愛しき薫りを求め (動きだす時) 10 | シンイ二次小説でんべのブログ

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それから半月の後
天門を壊しヨンとウンスをこの地に
留め置こうと企んだ武官らが
ぼろぼろになりながら戻ってきた。

「王様・・・志半ば引き返して
参りました…無念にございます
お、崔沆様ご無事でしたか
もう歩けるのでございますか?」

「貴様!!上官であるわたしの許しも
なく聖なる門を壊そうなどと企てる
などどう言うつもりなのだ---!」

崔沆はウンスの許しを得、抜糸も
済ませ、体力を戻すため少しずつ
出歩いており、夜討ち仕掛け
大怪我を負って以来、本日久々に
王様へと拝謁を願いでたのである。

「チェ、崔沆様・・・なにゆえ
そうお怒りになられます?
あの者の力があれば、蒙古軍など
赤子の手を捻るも
同然でございましょう」

「恥を知れ!!旅人の手を借りるなど
我が軍の恥、それが何故分からぬ!」

「・・・では、軍の死人が増えても
崔沆様は構わぬと仰せにございますか」

「武人は戦場で命を落とすのならば
それは本望であろうが違うか!」

日が時期に天高く昇るであろう頃
王の前で崔沆は声を荒げる
その剣幕に天門へ向かった武官らは
顔を強ばらせ肩を竦めていた。

「崔沆殿、傷にさわるのではないか
気を静めよ。よいか?その方ら
これからは 余や崔沆殿の許しもなく
事を起こすこと罷り成らぬ!
逆らう者あらば厳しく罰する
手始めに、余の前で己の私欲を満たす
為に剣を振り回したあの武官
お役御免としこの都から追放とする
一族諸とも同罪に処するそのように
計らえ!よいな!」

「王命しかと承りましてございます」

崔沆が頭を垂れ
高宗王も崔沆も変わりつつあった。
されど、モンゴル皇帝モンケが
このまま引き下がるとは思えない。
更なる大規模な戦を仕掛けてくるのは
火を見るより明らか
ヨンの力を借りず、どう乗り切るか
頭を悩ます難題であった。


「あら、崔沆さんは?」

ヨンは私室を与えられ
江華島をぐるり囲む城壁の図面を
製作しているのが日課となっていたが
息抜きにと、二人は診療棟を
訪れていた。

「宮殿の方へ行かれたと思われます」

「そう…散策するのは良いことよ
体力回復のためにもね」

「ウンス殿に叱られると申され
崔沆殿は意気揚々と
出て行かれましてございます」

「そう・・・うふふ・・私の役目も
そろそろ終わりね感染症にならず
ほんとうに良かったわ」

ヨンは徐に口を開く。

「侍医、ひとつ尋ねてもよいか?
その方は先祖から名の一部を引き継ぐ
習わしがあったりするであろうか?」

「え?どうしてそれをご存知で?
オ家は一応貴族の端くれにおります
れば、代々嫡男にはマンを
受け継いでおります、ですが
あなた様の世であなた様に近しい
オ家の者がおりますのか?でなければ
そのようなことを問うことは
ないとおもいますが」

「・・・おる・・忠実な弟が・・」

ヨンはそれ以上口を開かなかった
侍医からテマンまでに何かがあり
御家没落となりテマンがおるのだと
確信したが、それを侍医に話したとて
嘆き悲しむだけであることは
火を見るより明らかである。

侍医もまた押し黙るヨンやウンスの
表情で思うことが
あったのかも知れない
突然話を変えた。

「ウンス殿…旦那様との馴れ初めなど
聞きとう存じます」

「え?・・・それは・・」

「俺がこの方を離せず、あとを追って
参ったのだ・・・それで察して
くれぬか?」

ヨンは照れたように
後頭部を
擦りならがぽつりと呟いていた。

「なるほど…クックッ」

「もぅ~侍医ったら・・からかわない
でください…うふふ」

それからウンスは、侍医とヨンを
交え手洗いとうがいの重要さを他の
医員に必死に解いていた。

ここは根をおろす地ではないが
この時代があり
それが戻るべき高麗へと繋がって
いるためであると心底思えるからで
あった。


辺りが薄暗くなり始めた頃
二人は帰路につく
途中夕餉の食材と愛馬チュホンのために
新鮮な野菜を買い求めることが
毎日の日課であった。
すでに半年ほど過ぎていたためか
ちらほらと顔見知りも増え
おまけしてくれる主も出てきていた。

「ほらよ・・人参と菜っ葉だ
馬に食わしてやんな、お代は人参分で
いいさ…菜っ葉は成長し過ぎて
売りもんにはならねからよ」

「え?ほんと!嬉しい~良かったね
チュホン!邸へ戻ったらあげるわ
いまは駄目よ」

くんくんと鼻のひくひくさせ
ねだる仕草を見せていたが
ウンスに釘を差されしゅんとする
そんな愛らしい仕草に
市井の人気者になっていた
子らが「わぁ~い」っと駆け寄り
いつも囲まれてしまうのだ。
賢いチュホンの事、暴れることもなく
じっとしている。

「うふふ…すっかり
子供たちのアイドルになって
しまったわね・・・チュホンにも
子供ができたらいいけどこちらでは
お嫁さん探せないわね」

「ああ…あの地にもどり探してやるか」

「ええ…そうね・・・チュホン帰るわよ
坊やたちまた遊んであげてね」

ウンスの声にチュホンは
てくてくとふたりのあとを追い
邸へと戻っていたのだった。


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