木春菊  [偕老同穴] 103 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「暫し行かねばならぬ所がある
ウンスも行かぬか?」

「構わないけど、遠出するの?」

「いや。市井の材木問屋だ
サンギョンに用がある」

「お役目のこと?」

「ああ・・・」

熱い夜を過ごした翌朝
二人揃い暇を賜る。
ウンスの暇は
無理やり感は歪めないのだが…

「・・・喉ががらがら」

「ふぅ~。あれだけ叫べば
致し方なかろう。よくソマンが
目を覚まさなかったことだ・・・。
典医寺に寄り
投薬を煎じて貰うか?」

「いや。絶対いや。ポンの煎じ薬は
苦くて飲めないもの…でもね。この頃
腕をあげたみたいでね。体調不良
えっと…風邪とかお腹痛とか
患者さんの顔色を見ただけで、すぐに
適切な薬を出してくれるの
すごいでしょう。トギの教えも
あるんだろうけど、本人の努力の
賜物よね・・・。暫くすれば治ると
思うから心配しないで」

「ならばよいが。起きれるか
それとも屋敷でソマンとおるか?」

「いや。せっかくのお休みだもの
一緒に行くわ。」

ずっしり重い腰を擦りながら
ウンスは寝台の上に上体を起こす
二人の間には、我関せずと
いまだにすやすやと眠るソマン
ちらりと目をやれば小さな口を僅かに
開き、す~す~と寝息が聴こえる。

「ふふふ…かわいい・・・親ばかね」

そんなソマンを揺り起こす
されどまったく寝起きが悪いのである
そんなソマンには
効果覿面の言葉がある。ウンスの秘策

「ソマン。朝よお出かけするのよ」

「ん?・・・」

「じゃあ。ソマンは夜までお留守番
するのね?」

留守番?その言葉に反応すると
むくっと起き上がり、ヨンを越え
寝台を滑りおり昨晩ウンスが
支度してあるパジチョゴリを
手に持ち、ちょこちょこと歩き
ウンスにぽいっと渡すのである。

「かか…いく。」

「ソマン。父が着せてやろう
お前は、まこと留守が嫌なのだな
そんなに母のそばがよいのか?」

こくこくと頷くと眠い眼を擦り
大きなあくびを一つ落とすソマン

「ふふふ。さあ、お着替え終われば
朝餉を頂き出掛けましょう。
楽しみね。新しいパジを誂えて
もらおうか。すぐ成長するから
困りものよね・・・」

朝餉を済ませテマンの迎えを受け
屋敷を出たのが遅かったのか
市井は人で賑わっていた。

「何かあるのかしら、すごい人ね
若い女の人が多く感じるのは
気のせい?」

「…みなあやつを眺めに
来ておるのではないか?」

「あやつ?」

「サンギョンの店で約束をしておる」

「そうなんだ…お役目なのに
私も行っていいの?なんならソマンや
テマンと散策してるけど」

「構わぬ。テマン…これでソマンと
そこの饅頭屋で、暫し刻を潰して
くれ。そうかからぬはず」

ヨンはそう言うと銭を渡し
ソマンを遠ざける。


「・・・・!」

材木問屋の戸口で佇む一人の若者
ウンスはその顔に見覚えがあった
「イ・ソンゲ」その人だ。
ヨンの腕をぎゅっと握りしめ
ウンスの身体が一瞬強ばる
あの時口にした、苦い思いが
脳裏に甦る。『貴方を殺す人を助けて
しまったじゃない・・・』

「これは大護軍ご無沙汰して
おります。本日は私をお呼びと
窺いこうして罷り越した次第。
医仙様、お懐かしゅうございます
あの折り命をお助け頂き
誠にありがとうございました
私のいまがあるのも医仙様のお陰
ゆえに、何なりとお申し付け下さい
お二人のお力になれるのであれば
このイ・ソンゲ身を粉にし
邁進する所存であります」

ヨンは、ウンスの動揺を
気づかぬ訳もなく、己の腕に回された
その手をふわりと押さえ
「大事ない」と笑みを浮かべ呟く

ソマンは、母である
ウンスの気配には敏感である為
ヨンは遠ざけたのだった。

「ヨン…どこで再会していたの?」

「西京に紅巾が押し入った折
ちらりと見かけ、スリバンに
探し出してもらっていたのだ。」

「よもや、大護軍が私などを
お探しなどとは、思いもよらず
お仲間の方から繋ぎが参りました折
驚きましてございます」

深く一礼し、顔をあげ
ヨンを羨望の眼差しで見つめる
その姿は、腹に一物を秘める
者の姿ではなく、若かりし頃のままで
あった。

店先ではと
サンギョンが奥へと招き入れる

「恐れながら大護軍様。当問屋に
何か特別なご注文がおありで
ございましょうか?」

「さすが王宮御用達商人。
単刀直入に申す。船を十艘頼みたい
それとイ・ソンゲ。そなた
王様に仕える気はないか。」

ヨンは仔細をこと細かく伝え
船の見取り図もさっと広げ
海軍…いやこれらを水軍と称し
イ・ソンゲに軍をいちから率いて
欲しいことを伝える。

「分かりました。一度戻り
父上と相談し、早急に戻って参ります
ですが、まことにこんな私で
よいものなのでございましょうか」

「今まで、高麗に何のしがらみもない
そなただからよいと思うぞ」

「そのようなもので
ございましょうか・・・。
お二人のお力になれるのであれば
私の望む所ではございますが・・
分かりました。善は急げと申します
私はこれにて失礼いたします」

そう言うとイ・ソンゲは
サンギョンの問屋を飛び出して行く
その背を見送りウンスは
目眩を覚えふらついてしまう。

「ウンス!」

「だ、大丈夫よ。ありがとう」

「医仙様。奥の部屋で
少し休まれては如何でしょうか」

「サンギョンさん。ありがとう
でも息子が待っているの迎えに
行かなきゃ・・・」

「かか~~。」

ヨンの腕に
ふわりと抱かれるウンスの耳に
ソマンの悲しげに呼ぶ声が聴こえる


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