木春菊  [偕老同穴] 85 | シンイ二次小説でんべのブログ

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ウンスは全神経を手先に集中し
大きくせりだすサムの腹に両手をおく

「サム。少し気持ち悪いかも
ぐにょって感じれたら教えてくれる?」

こくりと無言で頷くサム。
「んんっはあ~はあ~」と押し寄せる
陣痛に眉を潜め苦しそうである。

「痛みは逃がしてね。サンミ。イルム
手を握ってあげて!
さぁ~おんまが待ってるわよ。」

「んんっ~」

「ウンス!頭が見えてきておる!」

「良かった。・・うまく回転してくれたのね。サム!波に乗るわよ
次の陣痛で息んで!」

「んんっ----。」



『サム。サム・・・』
部屋の外では拳を握り締め
右に一歩、左に一歩と
まったく落ち着きのないチュンソク
寒いこの季節。額に汗し
顔は蒼白くいまにも倒れそうである。


「叔母様。貸して下さい」

産声をあげず生まれた赤子…
唇は紫で仮死状態であるのは
医者のウンスには分かる
最悪の事が起こり得る可能性が
十分考えられる折
「生まれたわよ」とは口にはしない
のが、暗黙の決まりごとである。

そっと生まれた赤子を、その手に抱き
逆さにし、その背を何度もたたく
『お願い。かえってきて・・』

し~んと静まりかえる室内
叔母様が後産の始末をしている。
トギが気の静まる香を焚く
ポンは煎じ薬を用意するため
厨房へと消える。
イルムとサンミは、サムの汗を拭き
誰もが赤子の事を口に出すことはない

「おぎゃあ、おぎゃあ---」

「はぁ~~。ありがとう…
戻ってきてくれたのね・・・
サム!聴こえた?生まれたわよ
女の子よ、エギョン!沐浴お願い」

ウンスは部屋の隅に控えている
エギョンに赤子をそっと渡す
用意された盥で、手早く産湯を浸かり
きれいに清められた赤子が真新しい
産着に包まれ
サムの枕元にそっと寝かされる。

「・・・ウンス。・・・」

サムの目尻から幾筋もの涙が流れ
ウンスの名を呟くのが精一杯である。

「チュンソクさん。もういいわよ
サム頑張ったのよ。」


部屋の外にはいつの間にやら
ヨンとソマンも到着していた
「・・・」
がだがた震え、一歩を踏み出せない
チュンソクの背を黙っておすヨン

「・・・はっ・・」

戸口そっと開けると
鼻につく血の匂い、されど戦場の
匂いとは違い、神神しいとさえ
感じとれるチュンソクであった。

「サム・・・」

「・・・チュンソク様・・」

サムと赤子のそばまで歩み寄り
正座すると
「よう頑張った!」と声を掛けるのが
いっぱいでありあとは、しくしくと
男泣きする。
チュンソクのあとに続きソマンが
てくてくと歩き顔を出す

「ソマン。来ていたの・・さみしい
思いをしていたかしら?」

「いや。トクマンと機嫌よく遊んで
いたようだぞ。」

「とっまんちくっちゃい」

「そう。・・臭かったのね
ふふふ。でも泣かなかったの?
えらいわよ」

ウンスは目元を緩め
ソマンの頭に手をおき
優しく撫でるのである。

「医仙殿。なんと礼を述べれば
よいものか、思い浮かびませぬ
誠に忝なく・・・」

「私だけの力じゃないわ。みんなの
協力があってこそなの。叔母様
みんなありがとう」

ウンスはみんなを見回し頭をさげ
チュンソクもそれにならい
深々と頭をさげる。


「サム~~~」

警護にあたっていたテマン制止を
振り切りサルムがばたばたと駆け寄る

「ウンス。ひどいじゃない知らせてよ
サムの出産は絶対立ち会うって
決めていたのよ。」

「ごめん。そうだったんだ、ふふふ
そこまで気がまわらなくて」

「もう~。ま、いいわ…どれ~赤子
抱かせてよ。」

「ならぬ!!おなごゆえ
そなたには抱かせぬ!」

「あら~なんでよ。同じおんなよ」

「ふふふ。分かったから静かに
しないとサムが休めないじゃない
サルム姐さんも、また日を改めて
訪ねてくれる?そうね床あげまで
一概には言えないけど、二週間
えっと十四日くらいは必要だから
その後にでも…」

「あら嫌だ。都に戻ってきたのよ
昼は通いの人がいるんでしょう
夜はあたしがしばらく受け持つわ
寝るのはあたしはどこでも構わないし
便利でしょう?」

ありがたい話である
容態が急変してもサルムなら
すぐに屋敷に駆け込んでくれる
渋るチュンソクを宥め了解を得る。

「チュンソクさん。名前は決めて
あるの?」

「おなごならスンジャと決めて
おりました。無難に生きて行けと
言う願いがこもっております。」

「スンジャちゃんか、ふふふ。可愛い
らしい名前ね。きっと両親の思いを
汲んで、高望みをせず地道に世を
渡ってくれるわ。」


ウンスは乳の与えかたやいろいろ
説明し、叔母やみなとともに
チュンソク家をあとにする

門で叔母やトギ、ポンと別れ
ヨンはテマンの労を労う

「テマン。ご苦労だった
戻ってもよいぞ」

「はい。赤子の鳴き声がしましたが
どちらが生まれたんでしょうか?」

「おなごだ!!」

「迂達赤が気にしていると思うので
トクマンに知らせてから家に帰ります」

「ああ。すまぬな」

テマンはぺこりと頭をさげると
もう姿を探すのが難しいくらい
遠くを走っている。

「相変わらず早いのね…きっと
叔母様達を追い抜いたわよ…ふふふ」

「ふっ・・・テマンは変わらぬな
疲れたであろう?エギョン。先に行け
すぐに飯の支度を」

「では失礼して先に行かせて頂きます
ごゆるりとお戻り下さいませ」

ヨンとウンスに一礼すると
先を急ぎ駆け出す。

ウンスとあれやこれやと
話に花を咲かせそのおしゃべりは
屋敷についても尚続いていたのである


チュンソクとサムの赤子は
女の子でスンジャと命名されました。
以後宜しくお願い致します。

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