天門の試練  29 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「女!大人しく奥方を差し出せば
お前には危害は加えるつもりはない
退け!命を捨ててどうする?」


「あまく見られたものね・・・
きな!相手してあげるわ」


「木刀で刀に歯向かうとは・・・
よかろう、冥土に行くがよい」

間合いを積める刺客ら
目的は奥方様、ユリは意を決し
木刀ひとつで刺客の懐へ
飛び込む。


『早い!』


刺客の男がそう思った時には
喉元をひとつきされ「ぐっっ」と
声をもらし踞る。


「女相手にだらしないね~
退きな。私が相手してあげるわ。
こんな腰抜けとは訳が違うわよ
覚悟しな」


刺客の女は倒れ込む仲間を
足蹴りにし、ユリと対峙する。
互いに一歩も引くつもりはないようだ。
マンボの仲間とボッコと日々
鍛錬に明け暮れ、腕を磨いた日々が
思い出されユリは胸の高鳴りを
覚え、わくわくさえしているようにも
見え、白い歯も見えていた。


「ずいぶんと余裕じゃないかい?
奥方を出しな!見ればまだ若いんだろう
命は欲しくはないのか?」


「忠義に従い、奥方様をお守りするため
に私達はこの屋敷にご奉公してるの
奥方様を守る為ならこの命、欲しくは
ない」


きっぱり言い切ったユリ。


「駄目よ。ユリ!!」


ウンスが暗闇から飛び出してきた。
ボッコと裏門へ逃げたはずなのに・・・
ユリは何故と首を傾げる。


「奥方様が一人だけ逃げるなんて
出来ないと仰せになられて
仕方なかったのよ」


「あたり前じゃあない?
一人で助かりたいなんて思わないわ
それにきっとヨンが助けに来てくれる
はずだから何とか持ちこたえる事は
できるかな?なんなら私も・・・」


その時である
暗闇に浮かぶシルエット、固く閉じられた
門扉の上に仁王立ちするヨンの姿を
目の端に捉えたウンスは言葉に
詰まり安堵の表情を浮かべる。

颯爽と門扉から飛び降りるヨン
まるで羽が生えてるようである。


「怖い思いをさせすまなかった。
ユリ!ボッコ!ウンスを守れ!」


「はい!」


ウンスをぎゅうとだきしめたヨン
そして二人に任せ、ヨンは
刺客と対峙する。


「その方チョ・インシル殿の身内で
あろう、面構えが瓜二つ。
何故我が屋敷に侵入した!」


「何故、我が父上を失脚させた!
父上を失い、我が家督は没落したのだ。
我が妹、サンジャは心根を煩い
チェ・ヨン!そなたの正室を
望んでおるのだ。
故に、我が妹を正室に迎え入れる
責任があるとは思わないのか!」


「その刃、俺に向ければ良いものを
・・・。インシル殿は若い頃より
支えていらした王様を裏切り
徳興君殿に寝返り抹殺されたのだ。
お仕えする王様のお心も知らずに
故に自業自得とも言えるのでは
ないか?」


「黙れ!そなたが
王様のお心を掴むゆえ
父上は、主を変えたまで
ゆえに、ゆえに・・・」


ウンスやユリ、ボッコを背に
ヨンは睨み付けながら
恫喝するがインシルの倅は
聞く耳は持たず、己の欲望を
口にしならがら
『行け』と刺客に向かい顎を
動かす。


「ウンス!目を瞑っておれ」


内功を用いれば一瞬で一網打尽には
できるが、この辺りは重臣らの
屋敷が密集している地域
あちこちに被害が及ぶ恐れありと
ふんだヨンは、鬼剣でと決めた

ようだが、ウンスにみせる訳には

いかないようだ。


「我が妻を傷つけようとするのが
女人とておれば容赦はせぬ。
覚悟いたせ!」


ヨンは暗闇にそう叫ぶと
刺客の女人を一瞬で斬り捨てる。
残りの刺客三人とインシルの倅も
一瞬で斬り捨てていた。


「ふっ・・・」と息を吐くと
振り返りウンスを抱き締める。


「ユリ、ボッコ!よく妻を守ってくれた
礼を言う。だが無理はするな!
危うくなればウンスを担ぎ上げ
逃げよ。誰も傷つけたくはない
それが俺の願い故決して
無理はしてはならぬ」


「そうよ。まだ若いんだから
危ない時は一緒に逃げて・・・
今日みたく悪人に向かうことは
しないでね。
でも今日はありがと、感謝してます」


ウンスはそう言って頭を下げる
ヨンもそれに習い頭を下げていた。

ヨンに遅れる事、約四半刻
ウダルチと禁軍が王様の命により
駆けつける。
いち早く気配を察知し
ヨンは門扉を開ける。


「すまぬが後始末を・・・。
亡骸は葬ってやってくれ」


「大護軍、皆怪我もないご様子
ようございました」


「あぁ~、皆もご苦労であった。
王様に伝えてくれ。仔細は明日と」


ヨンはチュンソクにそう伝言を
頼むとウンスを横抱きにし
亡骸を見せぬようにし
屋敷内へと姿を消して行った。
ユリとボッコは一同にペコリと
頭を下げると、主夫妻の後を追う。

お門違いの逆恨みを受け
ヨンは改めて思う事があったようである。

・・・・・

皆様こんばんは。

刺客に立ち向かったユリとボッコ
よく頑張りましたね。
今宵は興奮して眠ることは
できなかったかもしれないですね。