木春菊  [偕老同穴] 93 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「なに!屋敷に刺客とな?」

「はい。チェ尚宮様
たったいまスリバンからの繋ぎの鳩が
裏門へ舞い降りてございます
文はこれにて」

門番の一人が
何事かと先に目を通した事を
詫びながら、武閣氏らが住まう
別棟でチェ尚宮に文を手渡す。

「構わぬ。ご苦労だった・・・」

小さく折り畳んだ文を広げ
わなわなと怒りが込み上げるチェ尚宮
すぐさま「はあ!」と息を吐くと
王妃様のもとへ走る。

「義姉様は、ご無事か?
王様にお頼みし兵を遣わすのが
よいの?」

「それはなりませぬ。戦に駆り出され
王宮を御守りする兵が少ない中
いち臣下に過ぎぬ甥の屋敷になど
滅相もございませぬ。されど
王妃様…願いの義が・・」

「なんじゃ、申してみよ」

「暫し、お側をお離れする事を
お許し願いたくお願い申し上げます」

「構わぬ。そうそうに行って
差し上げよ。大護軍の血筋を引く
チェ尚宮がそばにおれば心強いはず
妾の事は案ずることはない。」

「されど…王妃様・・狙いはウンス
ソマンやも知れませぬが、都に刺客が
押し入りし事実を見逃す訳には
まいりませぬ。王様のおそばに
身をお寄せ下さいませ。さすれば
警護しやすいかと…」

「相分かった。すぐに支度を」

すぐにでも飛んで行き
その懐へ、二人を囲うてやりたい
気持ちは山々なれど、それを許さぬ
己の立場が恨めしいチェ尚宮である。

王妃様を王様のお側へお連れし
すぐに馬に跨がり駆け出したのは
言うまでもない。




「どうしたの。サンミ?」

一気に駆けるつもりで、腹をくぐり
手綱を握り締めていたサンミでは
あったが、突然目の前に現れた
刺客に馬車を止めるしかなかった。

「奥方様!。サム殿!馬車から出ず
暫しご辛抱を。サンミ奥方様の
おそばに。用心の為小刀をお持ち
下さい」

アルが馬車へと声を掛けると
サンミを馬車の中へと潜り込ませる
イルムが懐に忍ばせる小刀は
見た事はあるが、実際手に持ち
奥方様や若様を御守りするのは
初めてのこと。幾分落ち着きがない
のは致し方ないことと言えよう。

「・・かか・・まもれ・・ととが
そういった。」 

本音は怖いであろうソマン
だが父との約束を守る為
片言の言葉を懸命に繋げ
ウンスに伝えようとしている。

「大丈夫よ。ソマンみんながいるわ」

「そうですよ。ソマン殿
このサムも武人の妻、腹は据えて
おります。幼き頃より親に隠れ
野山を走り回っておりました
いざとなったらスンジャとソマン殿を
抱え逃げのびてご覧にいれます」

「すんじゃはしゅれる(はしれる)?」

「まだ無理だけど・・・」

ウンスの言葉を遮るよう
「きぃ~ん」と剣のぶつかる音がする。

「駄目よ。ソマンじっとしてなさい
足手まといになるだけだから
お願い・・誰も怪我しないで・・」

馬車の中のウンスとサムは
震えるサンミに守られながら
馬車を降り暴れようとするソマンと
スンジャを互いにぎゅっと抱きしめる

「かか…ソマン・・おりる
とと、とおなじちからある
おりて、う~んとめ!する…」

「・・め!しても敵は倒れないわよ
だから静かにしていて、ソマンお願い
貴方にもしもの事があれば
母は生きていられないわ。」

「・・・」

うまく伝わらずソマンは顔を歪め
もどかしさを覚える。
されど自身の不思議な力は
すでに理解しているのであろう
諦めず顔を斜に傾け、ウンスの瞳を覗き
込み言葉を繋ぐ

「ちかちかば~んっでおやちゅみする」

「そうね・・・ソマンの内功は父と
同じだけど、貴方はまだその力を
制御できないわ。父のすごいところはね
…その力を制御できることなのよ
わからないわよね・・・とにかく
絶対だめよ。」

「ウンス!ソマン!!」

馬車の戸口が急に開けられたと同時に
ソマンがするするとウンスの膝から
降りると、サンミの前に立ち
「ぱこ~ん」と遊具の剣を
振り下ろしていた
サルムもみかけは大柄なおのこの
部類である。腰を屈め馬車の戸口を
開けた為か、ちょうど幼いソマンの
剣がサルムの頭部めがけて
命中したのである。

「いたたたたっ・・・」

「あ・・・」

「きゃ~サルム姐さん大丈夫!」

「ソマン!ひどいわよ・・・
頭割れちゃうところだったわよ
ヨンに言い付けてやるんだから」

「・・・・」

「ぱこ~ん」と叩いたのはよいが
遊具の剣が「ぽきっ」と折れた
ほとである。サムはすくりと笑い声を
漏らすほどその光景をおかしく
思い、見つめていた。

ソマンは言葉もない。
ととに言い付けられる・・
恐る恐る腕をあげサンミの頭部を
撫でる・・・
策士の息子の策であろうか

「さるむ・・とといわない?」

「言わないで欲しいの?」

ぱあっ~と笑みを浮かべ
こくりと頷くとサルムの頭をなでなで
するソマン。

「じゃ~頬にちゅうしてちょうだい」

「ぎょっ・・・!」

「あら~。ウンスにする癖に
あたしにはできないってこと?
ヨンに言い付けちゃおうかな~」

「はあ!」

ソマンは、短くため息を吐くと
覚悟を決めた様に、唇を尖らせ
眼をぎゅっと瞑りサルムの頬に
唇を近づける。

「サルム!そんな事をしておる場合か」

「ぎゃ~~」

チェ尚宮である。サルムの首根っこを
ひょいと掴み後ろへ放り投げる

「まったく!…」

「おばば~~~~」

「お~~。ソマン泣くでない。
おばばが来たからには、すぐにかたを
つける故の~もうちいと待っておれ」

チェ尚宮は、馬車の中のウンスやサムが
無事な事を確かめると
「馬車から出るでないぞ」と言い残し
サルムに顎で合図を送ると
アルやソウやヘジンやチョンスが
刺客と戦う通りに走る。
馬車の戸口にはイルムが剣を構え
睨みを利かせるのである。

市井の外れて、大捕物が行われて
いるのだ。早朝とはいえ
民は遠巻きに眺める。以前チェ家の
馬車を往復警護していた民は
手に鍬や鎌を持ちいつでも参戦する
心意気を表してはいるが
怪我などさせたらウンスが悲しむと
女主の思いを組み、チョンスは
懸命に声を張り上げ説き伏せる。

「来るな~~~。その心根奥方様に
ちゃんと伝える。怪我でもしたら
かえって悲しまれるだけだ。」

「だけどよ~~。大護軍もいねえだ
大丈夫か、あんたらだけで?」

「ああ。任せろ!みんな腕の立つ者
ばかりだ!心配すんな
家に隠れていてくるれ~。巻き込ませる
訳にはいかないんだ。」

「「・・・・」」

チョンスの言葉に、市中の民は
各々が家へと身を潜め様子を伺う。

馬車を追ってきた倭寇の刺客は五人。
こちらはチェ尚宮を筆頭に
アル、ヘジン、ソウ、サルム、チョンス
と六名いる。イルムは馬車を
守っているがいざとなれば参戦するで
あろう。勝算は十二分にある。

剣が交わる甲高い音が
あちらこちらからと
漏れ聴こえていたが一気に静まり反る

「ふぅ~。猿轡を噛ませよ
賊を王宮牢へと放り込み
王様の沙汰をお待ちする。よいな!」

腕を斬られたものもおれば
骸となり転がる刺客もいる中
生のあるものは捉えられ
縄で縛りあげ猿轡を噛まされる

「ウンス。ソマン大事ないか?」

「おばば~~~」

馬車の戸口を静かに開けると
ソマンがその懐に飛び込んでくる
ぎゅっと抱き付きその胸に顔を
埋め離れようとはしない。

「あ~と(ありがとう)おばば・・」

「ふぅ~。そうかそうか・・」

チェ尚宮は嬉しそうに頬を緩め
ソマンの頭を撫でてやるのであった。


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