木春菊  [偕老同穴] 105 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「お~い!テマン~」

「チッ・・シホか…」

「お前!今舌打ちしただろう
なんだよ、折角情報持って来たのによ」

「医仙様が見つかったか!」

シホがぷぅ~と頬を膨らませそっぽを
向くと、テマンが必死の形相で
シホに掴み掛かる

「ああ、見掛けた人がいたんだ
今、姐が追っているさ、俺は知らせに
来たんだよ!」

「姐?…マンボさんか?」

「違うさ、白い衣を纏ったあの人さ
名前は知らねぇが、姐と呼ばせて
いるからよ」

「ああ、分かった…あの人か」

「テマン、通ったとこ印がある筈だ
石ころ積んであるんだ、それを確かめて
行けよ」

「ああ、分かったありがと」

そう言ってテマンは駆け出す…

「あちゃ~もう見えねえわ、これが猿と
言われる由縁か・・・・」


シホはヨンに知らせる為、再び王宮
目指して歩を進めていると、蹄の音が
シホの耳に届く


「・・・間違いねぇチュホンだ」

「お~い、ヨンの旦那~ここだよ~」

シホは近場の民家の屋根に登り
まだ陰も見えないヨンに向かい大きく
手を振り声を張り上げていた

「ここは、市井程賑やかじゃねえし
これだけ声なら聞こえるだろうよ
よし、降りるか」

と、シホは屋根からちらりと飛び降りる


「どっどっど…シホ!見つかったか?」

「多分な…姐が追っているし、テマンが
にも伝えたぞ」

ヨンはチュホンの手綱を引き摺く
そして馬上からシホと話をする

「すまなかった…駄賃は後から届ける故
先を急がねばならぬ・・・」

「ああ、いいさ、その代わり弾んで
くれよ駄賃を」

「分かっておるすまぬな」

ヨンはそう呟くと再びチュホンの脇腹を
蹴り、颯爽と駆け出す

「ヨンの旦那、どれだけ奥方が
心配なんだ…もう見えねぇ~や、テマン
といいさ、まったく・・・」

シホは背伸びをしヨンが走り去った
方角を眺めながら、ぶつぶつと小言が
止むことはなかった



『あいつより先に見つけないと
大護軍の機嫌が悪くなるかも知れないな
一応男だしな…あぁ~急がないと』

テマンはそう胸の内で思い駆け出す




「テマン!!」

「大、大護軍…」

「この先に僅かだがあの方の気を感じる
もう戻ってもよいぞ、すまなかった」

「いや、一緒に行きます!大護軍は
俺のアボジでありヒョンでもあります
大護軍の大事なお方は、俺にも大事な
人です…だから一緒に行きます!」

「・・・テマン・・・」

チュホンと並走するテマン
流石に息を切らす

「乗れ」とヨンは声を掛けるが
テマンは頚を左右に振ると

「チュホンが嫌がりますから
俺は、走ります」

一瞬だけヨンの方を見ると白い歯を
にこっと見せ再び前を向く

「まったく…頑固者・・ならば行くぞ
テマン!付いて来い!!」

ヨンはテマンの心根が嬉しかった
アボジ、ヒョンと呼んでくれたのも
そうだが、ウンスの事を大事な人と
思い、口に出して伝えてくれた事が…



ヨンとテマンは、あっと言う間に姐を
追い付き追い越して行く


「ち、ちょっと何よ~・・・二人して
何の挨拶もないのね…頭きちゃう…
フン、まあ良いわ許してあげるわ
早く見つけてあげなさい、きっと心細い
筈だから・・」

そう呟き二人を見送っていた…



「ん?蹄の音…まさかね、こんな所で
迷子になってるなんて思わないわよね
はぁ~寒い…お腹空いた~」


「イムジャ~~~!!」

「え??空耳?」

ウンスは辺りをキョロキョロと見回すが
人の影すら見えない

「やっぱり空耳なんだ…私も重症だわ
ヨンの声が、聞こえた気がしたんだけど
ふふっ、なんだか笑えるわ…」



「姉さん~~~!」

『姉さん?私をそう呼ぶ人居たかしら
???やっぱり誰かを
呼んでいるんだわ…私みたいに
迷子になった人がいるのね…早く
見つけてあげてね』


等と惚けた他人事のように思って
聴いていたウンスだったが

「イムジャ~!」

今度は鮮明にウンスの耳に届いた
愛しいその人の声が・・・
泣くまいと堪えていた涙が一気に
ウンスの瞳に浮かぶ…



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