木春菊  [偕老同穴] 94 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「こちらは無事」とウンスが
どうしても添えたい文字を
サルムが、鳩にくくりつけ
空高くすぐさま飛ばした。

「倭寇の刺客であろう。あやつの弱みを
握り身動き取らせぬ為ではないか
まったく・・いつになれば
そなたは穏やかに暮らせるので
あろうのぅ~。あやつの嫁御と言う
だけで不憫でならぬ・・・」

「ふふふ・・叔母様…私の世でも
名が残るほどの人なんです
このくらい仕方がありません。
覚悟し戻ってきたんです
今はソマンも授かりこんなに
幸せなんです。ですから
気にしないでください」

「そなたは・・・」

屋敷へと戻る馬車の中
チェ尚宮はしみじみ呟くのであった



一方高麗軍は・・・

「なに?!」

「いまごろはチェ・ヨン。お前の
奥方を捉えておるはず
これで手出しは出来まい
膝まずき許しを請え、さすれば
命だけは、いまは助けてやる
我が国へ連れて行き、晒し首に
してくれるわ。がはははっ
お~奥方は天女と聴く
じっくり味わいすぐにその方のあとを
追わせるでの・・案ずることはない」

二重にも三重にも策を
講じ、戦地へと赴いたはず
漏れはないかと、ヨンは頭の中は
策の見取り図が広げられている

一瞬の気の迷いは戦場で命取り
それをたたみヨンは己の策を
叔母上を、残してきた仲間を信じ
きりりと顔をあげる。
己の迷いで仲間を失う訳にはいかぬ
と、顔に書いてあるかのように…

「降参せぬともうしておるのだな
よかろう。その命!某がもらい受ける」

アンジェ率いる鷹揚軍と
チュンソク率いる迂達赤がヨンの脇を
固める。テマンはむろんヨンの背を
守る。

「テマン。ついて来れるな!」

「はっ!」

チュホンの脚について来れるのは
テマンの脚だけである。

春の花が蕾を膨らませ
咲き乱れようとしている最中
踏み散らすには忍びないが
この地を守るがためヨンは
チュホンの横腹を蹴り
沿岸沿いの道なき道を駆ける。
倭寇もそれは同じである。

馬上から倭寇大将を庇い
歯向かう輩を斬り、前に突き進むヨン
その背をテマンが追う。
ヨンの形相に驚き、敵兵が自然に
左右に別れ一本の道ができる程である

「鬼神」
まさしくそれである。

アンジェ、チュンソクが斬り捨て
トクマンが槍で突き刺し道を広げる
そのあとを多くの兵が突き進む。

スリバンからシウルとジホも
それに加わる。
むろんたんまりと駄賃をせしめる
つもりでおるのだが…この二人も
ヨンの滲み出る男気に惹かれた
と言えよう。

「ジホ~~。都から鳩が来たぞ~」

現地のスリバンがジホを見つけ
脇からひょっこり顔をだす。

「都から?…きっと医仙の事だな
ヨンに知らせるわ。ありがとよ」

文を受けとるとジホは近道を
現地のスリバンに案内させ
あっと言う間にテマンの背が
目の前にある。

「テマン~~。ヨンの旦那に渡して
くれ~。都からだ」

「おお。ジホ分かった渡すよ」

石ころをおもりに
ぽいっと投げられた文を難なく
受けとると、懐深くしまいこみ
加速する。
その間も近寄る倭寇の兵士を蹴散らす

「なぁ~シウル…テマンのやつ
嫁をもらってより強くなったんじゃ
ないか?」

「ああ~そう見えるな。
俺たちもうかうかしてられないぞ」


「行け!何を尻込みしている!」

倭寇の大将は後ずさる兵士を
前に押し出し、己の盾しようと
している。それを間近で
目にしたヨンの怒りは
相当なもの、チュホンから
颯爽と飛び降りると

「命がほしかろう。退け!」

「わわわぁっ~ひぇ~い。助けて
くれ~~~」

「お、お、おい!逃げるな!
大将を置いて逃げる馬鹿がどこにいる」

背を向け逃げ去る兵士の後ろ姿に
罵声を浴びせ、倭寇総大将は
振り返りヨンを睨みつける。

「・・俺は、兵士を盾にするなど
無様な真似はせぬ!。倭寇の総大将は
余程腰抜け殿とお見受けする
そのような大将の元で
命を投げ出すなど、兵士が不憫でならぬ
その命をもって償い詫びるがよい!」

「ま、待て。奥方がどうなっても
よいのだな」

「俺は残してきた仲間を信じる!」

問答無用とばかりにヨンは剣を
振り下ろす「ぶぐっっ」っと
左膝をつき倒れ込む総大将
その右脚は、付け根から斬り落とされ
ころんと転がっている。

「・・・ぐっ~。とどめをさせ!
それが武士であろう!」

「・・価値もなかろう。お前が
盾にした兵士の無念を
思い知るがよかろう…
もがき苦しみ逝くがよい。」

ヨンの元、散ってよい命など
一兵たりとも考えられぬ事。
その教えは高麗軍末端まで
広く行き渡っている。
「ぷゅ~ぷゅ~」とテマンの指笛が
大将を撃ち取ったと合図を送る

「大護軍。これジホから
預かってました。」

「ん?」と言う顔をしヨンは
石ころを来るんだ文を受け取り
それを開く。

「こちらは無事。괜찮아(ケンチャナ) 大丈夫よ、사랑해(サランヘ)愛してる」

見覚えのある天界語が
びっしり書き込まれている
それを愛しそうに指でなぞり
ヨンは懐にしまいこむと顔をあげる

幾つもの骸が転がる
辺りを見回すとぽつりと呟く

「テマン。怪我はないか?」

「へっちゃらです。」

「そうか。ならば後始末をし
都にもどるぞ。お前も嫁が恋しかろう」

「はい!!」


「大護軍。・・テマンの指笛が
聴こえましたが?」

「ああ…済んだ。あそこに・・・」

ヨンが背後を顎で示すと
苦痛に顔を歪めのたうちまわる
倭寇大将の姿がある。
ふと目をやれば右脚が転がり
根元から鮮血が吹き出し
新緑に埋め尽くされた芝が真っ赤に
染まっている。誰が見ても
「ああ。持たぬな」と一目で分かる
ほどである。

「皆無事か?」

「・・・・」

「そうか。・・・丁重に葬ってやれ」

「すでに進めております。」

捕らえた倭寇の兵は
数珠繋ぎに縛られ都へと連れ帰り
刑部預りとし、王様の詮議を
待つことになる。
こう度々攻め入る倭寇の現状を
聞き出し策を練る。大護軍が
そうお考えになったのだと
チュンソクはひとつの結論を
導き出していた。

「支度が整い次第都へ戻る」

ヨンはそう伝えると、一人天幕へと
戻り、連れ帰る事が出来なかった
兵士の冥福を祈るのである。

半刻程しヨンが天幕から姿を見せる

「先に戻ってもよいぞ」

「・・いや、はよう戻りたいのは
皆おなじ、アンジェお前もともに
もどる。都は無事のようだ」

「お前の馬なら二日も駆ければ
都へ戻れるものを、まことよいのか」

「・・構わぬ。亡くなった者の魂も
俺が連れ戻らねばならぬゆえ・・」

敵に鬼と恐れられ
民には鬼神と崇められ…されど
まことのところは、気の優しい
おのこ、と、アンジェとチュンソクは
知っているがゆえその背に
背負う重りをいかばかりか
分けてくれれば良いものをと
腹の底で切に願う二人であった。


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