木春菊  [偕老同穴] 79 | シンイ二次小説でんべのブログ

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ヨンが出立し五日目の朝が訪れた

「ふふふ・・・楽しい夢だったような
気がするわ、はっきりは覚えてないけ
ど」

朝から上機嫌のウンスに
エギョンも笑顔になる

「旦那様に叱られるから、ちゃんと
食べないと!ね・・」

「そうですとも沢山お食べになって
下さいませ、食が細く倒れは
しまいかと案じておりました・・」

「あら、そうかしらちゃんと
食べていたわよ、一人でも大丈夫
なんだから、心配しないで」

「はぁ・・・」と、エギョンは
苦笑いを浮かべるしかなかったが
ウンスが笑顔はきっと旦那様が
夢に出て来られ、叱って下さったのだと
確信していた

「旦那様もきっと飛んでお帰りになり
ます」

「まだ五日目よ、十日と言ってたから
後半分よ・・・さあ、お役目行かない
と、支度は大丈夫かな?」

「チョンスがいつでも出仕できるよう
支度を整えてございます、外は吹雪で
ございます、着込んで下さいませ」

「そうね、そうするわ」

寒がり暑がりのウンス
完全防備で部屋から出てきた

外套の中は医官服は既に着込み
幾枚も重ね着をし、雪だるまのようだ

「奥方様、それではあまりにも体裁が
悪うございます、少し脱がれては
如何でしょうか」

「だって寒いのよ」

「それでは足元が見辛くありませんか
まるで、赤子が宿っているようです」

「いやだ・・エギョンまだよ・・
残念ながら何の兆しもないわ、早く欲し
いけど・・」

ウンスは照れ隠しにエギョンの腕を
ぽんと叩き門扉の所へ小走りに駆け出す

「走ってはなりません!奥方様
はあ、行ってしまわれた・・・誠
賑やかなお方です」

エギョンは笑みを浮かべ
ふぅ~と息を吐いていた

「チョンス、お願いね」

「へい」



輿が王宮へ着くといつものように
叔母が待ち構えていた

「叔母様いつもありがとうございます
チョンスまた夕刻お願いね」

「ウンス!どうしたのだ
まさか!赤子が出来たのでは
あるまいな」

「叔母様違います!今朝は吹雪で
したから、寒くて・・」

ウンスは申し訳なさそうに否定する

「それでも着込み過ぎではあるまいか
雪だるまのようだな・・ふぅ~
そなたは寒がりか?」

「はい・・・」

「そうか・・話は変わるが
先日の屋敷での騒動の件で当主である
あやつが戻るまで、沙汰は
引き延ばしになったようだ」

「そうですか・・人を殺めようと
した罪は重いのですか」

「殺めてはおらぬが、流刑は免れまい」

「家族の方々はどうなるんでしょう」

「王様の御判断次第だが、私財は
召しあげられ、身分は奴碑に
格下げではないかと思うが・・・」

「そうですか・・・」

ウンスは唇を噛み締める

「ウンスから聞いた折、驚きはしたが
あれから娘御は、何も言っては来ぬか
?」

「はい、何も言って来ませんが」

「ならばよい」


ウンスは 典医寺に顔を出すと
女官や 迂達赤、武閣氏まで風邪引きで
訪れていた

「まあ・・たいへんだわ」

「医仙殿、よいとこへお越し
下さいました、 武閣氏と女官の方々を
診て下され」

「任せて!」

「侍医!俺も医仙殿に診て貰いたい」

迂達赤の新兵が不満を口にする

「馬鹿者!!」とバシッとチュンソクが
声を張り上げ、新兵の頭を叩く

「医仙様は大護軍の奥方様になられる
お方、大護軍の地獄の鍛練が待っておる
それでもいいのだな!」

「もう、チュンソクさんったら大袈裟
よ、患者さんで侍医も留守の時は
私が診るわよ」

「なりませぬ、私が不在でも
他の医員がおりますゆえ、医仙殿は
なるべく女人の方を診て下され」

「もう~イム侍医まで・・
私のお役目取り上げないでよ」

ウンスはぷぅ~と頬を膨らませ
口を尖らせる
その仕草に患者である筈の
迂達赤の目尻が緩む、チュンソクの
鉄拳が飛んだのは語るまでもない


「さてと一段落ね、皆さん手荒いと
嗽は忘れないで下さいね」

ウンスは女官や武閣氏の診終えると
手洗いの基本的な動作を教える

「指と指の間もこうやってしっかり
洗って下さいね、冷たいからと
手を抜いちゃ駄目ですから」


ウンスは王妃様の診脈を終えると
叔母と二人、刺繍の仕上げをするため
私室に向かう

「ウンスとこうして向き合うのも
今日で終いであろう、ちと寂しい気も
するが・・あやつが喜ぶなら
致し方あるまい・・・」

ふと見せた叔母の仕草がウンスは
ありがたく見えていた
優しい眼差しは実母の温もりを
彷彿させてくれた・・・

「まったく・・いつまでたっても
上達せぬの、手巾が穴だらけではない
か」

「・・・ふふふって笑ってごまかそう
かしら、でもひどいかも・・」

ウンスは窓際まで寄り、日にかざして
観ると所々日が射し込む・・・

「まったく・・でも良かろう
ウンスの心根が詰まっておるゆえ」

ウンスはペロリと舌を出し肩を竦める

「叔母様これを・・・」

ウンスが懐から取りだし、叔母の手に
握らせたのは、屋敷に戻り一人
寝台の上で誂えた得たいの知れない
刺繍が施されていた手巾

「ウンス?これは何の刺繍なのだ?」

「・・それは一応さくらんぼと言って
天界の果物なんですが・・・」

「さくらんぼとは、この様に黒い物なの
か?それに・・・よい、ありがたく
頂く、ウンスの心根が詰まっておる故
ヨンだけではなく、私にもすまぬな・」

小言は山ほどあるが・・・
叔母はウンスに背を向け、手巾を懐深く
しまい込んだ

「急ぎ仕上げるぞウンス!」

「はい!」


少し歪な小菊が刺繍された手巾が
出来上がった・・・

「叔母様ありがとうございます
また、こちらの部屋へ遊びに寄ります」

「ああ、いつでも寄るがよかろう
此度は屋敷で共に
過ごしてやりたかったかったが
新しい武閣氏の教育が忙しく寂しい
思いをさせすまなんだ・・」

そう呟くと叔母はウンスに軽く頭を
下げる

「止めて下さい、叔母様お役目は
大切ですから、気にしてないですよ
・・・ふふふ」



ヘジンとカンを伴い典医寺へ戻る
道すがら、中庭で「コロン」石ころが
転がる物音がする

「何奴!」とヘジンとカンは
ウンスを背に庇い、中庭に気を集中
させる、だがその一瞬の隙に
ウンスの口が塞がれ声を上げる事も
出来ずウンスの姿が忽然と消えた!?


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