木春菊  [偕老同穴] 証 103 | シンイ二次小説でんべのブログ

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あっと言う間に一月(ひとつき)がたち
とうとうウンスは産み月となる

この地では春節を祝う習わしがある
此度の春節は、待望の王子様ご誕生と
言う慶事の年であり、盛大なものと
なっていた

都の子らは、チェギチャギやユンノリ
(双六)で遊び、街道はいつになく賑やか
な様子であった。

「寒くないのかしら…子供たちは元気よ
ね。ヨンはどんな遊びをしたの?」

「 俺は、アンジェとチェギチャギを
して遊んだ記憶がある。あれは
武芸を志す者には、身体の芯を鍛練する
のに良くできておる」

「子供の頃から、武官を目指して
いたの?」

「そうではなかったと思うが
一応器用に、何でもこなしていたやも
知れぬな…」

「すごい…なんでも良いけど
貴方を負かす人なんて居たのかしら」

「一人おるぞ…俺が一度も勝てぬ
お方が」

「うっそ--誰?誰?」

出仕途中、馬車の中でウンスは
素っ頓狂な声をあげる。
ヨンの膝の上、顔を百面相のように
変形させ、まん丸眼をより一層見開く

「分からぬか?俺を負かす
唯一のお方を」

「あ!分かった…王様でしょう?」

「いや…教えてやらぬ」


御者を努めるテマンに、その声が
届くと…

『はあ…王様には勝てないかも
知れないけど…一人いるでしょう
頭の上がらない人が…鈍いにも程が
ありますよ、奥方様…』

テマンは胸のうちで一人ごちる


「寒くはないか?」

話を反らすように、ヨンはふわりと
覆い被さり抱きしめる

「大丈夫よ…それより重くないの?」

「ウンスの重さなど何も感じぬ
赤子が、ちと重いがな…クックッ」

「それは、私が重いと言っているのと
一緒よ…降りるから・・・」

もぞもぞと、ウンスは膝から降りようと
するが、それを逃すまいと、ヨンは
ぎゅっと抱きしめ直す
ぽんぽんとウンスの腹から
蹴りが入り…

「まったく…ここにも俺が敵わぬ
赤子がおる・・クックッ」

「え?もしかしたら…ヨンが敵わない
お方って、私?」

「・・・」

ヨンは、ウンスの問いには答えず
にやりと口の端をあげ見つめている



典医寺に揃って顔を出すと
イム侍医が、ため息を吐き、肩を落とし
椅子に腰掛けていた

「おはようございます…イム侍医・・」

「え?は、はい…おはようございます
大護軍、医仙殿」

「どうかしましたか…ため息なんか
ついて…侍医らしくないですよ」

「はい…それが昨夜から父上が
戻らないのです…遅くに材木問屋の方を
訪ねたのですが…もう帰って四半刻は
立つとおっしゃってまして
急ぎ戻りましたが、とうとう今朝まで
戻らずじまいでして・・・」

「・・どうしたのかしら・・何か
厄介に巻き込まれてなきゃ良いけど」

ウンスの世なら携帯や連絡手段は
山ほどあるが、この地では皆無と言って
良いほどないのだと改めて感じる
ウンスだった…

「侍医・・心当たりはないのか?
どこか、他の兄弟のところにいるとは
考えられぬか?」

「ないと思うのですが・・・」

「相分かった、この案件任せては
貰えぬか…探し出してみせる故」

ヨンは、侍医の肩に手を置き
眼を見つめしっかりとした口調で
告げる

「甘えても良いのでしょうか?」

「ああ…構わぬ」

「・・・男同士の友情って良いもの
よね」

ウンスにそう言われ
ふとかつての侍医を思い出す
今でこそ迂達赤は、固い絆で結ばれては
いるが、かつては侍医だけが友と
思っていたものだと懐かしく思い返す
ヨンであった。

「あら…ふふふ・・・会えたの?」

「ああ…微笑んでおった気がする」

「良かった・・・チャン先生は
私にとっても、一番初めに友と呼べる
人だったし、命の恩人だから
彼方の世界では、笑って過ごして
欲しいもの」

ウンスはそう呟くと、ちらりとヨンを
みやる
ヨンもまた目尻を下げウンスを
見つめているのだった。


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