辺りが闇から目覚める頃
ついにその時がきたようである
倭寇と言われる海賊船
何度蹴散らしても懲りずに
高麗領土である海岸線沿いの村を
襲いにやってくる…一度は都まで
侵略され王宮を明け渡した
過去があるのだが…その汚点は
耐え難い屈辱であり、二度と同じ過ちを
繰り返してはならないのである。
「チュンソク!此度の倭寇には
痛い思いをしてもらわねば
なるまい…高麗の地を侵略しようもの
ならば我ら高麗軍が容赦はせぬと
倭寇の奴らの身をもって覚えて
もらう」
『ウンスの笑顔が曇るような
ことがあってはならぬのだ。
あのように戦のない世から…
お優しい二親の元からこの地を
お選び下された愛しいウンスの為に
俺は鬼になろうぞ…ウンス?
待っておれ…すぐに戻る故』
ヨンは腹の底そう思うと
顔つきががらりと変わったのである
「はっ!」
あぁ~・・・此度も勝ち戦で
あろうとチュンソクは思う。
幾度となくともに戦場に立つ
チュンソク…逃げる賊に剣を振るう
ことはなかったが
此度は違うのやも知れぬと
思うのであった。
「皆!!上陸する前に片付けよ
何人たりともこの地を踏ますでない
よいな!!」
「「「おぉ~~~~」」」
チュンソクの激に迂達赤…禁軍の
士気があがる。
見れば小舟から飛び降り倭寇と
呼ばれる海賊どもが
浅い海岸沿いを水しぶきを飛ばし
ながらこちらに向かい駆けてくる。
その最後尾にヨンと肩を並べる
のではないかと思われる大男が
悠々自適なおかつ口の端をあげ
こちらに向かってくるのが見える。
「手出し無用あやつは俺が
仕留める」
その眼光から一時も眼を外さず
心配そうに顔をしかめるテマンに
鬼剣を渡すと一歩前へと力強い
歩を進めたのである。
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