木春菊  [託す] 63 | シンイ二次小説でんべのブログ

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あれから二年の月日が流れ
互いに七十を迎えようとしていた
春・・・ヨンとウンスは珍しく
二人っきりで釣りに興じていた。

領主の役目をチュンソクに丸投げし
ウンスの手を取り逃げ出してきたのだ

「チュンソクさん怒っているわよ」

「俺は生涯武官。文官の真似事は
性に合わぬ・・・」

「そんなこと言っても、領主はヨン
なんだからチュンソクさんが
可哀想よ。」

「あ奴に譲るか領主を…駄目か?」

「駄目に決まってるじゃない
チェ・ヨンを慕い村人は税を納めて
くれるのよ。貴方なら不正はしない
だろうし、私腹も肥やさないと
信じてるからよ。まったく!」

ぷんぷん小言を連ねるウンスを
よそに、ヨンの竿がピクリと動く。

「おっ…ウンス・・・夕餉の魚が
釣れたようだな…静かに・・」

ぴくんぴくんと ニ、三度竿を引くと
呼吸を合わせひょいと竿をあげる

「わぁ~~。流石釣りの名人ね~
ヨンは逃がしたことなんて
ないんじゃない?坊主なんてみたこと
ないもの」

「俺を誰だと思うておる・・・。」

「はい。はい…釣り名人チェ・ヨン
様です・・・。だ~~れも貴方には
勝てません・・ふふふ」


「まったく・・いつまで逃げ回る
おつもりか!テマン!トクマン
釣り場に違いない。探しに参る
ついて参れ」

チュンソクは相当おかんむりのようで
ある。渋るトクマン、テマンを
無理やり同行させ釣り場到着する。
そのあとをサムを始めとする
おなごばかりの集団がこっそり
あとをつける・・・。

むろん背後に無数の気配を感じる
ヨンではあったが、そんな事は
お構い無しに
竿を左手に仕方なく持ち、右手は
ウンスの肩を抱き背後の気配は
思わず後退りするほど
熱い~雰囲気であった。

「これからもよろしくね…ふふふ」

「ああ~むろんだ・・・」







おまけ・・・・・


ん?ここは・・
俺はどうしたんだ。

草原に寝そべり意識が浮上する
見渡す限り草花が咲き乱れ
蝶が飛び交い心地よい場所である。

ウンス…?ウンスはどこだ?

ヨ~~~ン!こっちよ~~。

その声にむくりと起き上がると
対岸の向こうに、ウンスの姿を見つけ
胸を撫で下ろす…されど妙に違和感を
感じる・・・。対岸で手を振る
ウンスの姿は若かりし頃と変わらぬ
装いで、赤い髪が風に靡いている。
ふと己の額に触れると息を飲む
額あてをしていた・・・。

ん?…俺は・・・

眼を見開きいまいちど愛しいウンスに
目を向ける。そこへすっと現れた
愛馬チュホンと叔母上…
トルベが手綱を引きチュソクが
大きく手を振っている。
再び靄が現れると…

・・・!!父上!母上!

幼き頃中庭で遊ぶ俺を、床の上から
慈しみの眼差しを向け見つめていた
病弱であった母上。
男手一つで育てくだされた父上。
お懐かしい・・・。

いつの間にやらウンスが愛馬に跨がり
川の中ほどで俺を待っている。

ヨン~~。そちらには行けないの~
こっちへきて…

ああ…いま行く。

そして二人は愛馬に跨がり
皆が笑みを浮かべ見つめる中
いつまでも草原を
駆けていたのであった。



もうひとつおまけ・・・十年後…

父上、母上お元気でいらっしゃい
ますでしょうか?おれは本日
大護軍の職を賜りましてございます

母上が逝かれて
翌日父上が母上の後を追うように
逝かれ…驚きましてございます。
スンジャが母上の言うところの
心肺蘇生を試みると言って
おりましたが…おれはそれを
止めましてございます・・・。
されど、あれで良かったと
思うております。父上のお顔が
うっすら笑みを浮かべておりました
きっと母上がお迎えに参ったので
ございましょう。
鉄原の屋敷は、テマン兄様とイルム
サンミがお二人の墓守りしながら
守っております。ご安心くだされ
ですが…よもや父上も逝かれるとは
思わず、急ぎ大きな棺を用意するのに
苦労致しましたが、父上の胸元に
母上を抱かせるとそれはそれは
顔を綻ばせ、いまにも起き上がる
のではと思われるほどでございました

父上が逝かれたと同じ頃
チュホンが煩いほど嘶き、翌朝
父上の後を追うようにチュホンも
事切れておりましてございます。

父上がどれ程偉大であったか
この十年いろいろあり
思い知りましてございます。
ですが、チェ・ヨンの名を汚さぬよう
おれもヒヨンも邁進して参ります。

輪廻転生が叶うならば
再び父上と母上の子に生まれとう
ございます。

ソマンはそう胸に秘め
闇夜に浮かぶ丸く大きな月に語りかけて
いたのである。

おしまい。


夕方十八時にあとがきを投稿します。
皆様本当に
長い間ありがとうございました。
とりあえずお礼まで。


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