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跳ねっ返りの正室のようである。
チェ家に嫁いだ女人は元の言葉で
あろうか、誰にも通じぬ言葉で
まくし立て、「ふんっ」と
顔を背ける。
暑くも寒くもなく
心地よい季節から初夏に季節が
変わろうとしていたこの時節
それでも屋敷に顔を出さぬ
旦那様にいらいらしていたのかも
しれないのだが・・・。
使用人らはほとほと
困り果てていたのであった。
「奥方様?どうぞ気をお静めなさって
くださいませ」
「□×○□××○○○×★□べぇ~だ」
「・・・へっ?おいっおまえたち
奥方様はあかんべ~をなされたか?」
「そのようです。奥方様は
どこでそのような賎民の仕草を
覚えたのでしょうか」
「★★×□○■●べぇ~だ」
人差し指を頬にあて片目を開き
桃色に染まる舌をペロッだし
なんとも幼子のようである。
だが、この正室唯一苦手な御仁が
いるのだ・・・王様である。
王様が近寄れば、脚がぶるぶる震え
身体を支えることさえできず
腰を落とし、耳を塞ぐのである。
王妃様とは姉妹のように
なんでも話せるよき仲では
あったが王様だけは寄せ付けない
のである。
それを物陰で様子を伺っていた
テマン。隊長の命であろうか…。
己は近寄ることはせず
日に一度テマンに命じ正室の様子を
報告させていたのである。
「今日も、お、お元気でなりよりだ
テジャンも喜ぶに違いないな
さ、最近では報告するとちょっとだけ
含み笑いを浮かべるんだ!
あかんべぇ~を教えてあげたら
きっと笑顔になるに違いない!
へへっ」
テマンは独り言を呟きながら
屋敷回りには王妃様の命により
チェ尚宮が手配した衛兵が
睨みを利かせているのを確認すると
とっととその場をあとにするので
ある。
「テジャン!今日も奥方様は
お元気のご様子でした!
こうやってあかんべ~をなされて
使用人を困らせていましたよ」
テマンはその仕草を真似し
隊長に教えている。
「ふっ・・・そうか・・・
ご苦労であった…」
「あ、テジャンが笑った!
嬉しいな~へへっ」
「テマン!余計なことを・・・
他言無用である」
「は~い」
優れた身体能力の持ち主であっても
まだまだわらべのようなテマンで
ある。隊長にぎろりっと睨まれると
つんつん頭を己でパシッと
叩き、肩を竦め逃げるように
姿を消す。
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