木春菊  [託す] 48 | シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説を書いています

暑い季節をなんとかやり過ごし
涼しい季節が訪れる頃
屋敷前の側道が急に慌ただしくなる

「よもや…まさか!ウンス・・
王様がお越しのようだが」

「兄上・・・」

ヨンの呟きと同時に、夕餉を終え
居間で寛いでいたところに
テマンが転がり込んできた。

「やはりか?」

「はい。あの紋の馬車は王宮の物
間違いありません」

「え?ほんとうに?…大変
お出迎えしなきゃ…はやくはやく」

ウンスは眉間に皺を寄せる
ヨンの手を引き門へと小走りで
駆け出す。

迂達赤に警護されながら
馬車が二台止まっている。
てっきり恭愍王と魯国大長公主の
お二人が別々の馬車でおいでに
なられたと思い込んでいた。

先頭の馬車の扉が開き
恭愍王と魯国大長公主が降りてくる。
もう一台の馬車が開くと
スンジャと孫らが顔を出した。

「ソマン・・・」

「友が遥々会いにきたのだ…隊長を
叱るでない。」

「王様・・・」

ヨンは片膝を付き出迎える。
むろんチュンソク、トクマン
テマンもそれに倣う。

「今宵は泊めてもらうぞ。
王宮に帰れとは言うまいのぅ~」

「王妃様~~。」

「義姉様~~。」

ヨンの眉がぴくぴくと上下する中
ましてや男同士の腹の探り合いをよそに
ウンスは魯国大長公主をぎゅっと
抱き締め、久方ぶりの再会を
喜び、分かち合っていた。

「義姉様…スンジャ殿と子らも
ともに参りまいっております
義姉様がお会いしたいだろうと思い
・・うふふ」

「じぃじさま~。ばぁばさま~。
おあいしとうございました~」

「まあ~半年程しか立ってないのに
ずいぶんと口が回るように
なったのね~ふふふ」

まだ三才半ばのソマンの嫡男が
ウンスの足元にぎゅっとしがみつき
抱っこをせがむ。
一歳半ばを回った嫡女はよちよち
と、ヨンの足元まで歩き
両腕をあげる。
そんな愛らしい姿にヨンの目尻も
下がりひょいど抱き上げる。

「困ったわね~抱いてあげたいけど
重くて・・・」

「奥方様…某が・・・」

ウンスが腰を屈め抱き上げようと
試みるが・・・
チュンソクが助け舟を出しひょいと
抱き上げる。チュンソクの目尻も
下がりっぱなしであった。

「王様…中へ・・・」

「うむ。」

中庭ではそれぞれの嫁が深々と
頭を垂れ出迎える。

「みな…息災であったか。暫し逗留
致すゆえ良しなに頼むぞ」

「「「・・はい…」」」

「都の屋敷よりかなり広いのぅ~」

恭愍王は眼を見開き開口一番
そう口にする。

「王様…夕餉はお召し上がりに
なられたのでございましょうか」

「飯屋に入りクッパとやらを
食してきたぞ。うまいものであった」

「お毒味もせず…ソマン万が一
あらば如何するつもりなのだ

まったく…力づくでもお止めするのが
ソマン…そなたの役目、心得ておけ」

「父上…すみません。抗うことが
できませんでした・・・。」

「ヨン。そんなに叱らないであげて
王様や王妃様も役目を退き
羽を伸ばしたかったのよ。年になんども
あることじゃないんだから…ね?
ヒヨン元気だった?」

「はい。母上幸いなことに病に
なることもなく、兄上と二人役目に
邁進しております」

「そう…良かった」

ウンスがちらりと
部屋の隅に目をやれば
チュンソクとサム、スンジャと
子らが再会を喜び笑顔で
雑談していた。やはり親子である。

肩を竦め粗相のないようにと
イルムとサンミが、茶を運んで
くる。十代半ばでチェ家に奉公に
あがった二人…ウンスの世で言う
ところの四十路を回っていた。
ソマンが二十五を過ぎたのだ
生まれる少し前からいるのだから
当然の時のながれではあったが・・・
お下げ髪が愛らしいイルムも
すっかりチェ家の私兵として
数々の修羅場をくぐり抜け
ウンスを守っている。
短い髪であどけない田舎娘であった
サンミも年齢を重ねるとともに
方言も直し、都の女人として
どこに出しても恥ずかしくない
作法を身につけていた。

「粗茶でございますが・・・」

「旦那様。湯殿の用意ができてるべ
王様方も長旅で疲れたべ・・」

「ほう~ありがたい・・案ないして
くれぬか?妃…湯殿でともに脚を
伸ばさぬか?」

「・・・はい・・お供致しとう
ございます・・・。」

少し照れたのか…微かに頬を染め
魯国大長公主は、恭愍王が
差し出された手をふわりと握り
イルムとサンミの案内で湯殿へと
姿を消した。

「ふふふ…変わらず仲がいいのよね~
嬉しくなるわ・・・ミント~
叔母様の跡を継ぎ武閣氏の長になり
王妃様付きになって、以前のように
気楽に話もできなくなっちゃたけど
どう?変わりない?」

「はい。医、いえ奥方様…お陰様で
忙しく過ごしております」

「そう…良かったわ…ふふふ」

お二人が戻るまでそれぞれが
積もる話をあれやこれやと
尽きることなく花が咲いていた。
医術を学ぶ学舎も順調の様子に
ウンスは胸を撫で下ろし
ミントとアル、ヘジンは
尽きることなく武芸の話を・・・。
トクマンとハヌルは
迂達赤の現状を・・。

「お前・・・」

「その節は・・・」

もと禁軍上護軍の姿をヨンは捉えた

「あの時王命にて、身分格下げを
言い渡され、迂達赤入隊を命じられ
ソマン隊長の元いちから出直して
おります。」

「ソマン!こやつは監視が必要ぞ
目を離すな」

「心得ております。父上」

にやりと口の端をあげるヨンと
ソマンにがっくり肩を落とす
もと上官であった。





皆様こんにちは

いつもお寄り下さり誠に
ありがとうございます。
今年も遂に大晦日となりました。
こんな拙い妄想のお話に
いいねやコメントなどで足跡を
残して下さる皆様には
感謝の言葉しかありません。
ほんとうにありがとうございました。

やはり年内には終わりませんでした。
すみません・・・。
もう少しお付き合い下されば
幸いです。





でんべ



ポチっとして下されば嬉しいです