「お~い!テマン~」
「チッ・・シホか…」
「お前!今舌打ちしただろう
なんだよ、折角情報持って来たのによ」
「医仙様が見つかったか!」
シホがぷぅ~と頬を膨らませそっぽを
向くと、テマンが必死の形相で
シホに掴み掛かる
「ああ、見掛けた人がいたんだ
今、姐が追っているさ、俺は知らせに
来たんだよ!」
「姐?…マンボさんか?」
「違うさ、白い衣を纏ったあの人さ
名前は知らねぇが、姐と呼ばせて
いるからよ」
「ああ、分かった…あの人か」
「テマン、通ったとこ印がある筈だ
石ころ積んであるんだ、それを確かめて
行けよ」
「ああ、分かったありがと」
そう言ってテマンは駆け出す…
「あちゃ~もう見えねえわ、これが猿と
言われる由縁か・・・・」
シホはヨンに知らせる為、再び王宮
目指して歩を進めていると、蹄の音が
シホの耳に届く
「・・・間違いねぇチュホンだ」
「お~い、ヨンの旦那~ここだよ~」
シホは近場の民家の屋根に登り
まだ陰も見えないヨンに向かい大きく
手を振り声を張り上げていた
「ここは、市井程賑やかじゃねえし
これだけ声なら聞こえるだろうよ
よし、降りるか」
と、シホは屋根からちらりと飛び降りる
「どっどっど…シホ!見つかったか?」
「多分な…姐が追っているし、テマンが
にも伝えたぞ」
ヨンはチュホンの手綱を引き摺く
そして馬上からシホと話をする
「すまなかった…駄賃は後から届ける故
先を急がねばならぬ・・・」
「ああ、いいさ、その代わり弾んで
くれよ駄賃を」
「分かっておるすまぬな」
ヨンはそう呟くと再びチュホンの脇腹を
蹴り、颯爽と駆け出す
「ヨンの旦那、どれだけ奥方が
心配なんだ…もう見えねぇ~や、テマン
といいさ、まったく・・・」
シホは背伸びをしヨンが走り去った
方角を眺めながら、ぶつぶつと小言が
止むことはなかった
『あいつより先に見つけないと
大護軍の機嫌が悪くなるかも知れないな
一応男だしな…あぁ~急がないと』
テマンはそう胸の内で思い駆け出す
「テマン!!」
「大、大護軍…」
「この先に僅かだがあの方の気を感じる
もう戻ってもよいぞ、すまなかった」
「いや、一緒に行きます!大護軍は
俺のアボジでありヒョンでもあります
大護軍の大事なお方は、俺にも大事な
人です…だから一緒に行きます!」
「・・・テマン・・・」
チュホンと並走するテマン
流石に息を切らす
「乗れ」とヨンは声を掛けるが
テマンは頚を左右に振ると
「チュホンが嫌がりますから
俺は、走ります」
一瞬だけヨンの方を見ると白い歯を
にこっと見せ再び前を向く
「まったく…頑固者・・ならば行くぞ
テマン!付いて来い!!」
ヨンはテマンの心根が嬉しかった
アボジ、ヒョンと呼んでくれたのも
そうだが、ウンスの事を大事な人と
思い、口に出して伝えてくれた事が…
ヨンとテマンは、あっと言う間に姐を
追い付き追い越して行く
「ち、ちょっと何よ~・・・二人して
何の挨拶もないのね…頭きちゃう…
フン、まあ良いわ許してあげるわ
早く見つけてあげなさい、きっと心細い
筈だから・・」
そう呟き二人を見送っていた…
「ん?蹄の音…まさかね、こんな所で
迷子になってるなんて思わないわよね
はぁ~寒い…お腹空いた~」
「イムジャ~~~!!」
「え??空耳?」
ウンスは辺りをキョロキョロと見回すが
人の影すら見えない
「やっぱり空耳なんだ…私も重症だわ
ヨンの声が、聞こえた気がしたんだけど
ふふっ、なんだか笑えるわ…」
「姉さん~~~!」
『姉さん?私をそう呼ぶ人居たかしら
???やっぱり誰かを
呼んでいるんだわ…私みたいに
迷子になった人がいるのね…早く
見つけてあげてね』
等と惚けた他人事のように思って
聴いていたウンスだったが
「イムジャ~!」
今度は鮮明にウンスの耳に届いた
愛しいその人の声が・・・
泣くまいと堪えていた涙が一気に
ウンスの瞳に浮かぶ…
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