木春菊  [偕老同穴] 106 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「・・・かならず?」

幾筋も頬を伝う涙を
ウンスは慈愛の眼差しで見つめ
その涙を抜う。

「そうよ。約束するわ…ソマンや
父を残して逝かないわ。
指切りしようか?」

ウンスはソマンの小さな小指と絡め
微笑む。「貴方も…叔母様も」と
四人の指を絡めあの時のように
コピーする仕草をみせ指をほどく。

「とと…かか・・からなずいった
ソマン…なかない」

「そうか。ソマンが泣かぬなら
俺も見守る・・・されど叔母上
真に頼めるのであろう?」

つぶらな瞳を父に向け
思いを伝えるソマン…そんなソマンを
膝の上に乗せヨンは叔母を見上げ
言葉を繋いでいた。

「むろんじゃ…月日がまだある
これからいろいろ策を練りに練り
万全の体制をしく。任せろ」

「でも、私はソマンも生んでいるから
あまり心配していないのよ
叔母様なら分かりますよね?」

「ああ。市井の産所を幾度か
訪れた折、経産婦ならばさほど
歳は気にせずと産婆が言っておったの
ところでウンス・・その・・あの
・・歳はいくつになったのじゃ?」

「まぁ~叔母様ったら・・・
三十九になります。」

「・・・!」

「どうしたの?ヨン」

「・・・四十は回っておるのかと・・」

「・・・ひっど~い!」

「俺もウンスと同じ歳であろう?
ゆえに・・・さすれば俺も三十九か
歳など数えたことなどないゆえ・・
すまぬ・・・。」

戦に身をおくこの身の歳など
数えたこともなかったヨン。
ウンスはいつまでも変わらず
その輝きを放っている。
ぷぅ~と頬を膨らませる
その愛らしい姿も
ソマンを慈愛の眼差しで
見つめる姿さえも。

『・・・腑抜けじゃな・・俺は』

「まあ、よいわ。ウンス無茶をするで
ないぞ。産後の肥立ちにも
関わるやも知れぬ。無事に赤子を生み
ウンスも達者で過ごして
貰わねば困るゆえ」

「はい。叔母様・・・無理はせず
気鬱も溜め込まず全部この人に
ぶつけてやります。ふふふ」

「そうじゃ。それでよい・・・
お~ソマン…忘れるところであった
菓子じゃ…王妃様から頂いたが
ちと甘いゆえおのこが好むかの~」

菓子と聞いたとたん
ソマンの顔がぱぁ~と輝く。

母であるウンスの身を案じ、たった今
泣いていた面影はどこにもない・・・
嬉しそうに包み紙を受けとると
ひとつ摘まんで自分の口に放り込む

「おいちい・・かか…あ~ん」

そしてウンスの口元に菓子を運ぶ

「ありがと、ソマン食べさせて
くれるのね。あま~い・・でも
美味しいわね。」

「とと…あ~ん」

「俺はよい。ソマンが食べよ」

「・・・はあ…」

「ほら、ソマンが落ち込んだじゃない
貴方も少しだけかじってあげなきゃ」

父の口元に菓子を運んだソマンが
短く息を吐きがっくり肩を落とす

「すまぬ。ソマン
父にも食べさせてくれるのか?」

こくこくと頷くとソマンは
ヨンの口に、ぽいっと放り込み
じっと顔を見つめ反応を窺う
素振りを見せる。
甘い物は苦手なヨン
だが…我が子の仕草にそれを
口にはできず・・・「うまい」と
呟くと、うんうんと頷き嬉しそうに
笑みを浮かべるソマン。
嫌な予感がし
気配を消し立ち去ろうとした叔母も
これまたソマンにつかまる

だだだ~と小走りで
戸口まで追いかけ「おばば、あ~ん」
と菓子を運ぶ。

「・・・・」

「叔母様…あ~んですよ・・ソマンが
へそを曲げますから…ふふふ」

どうやらチェ家の血筋は甘いものが
苦手な様子。
叔母も可愛い孫が
へそを曲げぬようにとしぶしぶ口を
あける。
ソマンに菓子を放り込まれ・・・

「う、うまいぞ。ソマン
ばばは、役目があるゆえ戻らねば
ならぬ・・またの~」

と、苦虫を噛み潰した顔をし
そそくさとひきあげるのであった。
ひらひらと手を振り見送るソマン
満足そうに振り返ると
二人の間に駆け寄りヨンの膝の上に
ちょこんと座ると、美味しそうに菓子
を頬張る。

「うまいか?」

「おいちい」

「良かったわね。いい子にしていたら
また、王妃様が菓子を分けて下さるかも
知れないから…イルムとサンミの
言うことをちゃんと聴くのよ
父も母もお役目に戻らなきゃならない
から、行くわね?」

こくりと頷くと自ら膝から降り
二人を見送るソマンであった。



「ウンス。俺は叔母上を
典医寺のみなを信じると決めた
ゆえにもう騒がぬ。ウンスの事に
なると、俺はどうもここがざわつく
すまなかった。」

ヨンは、己の心の臓を押さえ
ウンスに思いを伝える。

「・・・いつも愛してくれて
心配してくれてありがと
これでも優秀な医員よ。その私が
仕込むんだから信じて?」

小首を傾げ見上げる
その愛らしさに、ヨンは典医寺へ
向かう階段の隅でウンスを
胸に囲いぎゅっと抱き締める

もうじき長雨が続く季節を
迎える頃ではあるが
春の終わりを告げる風が
二人の頬を擽り
悪戯に通り過ぎて行く昼下がりである


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