
歩いていける裏山といった距離感です。

追放された天照大神にはりついて、
祟りを鎮め続ける役割の巫女は崇神大王の娘がつきます。
豊鍬入姫(トヨスキイリヒメ)といいます。
その役割に一生を捧げます。
この姫の母はアラカワトベとあります。
紀国造と書いてあります。(紀州の藩主みたいな意味)

この豊鍬入姫のあと、
さらに天照大神の祟りは鎮まらず、ついに檜原神社を出ます。
そこから何年にもわたっていろんな土地に祀られてはまた移動する。
この、天照大神が伊勢に落ち着くまで祀られた場所、神社を元伊勢と言います。

豊鍬入姫のあと、
この役目を継いで担ったのは、
十一代垂仁大王(イクメイリビコイサチ~イクマイのモデルの一部)の娘、
倭姫(ヤマトヒメ)でした。
この人が身体を壊しながら一生かけて天照大神の収まり所を探し続け、
ついに伊勢の地に安住の地が定まる。

この倭姫の母は、ヒバスヒメとあります。

やらわれたもう一柱は倭大国魂神です。
これは大国というのが入っているので、
恐らく出雲勢力の神様であったと考えてしまいます。
今は大和神社に祀られます。
天照と同じように崇神大王の娘ヌナキイリヒメが巫女としてはりついてついていきますが、
髪が抜けてやせ細り、鎮めることができなかったとあります

その後、崇神大王のもとに、
大田田根子(オオタタネコ)という者を探し出せと言う占いがどこかからもたらされます。
発見されて大王のもとに現れた大田田根子は、
大物主(オオモノヌシ)という謎の神様を三輪山に祀りなさいと告げる。
今の三輪の大神神社の神様オオモノヌシが突如登場し、
事態は丸く収まる。

ちなみに「古事記」では、
出雲のオオクニヌシの神話の部分にオオモノヌシがフラグとして登場してます。
海からやってきてオオクニヌシに私を三輪山に祀れと言うだけです。
どうも後付けっぽい。

これ、まさに勢力争いの構図で、
大王家がそもそも九州から連れてきた古くからの勢力と、
同盟していた近畿にもともと広がっていた出雲を中心とした緩やかな連合勢力(だいたい蛇を不死の象徴として崇める縄文の考えを持っている)を遠ざけて、
新興の大王側近勢力が大王家の権力を強化したってことじゃないか?
そう考えると、ややこしいようでシンプルな権力闘争の話なんだと思ったり。

まあオオモノヌシも蛇の神様なので、
もともとの出雲連合勢力系におもねったととられることが多いのも確かだが、
どうもそこにさらなる手品がある気がします。

さて垂仁大王ことイクメイリビコイサチの皇后はサホビメ(ニキのモデル)。
サホビメは大王の子を身ごもっていたが、
兄サホビコを愛するあまり大王が眠っているスキに暗殺を図ろうとする。
しかし大王は蛇が首に巻き付いた夢を見て目を覚まし、暗殺はとん挫。
サホビメは出奔。
腕輪の糸に切れ目を入れ、
衣装は酒で腐らせ、
髪を剃って坊主頭にかつらをかぶり、
連れ戻そうとした追手を脱皮するようにスルリとかわして、全裸で兄のもとへ逃げます。
しかし生まれた子は大王のもとに戻し、
やがて追手の火に囲まれて兄とともに死ぬ間際、
生まれた子の名をホムチワケとすること、
後釜の皇后を姪のヒバスヒメ(倭姫の母)にすることを遺言として残します。
このサホビメの母はサホノオオクラミトベといい、
福井県の闇見(クラミ)神社で祀られています。

この時生まれたホムチワケ(イクマイ幼少期のモデル)は言葉をしゃべらない子だったが、
ある時、白い鳥を見て言葉を発し、その鳥を追って出雲の地へ向かう。
そこで歓待を受けたホムチワケは、
一夜の相手として現れたヒナガヒメの正体が大蛇であることを知り、
一目散に船でヤマトへ逃げ帰る。(ホムチワケは以後出てきません)

本当にざっくりとですが、(いや長いか)
「かむやらい」風に言うなら、
「流域」を流れて生きる蛇の女たちと、
「神域」をめぐる権力闘争を、神のイスとりとして生きる男たちの、
絡み合う構図でした。

女首長である巫女王の呼称である「トベ」たちは、
ニキのように国のために身を投げ出し、
自ら后になって王の子を生んでいく存在になっていきます。

それでも、やらわれた神々の祟りは以後も延々と続いて、大王家を苦しめます。

「古事記」「日本書紀」を読む時は
ここに注目していくと面白いんですよね。


さあ、次回公演「鶴人」はどんな物語でしょうか?

すぐに打ち合わせがスタートします。

皆さん、年末をお楽しみに!

そして「かむやらい」
配信がスタートしてますよ!ぜひ!