「アンジェ!!」
いち早くアンジェを
目にしたのはヨンであった。
幼き頃よりともに遊び、時には
掴み合いの喧嘩もしばしばであったが
戦の世でありながら高麗の地を
ともに護り抜いた盟友である。
「チェ・ヨン!久しいではないか
王様、王妃様お会いすることが叶い
某は夢心地にございます・・・
なれど、某は漸く
記憶が甦ったばかりにて
ご挨拶が遅れた事をお許し願いたく
お詫び申し上げます」
「そうだったのだな・・・なれど
記憶が途切れておったのだ
仕方あるまい・・気にするでない」
「はっ!有り難き御言葉痛み入ります
・・・されど王様?どうされたので
ございましょう・・・?
御身が幾分お高く見えますが
某の目がおかしいので
ございましょうか・・・」
「おぉ~、そうか!余は生まれ
変わったのじゃ・・・
アンジェ?そちの目はおかしくは
ないぞ。長年の願いが
かなったのじゃが欲を申すなら
下界の折このような光景を観たかった
ものじゃな」
愛しい王妃が自身を見上げる
目線、王となりし折
一番に友となり臣下となってくれた
チェ・ヨンとほぼ同じ目線
心底望んでいたことだった・・・。
口煩い重臣らを黙らすことも
出来たのやも知れない。
「そうでございますか
ならば良いのでございますが
・・・なれど・・・
御身に纏われておられます
衣がちいと短いような・・・」
「アンジェ!!」
そう…誰もが口にするのも
憚れる言葉をアンジェは心のまま
口にしていたのである。
「あんじぇ~きゃきゃ…ぐっ」
「これ!ソマン!何度申せば
分かるのだ!」
ヨンの激とどちらが先かは定かでは
ないが、ヒヨンがソマンの口元を
ぐっと押さえていたのである。
されど誰もが思っていたことではある
皆の顔がそう物語っている。
ウンスは笑いを堪えるのに
苦戦中であるのか口を尖らせ
目尻には涙を溜めている。
当の本人は素知らぬ顔で背丈が
伸びたことだけで満足の御様子で
あった。
「そ、そうであるか・・・
余は生前より大柄の方ではなかった
かのぅ~王妃?・・・」
「まぁ~、お戯れを・・・うふふ」
しらっとそんな事を呟き
愛しい王妃をちらりと覗き見る。
「・・・ゴッホン!王妃?駆けて見ぬか」
「はい…」
王様はそう呟くと王妃の手を握り
道なき道を駆け出すのである。
そのお顔は喜びに満ち溢れ
いつになく賑やかであった。
「ふふふ…大層喜んでいらっしゃって
ヒョイアボジもきっと
喜んでいらっしゃるわ・・・良かった
わね…ヨン」
「ああ・・・なれどソマンには肝を
冷やす」
「根が正直者なのよ
仕方がないじゃない、大人には
いろんなしがらみがついて回るけど
幼子にはそんなことお構い無し
なんだし、そう目くじら立てないの」
「とと~ごめんちゃい
おこっちゃめ!よ・・・」
「まったく・・・」
ヨンの眉間の皺が細かく刻まれていく。
「危ない!!」
ウンスの叫び声とともに素早く
身体が動いたのはヒヨンであった。
ヨンと変わらぬ大柄なヒヨン
幸いにして転びかけた王様を
その腕の中にすっぽりと収めて
いたのである。
「おぉ~肝を冷した…ヒヨン殿
すまなかったの」
「はっ!お許しもなく御身に触れた
ことお詫び申し上げます」
「構わぬ、気にせずともよい。
ちいと無理をしたようじゃ
流石上護軍の倅であるな
いとも容易く身体が動くのじゃな
余も鍛練するかのぅ~・・・」
照れながらもそうぽつりと呟く
王様であった・・・。
そんな中遠くからイルムが
血相変えて駆けてくるのである。
「だ、旦那様~~!奥方様~~!」
「イルム~!どうしたの~?」
「た、大変だべ~~、大旦那様と
大奥方様が~~!り、り、り・・・」
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今日から不定期の更新になります
あと数話で終わりますが
描き次第アップすると事で
毎日更新があるかもしれませんし
一週間ないかも知れません。