愛しき薫りを求めて(動きだす時) 4 | シンイ二次小説でんべのブログ

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どうしたものかと
ヨンは瞬時に頭を回転させる
この地で戦に赴くこと
すなわちウンスを置いて行かねば
ならぬ。信頼し預ける部下も
叔母上もおらぬと・・・

「そなたらは先の世からこちらに
迷い込んだと言うことか?」

「・・・如何にも」

「許嫁殿もともにか?」

崔沆の問いにヨンは思う

『俺の素性は明らかになろうが
構わぬ、なれどウンスが天人と
知れたなら・・そしてあの医術を
目の当たりにしたならよからぬ輩が
湧いてでる筈・・・』

ウンスの盾になるそう決めた。
好まぬ嘘でも、ウンスの為ならば
いくらでもはく。

「この方も先の世から
ともに迷い込んでしまっておる
あと半年もすれば戻らねばならぬが
恐れながら王様?
某は、この方を独り置き
戦に赴くことは出来かねます」

「許嫁殿は余がこの名にかけて
全力でお守りする、約束する
それでも無理であろうか?」

「王様、某が信じるに値する方々は
この地にはおりませぬ、ゆえに
この方を預けるなど議論するだけ
無駄にございます」

「貴様!王様に向かい
無礼千万も甚だしい!近衛隊
この者らを斬り捨てよ」

ヨンはすっと立ち上がると
ウンスの手を取りその背に隠し
戯言を吐いた武官をぎろりと
睨み付ける。

ぐるりと囲まれ逃げだすには
難しいようであったが。

「俺と剣を交えたいと?ふぅ~
命がほしくないとみえる」

「そうよ!この人
すっごい強いんだから!それにね
捨てていい命なんてひとつもないのよ
みんな平等に生きる権利があるの
わかる?」

「おなごの分際で我々武官に
もの申すつもりか!!」

「イムジャ?もうよい…どうやら
無駄な争いを好む方々のようだ
王様・・・武臣政権はあと
二十数年続きましょう。
民を慈しむ、それが高麗が復興する
手立てとなりますれば… 聖君とお成り
下され」

ヨンはちらりと開け放された
戸口を目の端に捉えた、ウンスを
横抱きにすると、軽功を身に纏い
兵士が取り巻く頭上を軽々と
飛び越える。

「な、なんだ!」

取り巻く武官が口をあんぐりあげ
ヨンの早業を目で追う。

「ヨン殿待たれよ!みな!手出し無用
王命である 剣を収めよ!」

高宗王が玉座から立ち上がり
大声をあげる。

「なれど王様?」

「黙らぬか!・・ヨン殿済まなかった
余が不甲斐ないばかりに・・
民を慈しむ その下りもう少し
話を聴かせてくれぬか?先の世の
王の話も・・・」

武臣政権真っ只中、武官に歯向かう
など、今まで一度も見せなかった
高宗王が・・・と、武官らは
思ったに違いない。されど王様は
変わりたいと望んでいたのである。

王命によりしぶしぶ剣を収めた
武官らが、左右に分かれると
その中を威風堂々とウンスを横抱きに
したまま闊歩する。
そして玉座の前でウンスをそっと
おろすと、片膝をつき頭を垂れる

「王様 無礼の段何卒お許し下され
されど・・」

「もうよい・・・まずは掛けられよ」

高宗王に促され
ヨンとウンスは卓へと歩を進め
腰をおろす。
対面に高宗王と崔沆が腰を
おろすと崔沆が部下の無礼を詫びる。

「護軍と呼ばせてもらう・・・
護軍、部下の無礼をお許し願いたい
こやつらはあとで厳しく罰するゆえ」

「崔沆殿、頭をおあげ下され
されど、某の心根も察して頂きたい
この方を独り置き、戦には行けぬ
崔沆殿ら武官が蒙古に戦を仕掛ける
ならば、某は王宮にて必ずや
王様、王妃様らをお守り致す所存」

「頼もしい…護軍お頼みできるか?」

「某ひとり百人は相手できるゆえ
申し訳ござらぬが鍛えかたが
方々とはまったく違います」

「ふっ・・愉快じゃ・・では余も・・
護軍!頼りにしておるぞ」

一歩歩み寄れたのかも知れない。

だがそれを疎ましく思う武官もいた
身分が低く、文官に虐げられ過ごした
先祖代々・・・庚寅の乱に始まり
数々の反乱をおこし武臣政権を
勝ち取ったのである。
苦虫を噛み潰す思いで武官らは
その輪を睨み付けていたのであった。

「して護軍、先ほどの頭上高く
舞う武術は伝え聴く内功であろう?
まことに操れる武官がおるとは
思いもよらなんだ・・生まれ持っての
力であるか?」

「崔沆殿・・生まれた折かどうかは
定かではありませぬが
某が師父と仰ぐお方にめぐりあえ
見いだされたのでございます」

「そうであったか・・・
では王様、夜討ち仕掛けに参ります
暫し窮屈ではございましょうが
護軍とともに、一室に身を潜めて
下されませ。内官!王妃様にお伝えし
こちらにお連れするのだ」

「はい」

ひとりの内官が頭を垂れると
姿を消す。そして崔沆ら武官は王様を
お守りする者と戦に赴く者を分け
夜討ちを仕掛けるべく
席を立ち姿を消した。

「ウンス…俺の背から離れず
よいですね・・必ずお守りするゆえ」

「うん!わかってる…貴方は必ず
みんなを守ってくれると信じてる
なんなら貴方の背に紐でくくる?」

「・・・ふっ、それでは身動きが
取れぬ」

小首を傾げ悪戯な瞳でウンスは
見つめる。

「愉快じゃ…許嫁殿・・・先ほどは
済まなかった。二度と言わぬゆえ
許せ」

「あ、王様良いんです この人が
絶対許す筈ないって信じてましたから」

「そうであったか…クック」

戦が始まろうとしてはいたが
ウンスの陽の気がみなを笑顔に
導いてくれたのだった。



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