もうひとつの木春菊 28 | シンイ二次小説でんべのブログ

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それから一月(ひとつき)ほど
試行錯誤を繰り返しとうとう
ウンスの世で言う
シークレットブーツが完成していた。
ヒョイアボジはそれを大事に抱え
ヨンの屋敷へと脚を運んでいた。

「言ってくれたらこちらから
出向いたのにご足労お掛けし
すみません…流石ヒョイアボジです
こんな立派な上げ底…ふふふ」

ふとみれば皮製の黒い長靴のような
物が卓上におかれている。
ヒョイアボジは「これが限界じゃ」
っと言わんばかりに
苦笑いを浮かべている。

「上出来だと思うわ
いくら黄泉の国でもこれだけの
素材を集めるのは大変だったんじゃ
ないんですか?」

「あちらこちらと駆けずりまわり
やっと手にいれた物ばかりで
ウンスが望むものが出来たかは
不安だったが・・・これで
よいのか?…それと・・・
おこがましいがウンスの子は
わしの孫も同じと思ったんじゃ
でだ、ソマン殿とヒヨン殿にと
思いこれをな」

別の包みを取りだすと太史鞋( テサヘ)
と思われる上流階級が履く靴を
二つ用意してあった。
一つは茶色の皮製で愛らしい
仔犬だろうか絵が描いてある。
一つは黒い皮製で逞しい
雷神が描いてある。

「まぁ~!すごい!
雷功使いのヒヨンにぴったりじゃない
良かったわね~ヒヨン…ソマンのも
可愛らしいし、ヒョイアボジ?
ありがとうございます
こんなお土産まで嬉しいです」

「なんのこれしき」

「いつもいつも気にかけてくださって
感謝の言葉もありません
貴方からもお礼を言って頂戴」

「ああ…ヒョイアボジ
倅の分まで誂えてくださり
誠に忝ない。礼を申す」

基本なんでも揃う黄泉の国。
高麗で女人が履くコッシンには
刺繍が施されているのはよく見掛けて
いた。ウンス自身もよく履いて
いたものである。
されど不思議なことに
ウンスの世の物は
手に入らないのであった。
ウンスが生まれ育った天界では
色々便利なものがあるのだが・・・
家族団欒で居間に欠かせない
テレビ、ラジオ等々。

ヨンが礼をのべると
早速ソマンが満面の笑みを
浮かべてくてくと歩み寄り
小さな靴を手に取りぺこりと

「あぼじぃ~あんがと・・・
すんじゃもいるの~~」

「おや?スンジャとは?」

「ソマンの長年連れ添った
お嫁さんなんです。先日こちらに
来たもので・・・ソマン?
おねだりなんてしちゃ駄目よ
ご迷惑でしょ」

「そうだったのか…すぐに
戻り作って来よう、待っておれな
ソマンヤ?」

「あぃ!まってる~」

「父上や俺たちの内功を
描いてくださりありがとう
ございます。嬉しい限りでございます」

「気にするなヒヨンヤ。わしは早速
おいとましスンジャのコッシンに
取り掛かるとするか」

ヒヨンアボジはそう呟くと
席を立ちヨン、ウンスらの見送りを
受け帰路についたのであった。

「行っちゃった・・・本当に
世話に成りぱなしでなんだか
申し訳ないわ・・・」

「そうだな…なれどヒョイアボジも
嬉しいのではないか?
ウンスの世話をやくのが生き甲斐
と思うておるそんな顔をして
いらした・・・だが!
真(しん)に世話を焼くのは俺ひとり
そうであろう」

その背が見えなくなるまで
二人は手を絡め見送っていたのだが
不意に「バシッ」っと後頭部に
小石が飛んでくるのである。
そんな事をするのは一人しか
いない。

「叔母上!痛いではないか!」

「いろぼけが!子らの前でいつまで
ちちくりあっておるのだ!!
早う王様にお届けせぬか!
のぅ~ソマン、ヒヨン、スンジャ」

「お、叔母様…ちちくりだなんて
・・・行ってきます~」

叔母に激を飛ばされ
小言が収まる気配がないと悟ったのか
見送りに出た三人を引き連れ
ヨンとウンスは王様、王妃様
慶昌君様が暮らす屋敷へと
向かって行ったのである。




「おぉ~~、これがそうなのか?」

「はい、王様・・・でもひとつだけ
覚えておいてくださいね
その~言いづらいのですが
脱いだらいままでと変わらないと
言うことを」

「・・・そうなのだな
床に入る折は脱がねばならぬ故
覚えておこう」

「王様?是非お履きになり
皆に披露して下されませ
妾もみとうございます」

「そ、そうか・・・ちいと
待っておれ」

高麗の世では後世に名を残した
恭愍王が照れながら部屋ばきを脱ぎ
脚をお入れになられると・・・見事に
背丈は王妃様より僅かだがお高く
なられたようであった。

「まぁ~、王様?妾の目線が上を
向いております…うふふ」

「そ、そうか」

「ちょな!とととおなじよ~
きゃははっ」

「ソマン!王様を冷やかすなど
無礼であるぞ」

「あぃ・・・」

きゃきゃっと手を取り合い
笑い転げるソマンとスンジャ
その横には兄のような笑みを浮かべ
見守る慶昌君様と三人三様
シュンっと肩を落とし
顔を見合せ愛らしい舌を
ぺろりと出していたのであった。

「王様?近辺を散策に参りませぬか」

「それは良い案じゃどうじゃ
上護軍らもともに参らぬか?」

「はっ!黄泉の国とて油断は
なりませぬ故某が護衛を務めますれば
御案じなされることはないかと」

「相変わらずかたい石頭じゃ
のぅ~王妃?」

「王様?これが上護軍なので
ございます・・・うふふ」

高麗の国母とし生きた年月と
何ら変わりない上品な笑いが
皆を安堵させるのである。

それから王様、王妃様を先頭に
近辺を散策に向かわれたのであったが
そこで懐かしい人と出くわすので
あった。


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