木春菊  [偕老同穴] 証 99 | シンイ二次小説でんべのブログ

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蹄の音が聴こえてくる
だが、雪が降り積もり夏場のように
駆けることは出来ないようである

ぱかぱかと、一定の間隔でチュホンが
近づく気配がする

「旦那様のお戻りみたい」

ウンスはそう呟くと、大きなお腹を抱え
出迎えに出る…

「奥方様…なりません。外はお寒う
ございます。中ではお待ちを
出迎えは我々が致します」

「じゃあ玄関まで、屋敷から外には
出ないから…お願い・・・」

ウンスは、顔の前で手を合わせ
エギョンの顔を覗き込み
お願いの仕草をする
主がこんなお願いをするのだ
断れる筈もなく、エギョンは苦笑いを
浮かべると、サンミ、イルムに
おそばにいるような命じ
自身は、チョンスと門まで駆け寄る

「お帰りなさいませ…旦那様」

「いま戻った…奥は?」

「玄関の方にいらっしゃいます」

ヨンは、馬上からそう声を掛けると
颯爽とチュホンから飛び降り
手綱をチョンスに渡す。
そして玄関で待つウンスの元へと
時を惜しむように、大股で歩を進める

「お帰りなさい…ふふふ
お役目、ご苦労様でした」

「ああ、いま戻った…大人しゅうして
おったか?」

「ええ、市井に買い出しには行ったけど
帰ってきてからは、皆でご馳走を
作っていたのよ…さあ、鬼剣を預かるわ
寒いから、早く入ってちょうだい」

ウンスは、鬼剣を預かり収めると
二人は、微笑み見つめ合い
腕を絡め居間へと向かう

「湯浴の支度も整っているわよ
先に済ませた方がいいんじゃない?」

「ウンスは済ませたのか?」

「まだよ…だって滑って転んでも
したら大変じゃない…だから待って
いたのよ」

待っていた…その言葉にヨンの目尻が
下がる思いがする。

「背中流して欲しいの
手が届かないから…お願いできる?」

「ああ…」

ヨンは、緩みがちになる頬を
使用人の手前、きりりと引き締め
湯殿へと向かう


「今日はね…大晦日なのよ
家族で、ご馳走食べて皆で新年を
祝うのよ…だからちょっとだけ
ほんのちょっとだけ、贅沢したかも」

「ウンスの世の新年を祝うのだ
義父上、義母上とともにおる良い機会故
贅沢とは思わぬ」

湯殿にて大きな手で、ウンスの背中を
流す。うっとりと瞼を閉じ
その大きなお腹に、そっと手を添え

「そうね…あなたも、お祖父さん
お祖母さんのいる世の習わしを
ともに祝ってあげてね…」

「会わせて遣りたいとは思わぬのか?」

「・・そりゃあ、会わせてやりたいけど
叶わぬ夢よ…そう思っているから
あ!「すまぬ」って言ったでしょう?
駄目よ…私の意思でここにいるの…
分かってるでしょう」

「分かっておるのだ…俺の二親は
もう亡くなっておる故、諦めがつく
されど…ウンスは・・・」

「まったく・・・それ以上ごじゃごじゃ
抜かすならその口塞ぐわよ!!
んんっ----」

いらぬ事を言ってしまったようだ
いつもヨンに言われる言葉を
吐いたばかりに、ウンスの口が
塞がれてしまう・・・

それから、ウンスの艶っぽい吐息が
湯殿から漏れ聴こえたのは
言うまでもない…



二人が湯殿から戻ると…
赤ら顔のイルムとサンミが、俯き加減で
待っていた

「どうしたの?顔が赤いわよ…熱でも
あるんじゃない?」

「・・・いえ・・・大丈夫です」

サンミがしどろもどろに答える…

湯殿に、身体を拭く手拭いがないことに
気が付いたエギョン。だが手が離せない
二人に頼み、新しい手拭いを
湯殿に届けさせていた

そこで漏れ聴こえたウンスの吐息・・

「「・・・!!」」

顔を見合せ逃げるように厨房へと
戻ってきた

「どうしたんだい二人とも」

「「・・・・」」

赤ら顔。そして俯き黙りを決め込む
サンミとイルムに、察しのいい
エギョン。すぐに何を聴いたのか
飲み込めた

「良いかい?二人とも…旦那様と
奥方様は、いつまでも恋い慕う二人
なんだ…ところ構わず口づけもされる
だけど、二人の年頃なら嫁に行ってる
子もごまんといる筈だよ…いちいち
顔に出していたら、使用人は務まらない
分かるね?」

頭では、イルムもサンミも分かって
はいる。営みがなければ
自分らも、この世にはいないことは。
だが、初めて聴いたその時の声が
頭から離れないでいた

「旦那様は、人の気配が分かるお方
だから…二人が湯殿に近づいたのは
知っていらっしゃる筈だよ…だけど
奥方様には、知られちゃならないよ
分かったね」

こくこくと頷く二人・・・・

ご馳走を居間に運び
何度か往復すると、気が落ち着いたのか
二人は言葉を交わす事ができた

「なあ…サンミ?おらたちもいつかは
嫁さんになれるべが?」

「分からないよ・・・でも嫁さんに
行っても奉公は、辞めたくないよね」

「んだな(そうだな)~一生奉公してえな
こんなお屋敷、二度と見つかることは
ねえべな」

だが…ヨンとウンスの顔を見ると
どきどきが止まらないでいるのだった



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