サザエさん―釣り(6)
川の水で冷やした瓶ビールは、暑い日には美味しいでしょう。こんな暑い日は、釣りより冷えたビール!!
朝日文庫版20巻〔136頁〕・昭和33年
『雲一つなく、太陽が、ガンガンと輝いている日です。サザエさんのお父さんは、日よけ帽を被ることもなく半袖のシャツを着て川辺を散歩しています。すると、ある川岸に、一人の、日よけの藁帽子を被り、釣竿を手にし、釣り糸を川にタラしている、首には手拭を巻き、半袖のシャツを着た小太りのオジサンがいました。サザエさんのお父さんは、そのオジサンの後ろに立ち釣竿の先を見ています。オジサンは、じっと川面をながめ釣を続けています』
『酷く暑い日でした。太陽は、ガンガンと輝き、暫く、後に立って釣を眺めていたお父さんも、汗が出てきました。オジサンは、全く釣れずに、辛抱強く川面を眺めています』
『太陽は、ガンガンと輝いています。もうかなりの時間がたちますが、全く釣れません。オジサンは、忍耐強い人で、辛抱強く川面を見ています。サザエさんのお父さんは、余りの暑さに汗が噴き出して来ました。お父さんは、ハンカチを取り出して、額に噴きだす汗を拭いています』
これからどうなったと思いますか?
意外なことが起こりました。
『川面をジッと見て、釣りをしていたオジサンが突然振り返り、サザエさんのお父さんは見て、「だんなよくひえてますよ いかがです!」と言うと、釣竿を上にあげて、釣り糸を引き上げるとその先に、水が滴るビール瓶がぶら下がり、手にはコップと栓抜きを持っています。お父さんは、オジサンの変わった勧誘に驚いています』
サザエさんのお父さんは、今日は、川で釣りをしている人の見物でした。
酷く暑い日だったようです、涼しげな出で立ちではありますが、汗をかいています。
「この人釣るかな~」
と見ているうちにも、ますます汗は噴き出して来ます。
可なりの汗がでたころを見測るように、突然、オジサンは、サザエさんのお父さんの方に振り返ったのです。
オジサンは、さも、大物が釣れたかのように、釣竿を大きく釣り糸を引き上げるのです。
すると魚とは違う、ビール瓶が釣れています。
オジサンは、それを誇らしげに見せると、
「だんなよくひえてますよ いかがです!」
と言うのです。
サザエさんのお父さんはどうしたでしょう。
その前に、このオジサン、どうしてこんなことをしたのでしょう。
冷蔵庫も家にない、孤独なオジサンは。ビールを川の水で冷やして飲もうと、瓶ビールを外に持ち出し、川の水で冷やしていた。
あるいは、商売にしていたのでしょうか?
こんな川で釣りをしていると、冷やかしに、何が釣れるか覗きに来る奴は必ず一人はいる。
そんな奴を捕まえて、冷やした瓶ビールを売りつけてやろう。
と待ちうけていたのでしょうか?
いずれにしても、サザエさんのお父さんは、このオジサンのターゲットになりました。
さて、サザエさんのお父さんはどうしてでしょう。
多分この日の猛暑に堪らず、オジサンの横に座りこんで
「あ!有難い、こんな暑い日は釣りどころではないでしょう。美味しそうな冷えたビールを一緒に飲みましょう。お代は持ちます」
とぐらいは張りこんだと思います。