もうひとつの木春菊 29 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「アンジェ!!」

いち早くアンジェを
目にしたのはヨンであった。
幼き頃よりともに遊び、時には
掴み合いの喧嘩もしばしばであったが
戦の世でありながら高麗の地を
ともに護り抜いた盟友である。

「チェ・ヨン!久しいではないか
王様、王妃様お会いすることが叶い
某は夢心地にございます・・・
なれど、某は漸く
記憶が甦ったばかりにて
ご挨拶が遅れた事をお許し願いたく
お詫び申し上げます」

「そうだったのだな・・・なれど
記憶が途切れておったのだ
仕方あるまい・・気にするでない」

「はっ!有り難き御言葉痛み入ります
・・・されど王様?どうされたので
ございましょう・・・?
御身が幾分お高く見えますが
某の目がおかしいので
ございましょうか・・・」

「おぉ~、そうか!余は生まれ
変わったのじゃ・・・
アンジェ?そちの目はおかしくは
ないぞ。長年の願いが
かなったのじゃが欲を申すなら
下界の折このような光景を観たかった
ものじゃな」

愛しい王妃が自身を見上げる
目線、王となりし折
一番に友となり臣下となってくれた
チェ・ヨンとほぼ同じ目線
心底望んでいたことだった・・・。
口煩い重臣らを黙らすことも
出来たのやも知れない。

「そうでございますか
ならば良いのでございますが
・・・なれど・・・
御身に纏われておられます
衣がちいと短いような・・・」

「アンジェ!!」

そう…誰もが口にするのも
憚れる言葉をアンジェは心のまま
口にしていたのである。

「あんじぇ~きゃきゃ…ぐっ」

「これ!ソマン!何度申せば
分かるのだ!」

ヨンの激とどちらが先かは定かでは
ないが、ヒヨンがソマンの口元を
ぐっと押さえていたのである。
されど誰もが思っていたことではある
皆の顔がそう物語っている。
ウンスは笑いを堪えるのに
苦戦中であるのか口を尖らせ
目尻には涙を溜めている。
当の本人は素知らぬ顔で背丈が
伸びたことだけで満足の御様子で
あった。

「そ、そうであるか・・・
余は生前より大柄の方ではなかった
かのぅ~王妃?・・・」

「まぁ~、お戯れを・・・うふふ」

しらっとそんな事を呟き
愛しい王妃をちらりと覗き見る。

「・・・ゴッホン!王妃?駆けて見ぬか」

「はい…」

王様はそう呟くと王妃の手を握り
道なき道を駆け出すのである。
そのお顔は喜びに満ち溢れ
いつになく賑やかであった。

「ふふふ…大層喜んでいらっしゃって
ヒョイアボジもきっと
喜んでいらっしゃるわ・・・良かった
わね…ヨン」

「ああ・・・なれどソマンには肝を
冷やす」

「根が正直者なのよ
仕方がないじゃない、大人には
いろんなしがらみがついて回るけど
幼子にはそんなことお構い無し
なんだし、そう目くじら立てないの」

「とと~ごめんちゃい
おこっちゃめ!よ・・・」

「まったく・・・」

ヨンの眉間の皺が細かく刻まれていく。

「危ない!!」

ウンスの叫び声とともに素早く
身体が動いたのはヒヨンであった。
ヨンと変わらぬ大柄なヒヨン
幸いにして転びかけた王様を
その腕の中にすっぽりと収めて
いたのである。

「おぉ~肝を冷した…ヒヨン殿
すまなかったの」

「はっ!お許しもなく御身に触れた
ことお詫び申し上げます」

「構わぬ、気にせずともよい。
ちいと無理をしたようじゃ
流石上護軍の倅であるな
いとも容易く身体が動くのじゃな
余も鍛練するかのぅ~・・・」

照れながらもそうぽつりと呟く
王様であった・・・。
そんな中遠くからイルムが
血相変えて駆けてくるのである。

「だ、旦那様~~!奥方様~~!」

「イルム~!どうしたの~?」

「た、大変だべ~~、大旦那様と
大奥方様が~~!り、り、り・・・」


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今日から不定期の更新になります
あと数話で終わりますが
描き次第アップすると事で
毎日更新があるかもしれませんし
一週間ないかも知れません。


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