愛しき薫りを求め (動きだす時) 11 | シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説を書いています

それは希にみる崔沆の怒りであった。

名ばかりの武官。鍛練を怠り
武官と言う名声だけで、肩で風切り
文官や民を従わせてきた。
本来武官とは王の剣であり
国を民を護らなければならない存在
であるべき。崔沆は、違う地で
あっても私欲や
腕の強さを誇示することなく過ごす
ヨンを師と仰ぐようになっていた。

「恐れながら護軍、我が武官を
心身共鍛え直して頂きたく
お願い申し上げます」

ヨンに与えられた私室を不意に
訪れ崔沆は頭を下げる。

「崔沆殿?俺が鍛練に手を貸すと
なれば・・・ちと厳しいものに
なるが構わぬか?」

「構いませぬ。あやつらの根性叩き
直さねば先の世に、護軍や奥方の世に
そして未来永劫続いて欲しいと
願う高麗の世に残せるものがありませぬ
武官は武官らしく王様をお守りし
国を民を守らずしてどうなります
名誉だけの武官はもういりませぬ」

「まことよいのだな?俺は
責任持たぬが・・・俺は死なぬ程度を
心情とし、己の命は己で守るを
叩き込んで参ったが?」

「はっ!仰せのままに」

「ヨン…怪我はさせちゃ駄目よ
貴方とは、鍛え方が違うんだから
それに貴方のようにみんな大きな
身体をしてないわ」

ウンスはそう言うと
ヨンの顔を覗き込み片目を瞑り
ウインクして見せる。

「ウ、ウンス・・・それは・・」

「いいの、いいの気にしないで
そうと決まれば早速行きましょう
もちろん私も見学に連れて行って
くれるんでしょう?
まさか一人残すなんて
しないでしょう?いやだからね!」

「クックッ…流石の護軍も奥方には
敵いませぬか・・・先の世の女人は
みなこのように強くなられて
おりますのか?」

「「・・・」」

崔沆始めこの地の者には
伝えていない・・・
高麗より遥か先の世から王命にて
ウンスを拐い連れてきた事を・・・
だが、崔沆は信じるに値すると
ヨンは見極め伝えることにした。

「崔沆殿・・・実は・・・」

「・・・」

暫し沈黙のあと崔沆は口を開く。

「なるほど・・・されど・・・
感じておりましてございます
あのような医術は
いくら先の世であっても無理では
ないかと思うておりました・・
それは侍医らも同じ考えだと
思いますが、誰も口にするには
恐ろしく…天門とはまさしく
神が住まわし門でありますな
むろん他言致しませぬ
ご案じ召されませぬよう」

その目は
まっすぐヨンを見据えていた。
曇りひとつない澄んだ目をしている
ある意味チュンソク、テマンと
同じ目をしている
ヨンはそう感じていた。

「ならば、手を貸そう」


三人は練兵場へと向かった。

「よいか!!護軍がじきじき稽古を
つけてくださる!我こそわと思う者
一歩まえへ出ろ!」

「「おお~~」」

どやどやと武官がまえにでる
ヨンの内功を目の当たりにした武官
ばかりであった。

「ふっ~、ひとり一人は面倒ゆえ
纏めて掛かってこい!俺に一太刀
衣の裾でも掠る者があれば
俺の負け、なれど触れること敵わぬ
折、練兵場を死なぬ程度に走ってもらう
どうだ?」

「「おお~~~!!」」

ヨンは木刀を構え瞳を瞑る
その回りを一斉に取り囲み
鍛練が始まる。
ウンスは一歩下がり壁際でその光景を
ハラハラしながら覗いている。

『無理しちゃ駄目よ・・・』

ヨンはその場から一歩も動くことなく
瞳を瞑ったまま数名をあっと言う間に
叩きのめした。肩を擦る者
脛を擦る者、尻を擦る者様々である

武官のひとりが瞼をおろす
ヨンの背後に回る。
「ヨン…後ろよ後ろ・・・」
ウンスは小声で知らせるが
武官の苦痛の声に消されてヨンには
届く様子はまったくない。

「奥方…黙ってみててくだされ
内功の使い手であるのなら
人の気配には敏感…ゆえに案ずる
ことはないはず、そんな事より
背後に回るあの武官こそ
卑怯と俺は思うが」

ヨンは口の端をわずかにあげると
背後に回る武官の頭上高く飛び上がり
素早くその武官の背後を取る。

「バシッ」っと、肩に木刀が命中し
総崩れとなった。

「しまいだな?約束を忘れやしまいな
みな!練兵場を死なぬ程度に走れ!!
それが終われば素振りを見せてもらう
よいな!!」

「「「・・・」」」

先程の威勢のよい姿はまったく感じ
られずしぶしぶ駆け出す武官らを
崔沆は苦虫を噛み潰した顔を
させ見送っているのだった。


ポチっとして下されば嬉しいです






にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村