鈴蘭  45 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「すまぬ。世話をかけた」

「はぁ…はぁ…大、大護軍の一大事故
我らがお守りするのは当たり前にて
お気になさらず・・・はぁ…はぁ…」

紅巾と呼ばれる敵の血のりを
全身に浴び肩で息するチュンソク。
懸命に護り抜いた勲章が
あちらこちらに見える。
上腕には刀傷があり
濃紺のパジの裾は斬られ
肌が見えていた。
ヨンが瞳を周りに向けると
誰も彼もそのような状態であった。
幸いにも近場の迂達赤は皆
無事のようである。

そんな時紅巾の首謀者と思われる
男がひとりこちらに向かってくる
のがちらりっとヨンが目の端に
とらえる。

「下がっておれ。
これより助太刀無用」

「ですが、お身体が・・・」

「大事ない」

ヨンもその男の前へと歩を進める。
不思議なものである
今まで命を掛け剣を交えていた
紅巾の農民と高麗軍が静かに道を
開ける。ヨンとその男の圧がそう
させるのやも知れない。

「韓山童(カンザンドウ)嫡男
児(ジ)と申す。そちの名は」

「某、高麗軍大将チェ・ヨン。
そなたらは何故ここ高麗へと脚を
踏み入れたのだ…」

「元王朝は民を蔑ろにし
己らの事ばかり…それを戒める為で
ある」

「下らぬ。」

「はぁっ?何故下らぬなど
言える…高麗とて王が民を蔑ろに
していると噂を耳にするがな。
故に陸続きの高麗をも正義の鉄拳を
食らわし、元王朝共々
打倒すべきと判断したまで…
そして下下の者が弥勒仏の下生により
民は救われるのだ」

「宗教・・・の教えと言うことか。
なれど高麗には関わりの無き事
元の領土内で反乱を起こし
我が地に脚を踏み入れなければ
命を落とす事はなかったものを」

そう呟く低く太い声が
紅巾の農民にを震えあがらせる。
ヨンは剣を抜き、児もまた剣を
抜く。「キ~ン」っと剣が交わる
音が、暗闇に包まれようとしている
辺りに木霊する。
誰も彼も固唾を飲み見守る中
ひとつの影が天高く舞う
テマンであった…と言うのも
紅巾の中不穏な動きをする者を
いち早くその目が捉えたからである

「大護軍が助太刀無用って
言ってんだよ!邪魔するな!」

紅巾のひとりの首筋に小刀を
突き付け、テマンは耳元で
そう小声で呟き、手刀を食らわすと
その紅巾の男は膝から
崩れ落ちる。
向こうでチュンソクの口元が
「よくやった」と動いているように
見える。

「我々が撤退しても次から次に
後継者がこの地を襲う手筈。
元々…いやこの地は我々の地
返してもらうまでだ!」

のちに朱元璋が頭角を表し
元から明と時代が移りかわるが
今はまだ誰も知る由もなかった。



・・・・・

「はぁ~・・・」

月夜を見上げては何度ため息を
ついたのであろうか…。

「奥様…肌寒くなりました。
どうぞ部屋へ入ってください」

「なんだかね、眠れそうに
ないのよ。色んな事が頭の中で
ぐじゃぐじゃになってしまって」

「ですが・・・」

「なんだ、月見酒か」

「あ、叔母様…どうしたんですか?
王妃様に何か異変があったんですか
なら、すぐに王妃様の元へ・・・」

「ま、待て…ウンスや落ち着き
なさい。わたしでは役不足で
あると思うが屋敷に泊まらせて
もらうぞ」

「えぇ~~~!!嬉しい~!
叔母様大好き~~!!!」

急な来訪で王妃様に異変が
あったのではと慌てふためく
ウンスを落ち着かせると
思っても見なかった吉報を
ウンスに告げる。
そのウンスのはしゃぎ様は
まるで幼子が母親に甘える様に
その懐へ深く身体を潜り込ませ
ウンスの世で言う所のハグをし
抱きしめていたのである。
なんとも経験のない叔母に
とっては眼を白黒させ
驚くばかりであった。

それから叔母の軽い食事を
用意してもらい、ウンスは
嬉しそうに他愛のない話を叔母に
聞かせ、二人仲良く客間で
床についたのであった。

「ウンスや…二親の元を離れ
この地に留まった事
後悔はしておらぬか…」

「後悔なんてしませんよ。
どこかで命のやり取りをしている
と思えば・・・辛いですが
これはあの人が生きる為に
選んだ道なんですから…
そして必ず私の元へ戻ると
約束してくれましたし
私もそう信じてますから」

「そうか生きる為か・・・
生きる意味を失い光を無くした
あやつの眼に輝きを取り戻して
くれたのは、誰であろうウンス
なのじゃ叔母として礼を申すぞ」

「礼なんて…あの人は
素直なんだと思いますよ
誰でも時代とはいえ、人を殺めて
楽しい人なんかいないと思います
から…」

「そうじゃな…ウンスは戦を
身近に感じることは初めてあろう」

「そうですね…身近は初めて
ですが、私の時代でも一部の国では
戦争ばかりしてましたよ・・・
悲しいですよね」

それからあれやこれやと遅くまで
話が尽きることはなかったが
いつの間にやら瞼を閉じ眠って
しまっていたのであった。


・・・・・

下生とは弥勒仏が降臨し
苦しむ民を救わうと言う意味の
ようです。

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