木春菊  [偕老同穴] 104 | シンイ二次小説でんべのブログ

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三人は何事もなかったように
市井を散策していた。
イ・ソンゲがウンスの前に現れた
事は、ウンスには衝撃だったが
ヨンは然程気に掛けては
いないようである。

「ウンス。俺は天の書など
意味をなさぬと思うておる。
ウンスを恋い慕い息子も授かり
俺はこの命いまは欲しゅうてならぬ
この先何があろうと、誰と対峙する
することがあろうと必ずや
二人の元にもどる。信じてくれぬか」

「信じてる。貴方は決して嘘なんか
つかないもの…」

「ああ。嘘はつかぬ・・先の事を
憂いをいだくより目の前を…俺をみよ」

「うん!ありがと…そうする」

テマンは、何かを察しソマンを
肩車し随分先を歩いている

「身体は大事ないか?」

「うん。大丈夫・・・ちょっぴり
目眩がしただけだから。
そんなことよりソマンのパジを
誂えてもいいかしら?すぐに
成長するから、もうつんつんで…
いいものは要らないわ。
子供はすぐに汚すし、破るし
数が欲しいのよ。」

「百枚か?」

「また~。贅沢していたら
叔母様に叱られるわよ…ふふふ」


「こら!ソマン兄様の目を塞ぐな!
前がみえないだろう。まったく
悪戯っ子だな~」

叱れては「きゃっきゃっ」と笑い
またテマンの眼を両手で塞ぐ
その繰り返しである。

「・・・てまん し~し~」

「ん…し~し~か?我慢できるか
降ろすぞ。どこかないか
いっそのこと、ここでするか?」

テマンが冗談混じりに
腰を屈めソマンの顔を覗き込むと
いやいやと、小首を振りテマンに
うったえる。

「テマン!こっちだ!」

行きつけの反物屋が幸いな
ことに、目の前にある。
辺りをきょろきょろ探していると
ヨンに呼ばれソマンをひょいと抱え
テマンは走る
店の裏路地に厠はある
そこに飛び込むと
テマンは有無を言わさず
パジを一気に下げる。・・・
腰を屈め「ほぉ~っ」とソマンは思わず
吐息吐く。

「ふふふ。おじいさんみたいよ。
よかったらわね。ソマン…兄様に
手伝ってもらって」

こくりと頷くと「ぐぅ~~」っと
ソマンの腹の虫が盛大に鳴り
皆が苦笑いを浮かべた。

「ふっ…ソマン?母と同じじゃな
用が済めば腹の虫が鳴る
血は争えぬとはまさしくこの事
クックック…」

「ひっど~い!私そんなに
食いしん坊じゃないから。」

ぷぅ~と頬を膨らませヨンを
睨む真似をする。


「大護軍~~。」

「もう一人賑やかな奴が現れた
ようだ。なんだ!トクマンさぼりか?」

「見廻りですよ。プジャンになり
さぼる訳がありません。」

「散々しておったであろうが」

「まん。まん。」

「ソマン殿・・・俺のこと?
俺は迂達赤プジャン!トクマン。
まん…ではないですよ」

ソマンがパジを大好きな母に
パジを整えてもらいながら
トクマンを姿を捉えると
足元に駆けよる

「まん。」

「だから・・・トクマンです」

幼子相手にトクマンは
腰を屈め、懸命に己の名を教える。
不意打ちに頬に「ちゅう」をされ
眼を白黒させ尻もちを付くのである。

「トクマン君の顔おもしろい…
あははは~~ソマンがねこの頃
いつもありがとうのちゅうを
するのよ…悪気はないの
受け止めてあげて」

「奥方様~・・・」

「ソマン。あとは誰にするつもりだ
ん?…」

「このゆび・・・あ~。へ~。」

「そうね。まだ二人には
会ってないものね。トクマン君
アルはまだよね?ヘジンも」

「はい。今日は奥方様も出仕して
おりませんので、戻りは早いかと」

「じゃソマン帰りによろうか
サプライズでおどかしちゃう?」

ソマンはどうやら十本のゆびで
覚えていた様子。両手の小指を
立てアルとヘジンの名をあげた。

昼に饅頭を買い求め
まだソマンが生まれる前
婚儀を済ませ、初めて戦に赴く時
おいてけぼりをくらい
一人見送った小高い丘へと
向かった。

春の香りが風に乗りソマンの鼻先を
擽る。
眼下に広がる景色は、都が一望でき
ソマンは目を見開く。
すっかり親交を深めたテマンの肩車で
声にならない声をあげる。

「わぁわぁ~~~。」

「きれいでしょう。都が
一望できるのよ…もう桜は散って
しまったけど、母の思い出の場所
なのよ・・ふふふ」

快晴に恵まれたその日
市井の賑わいも伝わり、絶好の
ウンスの世で言うピクニック日和
テマンが持参した敷物を
さっと広げ饅頭と竹筒の水を
用意する。

「みんなも連れて来たら良かった
いつも屋敷の事ばかりで
気晴らしできないじゃない?
だから・・・」

「おいちい・・・」

「そんね~こんな景色を眺めながら
親子で食べるって美味しいわね
ソマン…大人になっても忘れないで
この温もりを・・あなたが
どんな道に進むのか、分からないけど
どれを選択しようが父も母も
応援するから。もちろん兄様も
応援してくれるわよ。そうよね?
テマン。」

「あ、はい」

ソマンはヨンの膝の上で
饅頭をちぎってもらいながら
ウンスの問いかけに耳を傾ける
そして顔を傾げ父を見
隣に座る母を見、対面に座る
テマンを見つめ
「みんなだいちゅき」と
一言呟きぱあ~と明るい
笑みを浮かべるのであった。



「トクマン様は何がお好き?」

その日の夕刻
ヘジンとアル、ミントは揃い役目を終え
帰り道、市井へと夕餉の食材を求め
繰り出していた。

「え?トクマン様は魚を好まれるかな
ほら、私のところは使用人は
いないでしょう…だから
私が役目で遅くなるときは
トクマン様が作って下さいます」

「あら~人は見かけによらないのね
テマン様は何でもうまい。うまいと
食べてくれますよ…うふ」

「はい。はい。ご馳走様
どうせ私は独り身ですよ。でも
良いんです。私は武芸に身を捧げ
チェ尚宮様に嫁いだんですから」

そこへ
だだだ~と三人の後ろへ迫る小さな
足音・・・

「え?なに?なに?」と
三人は振り返ると
にっこり笑顔のソマンがつんつんと
衣を引っ張っていた。

「え~~~。若様…まさかお一人で」

アルは素っ頓狂な声をあげ
辺りを見回す。そして
女人三人は膝をおり、ソマンと
目線を合わせる。

「若様?大護軍様と奥方様と
はぐれたの?」

「かかをあ~と。」

ちょこんと頭を下げると
いつもそばで護衛してくれる
ミントの頬へ「ちゅう」をし
アル。ヘジンへと「ちゅう」をする

三人は瞬きを繰り返し
顔を見合わせる。

「「「若様・・・」」」

「ふふふ。サプライズ成功ね
良かったわね…ソマン」

こくりと頷くと父に両腕をあげ
抱っこをせがむ。
このときソマンは、母の身体の異変を
察していた・・・。
それは嬉しい知らせが
もうすぐ届くことと知るのは
まだ先の事であった。


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