サザエさん―傘(6)

 

閉じない傘は、雨水を完全に落として、電車に乗りましょう。

 

朝日文庫版6巻〔2頁〕・昭和26年

『サザエさんの家に、お父さんの知人が訪ねて来ました。お父さんは留守でした。しかし、知人は、暫くお邪魔して、帰ろうとした時、雨が降り出しました。お邪魔しました、と玄関に出ました、見送りに出たサザエさんとお母さんは、お父さんの知人が、傘を持っていないことに気付きました。玄関先で知人と、サザエさんとお母さんは、こんなやりとりをしています。サザエさんが折り畳んだコウモリ傘を手に持って、知人に渡そうとしています。でも知人は遠慮したようです。そこで、サザエさんは、「ふるいんですから」と言い、お母さんは「どうぞおきがねなく」と言って進めていました。知人はやっと、借りることにしたようで、「でははいしゃくします」とコウモリ傘を受取っています』

『知人は、コウモリ傘を借りて外に出ました。かなり激しく降っています。傘を開こうとしますが、開きません。知人は、コウモリ傘の手元を左手に持って、下ロクロを中棒に沿って押し、傘を開こうとしていますが、開きません。知人は「チエツひらかねえ」とイライラしています。やっと、少し開きかけた傘の骨の数本が曲がっていました』

『駅の入口まで来た時、傘はやっと開きました。知人は「アッ・・・・・とひらいた!」と開いた傘の中棒を両手で持って、ホッとしています。傘は1本の骨が折れています。傘は満開ではなく、歪んで開いています』

『知人は、歪んで開いたままの、雨水が滴るコウモリ傘を持って、車内に乗り込んでいます。混雑している乗客達は、迷惑そうな顔をしています。そこに、男の車掌さんがやって来て「かさをたたんでください!」と叱っています。知人は、懸命に閉じようとしていますが、閉じません。知人は「だめだ・・・・・」と顔を真っ赤にしています』

 

壊れた傘は借りない方がよい。

開くのも大変、閉じるのも大変。

ビニル傘だったら、棄ててしまいますが、高価なコウモリ傘では、捨てずに仕舞いこんでいることがあります。

 

サザエさんは、そんな傘を、お客さんに、貸してあげました。

借りた知人は、大変迷惑だったでしょう。

やっと開いても、閉じることができない。

借りたコウモリ傘だ!

返さんと駄目だ!

と棄てることはできない。

 

雨水が滴る閉じない傘を持って電車に乗る。

乗客の皆さんが、困ろうが、絶対返さなければならない傘だ!

義理がたい、お父さんの知人でした。

サザエさん―傘(5)

 

傘は忘れないようにしましょう。

 

朝日文庫版5巻〔26頁〕・昭和25年

『サザエさんのお父さんの職場です。お父さんは、仕事も終えて、部屋を出ようとしています。事務机の上の書類を片付けている若い男女の社員を振り返ったまま、「ではおさきに」と声をかけ、部屋の壁に、ズラリと並べてかけてある中から自分のソフト帽を取りました。男女は、頭を下げています』

『部屋を出ようとした時、女の社員が、コウモリ傘を持って「かさをおわすれです」と追って来ました。お父さんは「オ!そうそう、そうそう」と言いながら取りに戻っています。職場には沢山の事務机が並んでいて、沢山の社員が、まだ仕事をしています。壁には時計が掛けてあり、5時15分くらいの時間を示していました』

『お父さんは、変なことをやっています。女の社員から傘を受取ると、ソフト帽を被り、傘を持って「じゃおさきに」と先ほどの男女の社員に向かって挨拶しながら、また、壁の帽子掛けの方に手を伸ばし、別のソフト帽を取りました』

『お父さんは、既に被っていたソフト帽の上に、さらに、また取ったソフト帽を重ねてかぶりました。そのまま右手に傘とカバンを持ち、左手で重ねてかぶっているソフト帽を抑えて部屋を出ていきました』

 

会社では偉いサザエさんのお父さんは、修業時間が来ると、直ぐに退社のようです。

出社時は、雨だったのでしょう。しかし、退社時には雨が止んでいました。

退社時には、傘のことは、すっかり頭の中にはありませんでした。

頭の中に、傘がないと持たずに帰ります。

 

JRなどで電車の中の忘れ物は、傘が1番多いと言うことです。

傘を持って電車に乗る、傘は身近にあるはずなのに、何時の間にか、傘のことは忘れてしまい、置いたまま帰ってしまう。

 

ボケると、忘れることが多くなる。

お父さんも、齢の所為か忘れっぽくなる。

今日も傘のことはすっかり忘れてしまったのでしょう。

「傘をお忘れですよ」

と教えてもらい

「アそうそう」

と手にして帰ればいいのです。

電車の中に忘れるかもしれませんが、会社を出る時は傘を持っています。

 

しかし、お父さんは、変なことをやっていますね。

さっき、帰ろうと被ったばかりのソフト帽を、被ったことを忘れた。

いや、被っていることを忘れている。

お父さん、どうしたのでしょう?

ボケの進み方がそんなに大きいのでしょうか?

自分のソフト帽は被っているのに、さらに、別のソフト帽を沢山並んでいるソフト帽の中から、別の一つを取り、被っているソフト帽の上に重ねてかぶっているのです

 

被っていることを忘れる。

こんなことも、ボケが酷くなった老人にはありうることかもしれません。

 

重ねてかぶったソフト帽は、お父さんのソフト帽とよく似ていますから、それが壁掛けに掛かっているのを見て

「アレ!俺はまだ帽子はかぶっていないんだ」

と取り、被ったのでしょう。

結果、同じようなソフト帽を重ねて被っている奇妙なお父さんでした。

 

部屋を出る時、は確りと持っています。

 

サザエさん―傘(4)

 

あめ雨ふれふれ姉さんが、コウモリ傘でお向かい嬉しくな!カツオ君は、つい、女の子が雨宿りしていると早合点をし余計なことをしてしまいました。

 

朝日文庫版4巻〔132頁〕・昭和24年

『カツオ君が、子供用のコウモリ傘、サザエさんが番傘をさして、雨の中を歩いています。街の家の軒先の下には、雨を避けている人達が立っています。ランドセルを背負ったカツオ君は、傘をさして「あめあめ ふれふれ かあさんが」と楽しそうに歌いながら歩いています。サザエさんは、カツオ君のスリッパ入れ袋を持ってにこやかにカツオ君の後を歩いています』

『コートを頭からかぶって、自転車に乗り、早いスピードで走っている人もいます。傘のあるカツオ君とサザエさんは、傘をさして歩いていました。カツオ君が、ある家の軒先に、女の子が立っているのを見つけました。カツオ君は、左手をその女の子の方にさし出して「キミキミ このかさに、はいりたまえ」と呼びかけました。サザエさんも、立ち止まって、そうしなさいと言っているようです』

『女の子は、カツオ君の傘の中に入ってきました。カツオ君は、傘に入って、ついて来る女の子に「どっちにいくの キミのうちまでおくっていくよ」と言いました。サザエさんは、振り返って2人を見ています』

『すると、女の子は、不機嫌そうな顔をして「アタイうちのまえにたってたのよ」と言いました。カツオ君は、何だと言わんばかりに顔を赤らめています。サザエさんは、飛び上がって驚いています』

 

サザエさんは、雨が降り出したので、傘を持って家を出なかったカツオ君に、傘を持って学校まで迎えに行ったようです。カツオ君は、お姉さんに傘を持って来てもらい、スリッパ袋を持たせて、傘をさし、楽しそうに歌を歌いながら歩いています。お姉さんと一緒に家に帰るのが嬉しいようです。

 

街の中には、降り出した雨に、傘のない人達が、家々の軒先に雨を避けて立っています。

コートを頭から被って自転車に乗り、急いで走り去る人もいます。

カツオ君は、良い気分で、傘をさして歩いていると、女の子がある家の軒先に立っていました。

その女の子を見た、親切なカツオ君は、

「雨で家に帰れず、雨宿りして可哀そうだ、僕の傘に入れて、家まで送って行こう」

と、思ってのでした。

「きみきみ!僕の傘の中に入れよ」

と言ったら、素直に入ってきました。

さて、傘に入った女の子を何処に連れて行くのかな?

 

「どっちにいくの!キミのうちまでおくっていくよ」

と聞いたら、

「アタイ うちのまえにたってたのよ」

 

親切なカツオ君が、サザエさんが傘もって迎えに来てくれたのが、大変嬉しく、

 

あめあめ ふれふれ お姉ちゃんが

コウモリ傘で おむかい うれしいな

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

 

あそこに、女の子が一人で雨宿り、

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

 

よかったら、僕の傘に入りなさい

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

 

何処行くのと聞かれても、あそこはアタイの家の前

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

 

兄ちゃんの早合点、おかしいな!

ピッチピッチ チャップチャップ

ランランラン

 

と、カツオ君は、つい、女の子が雨宿りしていると早合点をした、余計なことをしてしまいました。

サザエさん―傘(3)

 

コウモリ傘は、天秤棒の代わりとしても使える便利なものです。

 

朝日文庫版4巻〔99頁〕・昭和4年

『大昔のハリウッドの喜劇スター:チャップリンによく似たオジサンが、バス停で、大きなトランクと折り畳んだコウモリ傘を持って、バスを待っています。オジサンは、ソフト帽を被り、縦ジマのズボンを履き、コートを着て、ダブダブの靴を履いています。まるで、チャップリンとそっくりです。ダブダブの靴を地面にたたきつけながら、まだ来ないバスを、イライラとして待っているようです。「なんじごろだろう?」と時間を気にしています』

『そこへ、縄跳びの縄を持ったワカメちゃんが近づいてきました。ワカメちゃんに、オジサンが、「何時ごろだろうな」と言っているのが聞こえました。ワカメちゃんは、咄嗟に「あたいトケイみれるヨ」と言っています。すると時計を持っていなかったオジサンは、「すまん!みてきてちょうだい」と頼んでいます』

『ワカメちゃんは、縄跳びの縄を引き摺って、お肉屋さんの店先に来ました。ワカメちゃんは、お肉屋さんのいろいろの肉を陳列したショウウインドウの上に置いてある、上皿秤を見上げています。はかりの針は、真上を指しています』

『ワカメちゃんは、オジサンのところに戻ってくると、「12時よ!」と教えています。オジサンは、「ありがとう!じゃ あるいていくか」と言うと、コウモリ傘を、トランクの取っ手に突っ込み、コウモリ傘を天秤のように肩に担いでバス停から歩き去りました』

 

コウモリ傘は、天秤棒にも使えるんですね。

確かに、このオジサンのように、コウモリ傘を天秤棒の代用にして重いトランクを肩に担いで持ち運ぶと、ぶら下げるより楽でしょう。

 

しかし、ワカメちゃんは、時計が、チャンと見れるね!

針が真上を指していれば12時だよネ、間違いない、エライ。

 

ワカメちゃんは、オジサンに

「オジサンの乗るバスは何時に来るの?」

とは聞かなかったんだよね。

「今度のバスは12時半だよ。お嬢ちゃんが見てきた、時間は12時だよネ。だから、まだまだ、時間があるから歩いてくよ」

と言うことになったと思いますが、

本当の今の時間何時でしょう?

上皿秤の時計は12時だけど、本当の時計の時間は何時だろう。

 

チャプリンのようなオジサンは、いい人だから、ワカメちゃんの言う「12時ヨ」を信じてしまいました。

バス停の時刻表では、今度のバスは12.30だから、まだ、30分も待たないといけない。

幸い、コウモリ傘があるから、これを天秤棒代わりにすれば、重いトランクを担いで歩いて行けるよ。

 

コウモリ傘は、天秤棒の代わりとしても使える便利なものでした。

と言う話です。

サザエさん―傘(2)

 

閉じたコウモリ傘は、樹の形。

 

朝日文庫版3巻〔71頁〕・昭和25年

『カツオ君とワカメちゃんが、歌を歌いながら陽気に、クリスマスツリーに飾り付けをしています。ワカメちゃんは、針山を手に持っています。ツリーは、いろいろな飾りで一杯です』

『2人で飾りつけをしていると、奥の部屋から「ハリヤマもってったの だ―れッ?」と叫ぶ大きな声が聞こえてきました。2人は声のする方を見ています』

『タラちゃんをオンブしたサザエさんが、やってきました。直ぐに、クリスマスツリーの樹がコウモリ傘と気付き、手にし、開いています。思った通り、2人がクリスマスツリーにしていたのはコウモリ傘でした。サザエさんは、コウモリ傘を取り上げると、パッと開きました、飾りが、コウモリ傘からパラパラと落ちました。カツオ君は、いち早く逃げ出し、ワカメちゃんも針山を投げ出して逃げました』

『タラちゃんをオンブしたサザエさんは、傘を畳むと、クリスマスの飾りがブラブラとくっ付いている惨めなコウモリ傘を振り上げ、「まてっ」と大声で叫びながら、カツオ君とワカメちゃんを追っかけています。2人は懸命に逃げています』

 

コウモリ傘を少し開いて立てると、鋭角の2等辺三角形はクリスマスツリーに似ています。

カツオ君は、ワカメちゃんに、

「クリスマスツリーの樹を買ってもらえないっから、ワカメちゃん、お姉ちゃんのコウモリ傘を、クリスマスツリーの代わりにしようよ」

と言ったのでしょう。

「そうね!お兄ちゃん、コウモリ傘を少し開いて、木箱に、重しを入れて、其処に立てると、ホラ!クリスマスツリーのようだよ」

 

「飾りは、お父さんが沢山買ってくれたから、皆、縫いつけようよ。私が、お姉ちゃんの裁縫箱から、針と糸を持ってくるね」

 

ワカメちゃんが、針を刺した針山と糸を持ってきたので、二人で飾りをコウモリ傘に縫いつけました。

 

「わー、飾り、皆、縫い付けた。綺麗だね」

「ウン綺麗だ、クリスマスツリーができたぞ」

と二人が喜んでいた時、

「ハリヤマもってったのだ―れッ?」

とお姉さんの大きなどなり声が聞こえてきました。

そして、二人がクリスマスツリーを作っている部屋に飛び込んできました。

 

サザエさんは、二人がクリスマスツリーの代わりに使っている、自分のコウモリ傘が、飾りを一杯縫い付けられているのを見て、怒ったのですネ。

 

悪い事をしたのだと思った二人は、怖いお姉さんから直ぐ逃げ出しました。

サザエさんは、こんなことで何故怒るのか判りませんが、折角、飾りを縫いつけたコウモリ傘を畳んで、振り上げ逃げる二人を追いかけています。

ワカメちゃんが縫いつけた飾りは、パラパラと抜け落ち、惨めなクリスマスツリーになりました。

 

何故、サザエさんが、こんなにも怒ったのか判りません。

 

ワカメちゃんが、幼いアイディアで、コウモリ傘をクリスマスツリーの樹に見立てて、飾り付けたクリスマスツリーを拵えたのですから

「アラマー綺麗なクリスマスツリーができたわね~~~」

と褒めてやればよかったのにと思いますが、如何でしょう。

飾りを縫い付けただけですから、コウモリ傘は、殆ど痛まないと思いますが!

針山も、糸が無くなっただけで、大声を出して怒るほどのことはないと思いますが!

サザエさん―傘(1)

 

傘を題材にして、どんな面白い話があるのでしょう。

 

朝日文庫版1巻〔71頁〕・昭和21年

『サザエさんが、頭にスカーフを巻き、レインコートを着て、レインシューズを履き、ビュウビユウカゼ、雨の激しい時に、を持って外出しようとするところです。家を出ようとするとき、お母さんが門のところまで出て来て、激しい雨と風に打たれながら、「たいじょうぶきけんだからきをつけてネ」とサザエさんに注意しています。サザエさんは、傘を開きながら、お母さんを振り返り、「だいじょうぶヨ」と言っています』

『街を歩いている人達は、激しい風と雨の中、傘をさすのに、大変苦心しています。傘をすぼめて風に立ち向かう人、すぼめても風に押されて立ち往生している人などがいて、子供達はレインコートを着て、友達と抱き合いながら歩いています。サザエさんは、開いた傘が、ひっくり返ってしまいました。それでも、元に戻し、傘の柄を持って懸命に前に進んでいます』

『サザエさんは、傘を元に戻し、すぼめた傘の柄を両手で持ち、足を踏ん張り、足元を見て、風に逆らって前に進むことにしました。サザエさんは、傘の先を電信柱に突きたて、懸命に足踏みしています。それを見ている遠くの子供達が笑っています。サザエさんは、前に行こうとするのに、風が強くて、これ以上前に進めないと思ってしまいまし』

『サザエさんは、前に行くのをあきらめ、「もういくのをやめた」と言いながら傘をすぼめて、さして、引き返しました』

 

台風の時、激しい雨の中、傘をさすのは一苦労です。

まともに開く頑丈な傘はあるかもしれませんが、それでも、開いたまま風に押し返されるでしょう。

傘が、風が、余りにも強いと、そっくりひっくり返ることになりますが、ビニール傘は、作りが頑丈では、骨ごと引っくり返って、その後、バラバラに破壊されてしまいます。

台風の後の、破壊された傘の処分は大変でしょう。

 

こんなビニール傘に比べ、コウモリ傘と言われた昔の傘は、頑丈だった気がします。

サザエさんは、そんな頑丈なコウモリ傘を使っていたのです。

こんな頑丈なコウモリ傘でも、強い風に逆らって、開いたままでは歩けません。

サザエさんは、傘をすぼめてさして、歩くことにしたようです。

視線は、遠くを見ていません。

 

すると、前に、進めなくなりました。強い風が押してくるのです。

頑張りますが、前に進めない。

こんな強い風では、駄目だと引き返してしまいました。

 

前に進めないのは、風の所為ではなかったのです。

サザエさんは、傘をすぼめて足元だけを見て風に逆らって歩いていたので、すぼめて持っている傘の先端を電信柱に突きたてていたのです。

 

サザエさんには、傘の先で、電信柱を倒してしまうほどの怪力はありませんから、前には、進めず、家に帰るしかなかったようです。

 

そんな話でした。

サザエさん―釣り(18続き)

 

釣りは、昔に帰る、最善の方法です。

 

朝日文庫版43巻〔11頁〕・昭和47年

『数本の松の木が見える砂浜を、マスオさんが、釣用のハットを被り、半袖シャッ、長靴を履いて、釣竿を入れた袋を担ぎ、釣具を入れたボックスを担いで歩いています。マスオさんは、自然にかえって、休日を過ごそうと、海釣りに来ています』

『海辺に近づくと、ボックスのような小屋があり、その正面に、窓口があります。その窓口の上には「昔にかえろう」と大きく書いてあります。その下の窓口には、チケット販売用の窓口があり、窓口の上には「100エン」と書いた紙が貼ってあります。マスオさんは、「このボックスは何だろう」と不思議そうに見ています』

『そこへ、赤いフンドシに、袖なしのハッピを着て、頭にねじり鉢巻きを、キリリと巻いたオジサンが現われ、ボックスの窓口の方を手で示し、何かマスオさんに教えています。小屋をよく見ると、窓口のある正面の右側面にドアがあります。そのドアには、更衣室と大きく書いてあります』

『マスオさんは、殿さまチョン髷のカツラを被り、袢天股引腰みのを着て、まるで、浦島太郎のような出で立ちで、桟橋の上から、釣り糸を垂らして、恥かしそうに、赤面して釣りを始めています。遠くの方で、釣をしている数人の人達が珍しそうに見ています』

 

マスオさんは、仕事か忙しすぎるし、家に帰ればサザエさんが何かと煩い、ストレスがたまって仕方がない。

ストレス解消のため、海釣りに出かけ、自然に帰えるとするかと思い、この海岸に来ました。

その海は、海辺に松の木が茂り、海辺の先には、竜宮城があり、亀が泳いでくるように思える、素晴らしいところです。

 

海釣りのいでたちで海岸に行きました。

海辺に、釣りのための大きな桟橋が作ってあります。

そこで、釣ろうと思って砂浜を歩いていると、砂浜に奇妙な小屋がありました。

 

「何だこれは」と、近づいて、何だろうと見ていたら、見るからに漁師の格好をしたオジサンが現われて、

「旦那さん如何でしょう、折角、海釣りに見えたのですから、思いっきり、自然に帰って、ストレスを解消されたらいかがですか?」

と誘ってきました。

 

「今日は、ここから読んでください」

昨日は、

酒を飲んだら眠くなってしまいました。

続きを書きます。

 

私は、このオジサンを、見ただけで、既に、昔に帰り始めたような妙な気分になりました。

私は、オジサンの頭の天辺から足の先まで見つめました。

もう、既に、70歳を超えているようなお年寄りです。

頭に、手拭を捻じった鉢巻きを、巻いています。

眉毛は、垂れた「ハ」の字で、顔面のほぼ中央にダンゴッ鼻があり、大きく横に伸びた薄い口の周りには、胡麻のようにヒゲが生えています。

着ている上着は、伴天と呼ばれる着物と思いますが、袖なしの「赤ちゃんに着せるチャンチャンコ」のようです。

その下は、多分、赤色の「へこ」(褌)をしているだけです。

勿論、素足で、短い足で砂浜に立っています。

 

その可笑しな格好は、昔のおとぎ話に出てくる浦島太郎が、玉手箱を開けて白い煙をあびて、年老いてしまい、そして、再び、少しだけ若返って、浜辺で、何やら商売をやっているようでした。

 

そのオジサンが、大きい箱のような小屋を、指さして、

「あの小屋に入ると昔に帰ることができます。お代はたったの百円でございます」

と言うのです。

オジサンが、小屋を指さすので、よく見てみました。

小屋の正面には、上の方に「昔にかえろう」とペンキで書いてあり、その下に「100エン」と添え書きしたチケット販売の窓口があります。

小屋の左側面に、更衣室と書いたドアがありました。

 

海釣りに行って、釣れたことが殆どありませんでしたから、

「今日は沢山釣ってくるぞ」

と言った手前、オジサンの誘いに負けました。

 

小屋の中で、何に変装するのだろう、そして、

「昔に帰ると、沢山釣れるかもしれない」

と期待感もあり100円チケットを買いました。

 

オジサンにチケットを渡しました。

オジサンは、小屋の〈更衣室〉と書いたドアを開け、

「どうぞ!中に、着替える衣装があります。着替えて桟橋で釣りをして下さい」

と言うので、中に入りました。

小屋の中には、電灯もありません。

小屋の裏側の窓からの明るさだけの薄暗い部屋でした。

壁に数セットの衣装が下げてありました。

草履も置いてあります。

ズボンと靴を脱ぎ、草履を履き、腰蓑を付けました。

シャツも脱ぎ、袢纏を着ました。

殿さまチョン髷のカツラが置いてあります。

何だこれはと、思いましたが、昔に帰るために必要なものだろうと思い、帽子をとり、このカツラを着用しました。

 

壁にかかっていた衣装に着替えた自分の姿は、壁に掛かった小さな鏡で見てみました。

「あっと!まるで浦島太郎のようだ」

と思いました。

確かに「昔に帰った」ようだ。

しかし、可笑しな格好だな!人に見られたら恥かしいゾ!

 

この格好で、釣りは止めようかなと思いましたが、この昔の恰好で釣りをすれば、沢山釣れるのかもしれない。

サザエに、

「今日は沢山釣ってくるよ」

と言った以上、我慢しよう。

 

更衣室のドアを開いて外に出ました。

袢纏・腰蓑の昔の姿に、海辺の風が心地よく感じられました。

釣り場の桟橋まで出ていきました。

離れたところで釣りをしている人達が、不思議そうに私の姿を眺めています。

 

私以外、こんな格好をしている人は一人もいませんでした。

恥かしくなりました。

あのオジサンは、他の人に「昔に帰ろう」と誘わなかったのだろうか?

誘っても、誰も

「昔に帰ってまで釣りをしなくても、何時もの通り釣りをすればよい」

と言って、チケットを買うような物好きな人は一人もいなかったのでしょう。

 

私は、恥かしかったのですが、その格好で4時間ばかり釣りをしましたが、小さなキスと小さなカレイが釣れただけでした。

 

サザエには、海に行って「昔に帰った」今日の出来事は一切話しませんでした。

「あなたは、今日も駄目だったわね!釣の技量はないのよ」

と言われました。

サザエさん―釣り(18)

 

釣りは、昔に帰る、最善の方法です。

 

朝日文庫版43巻〔11頁〕・昭和47年

『数本の松の木が見える砂浜を、マスオさんが、釣用のハットを被り、半袖シャッ、長靴を履いて、釣竿を入れた袋を担ぎ、釣具を入れたボックスを担いで歩いています。マスオさんは、自然にかえって、休日を過ごそうと、海釣りに来ています』

『海辺に近づくと、ボックスのような小屋があり、その正面に、窓口があります。その窓口の上には「昔にかえろう」と大きく書いてあります。その下の窓口には、チケット販売用の窓口があり、窓口の上には「100エン」と書いた紙が貼ってあります。マスオさんは、「このボックスは何だろう」と不思議そうに見ています』

『そこへ、赤いフンドシに、袖なしのハッピを着て、頭にねじり鉢巻きを、キリリと巻いたオジサンが現われ、ボックスの窓口の方を手で示し、何かマスオさんに教えています。小屋をよく見ると、窓口のある正面の右側面にドアがあります。そのドアには、更衣室と大きく書いてあります』

『マスオさんは、殿さまチョン髷のカツラを被り、袢天股引腰みのを着て、まるで、浦島太郎のような出で立ちで、桟橋の上から、釣り糸を垂らして、恥かしそうに、赤面して釣りを始めています。遠くの方で、釣をしている数人の人達が珍しそうに見ています』

 

マスオさんは、仕事か忙しすぎる紙、家に帰ればサザエさんが何かと煩い、ストレスがたまって仕方がない。

ストレス解消のため、海釣りに出かけ、自然に帰えるとするかと思い、この海岸に来ました。

その海は、海辺に松の木が茂り、海辺の先には、竜宮城があり、亀が泳いでくるような、素晴らしいところです。

 

海釣りの出で立ちで海岸に行きました。

海辺に、釣りのための大きな桟橋が作ってあります。

そこで、釣ろうと思って砂浜を歩いていると、砂浜に奇妙な小屋がありました。

 

何だこれはと、近づいて、何だろうと見ていたら。、見るからに漁師の格好をしたオジサンが現われて、

「旦那さん如何でしょう、折角、海釣りに見えたのですから、思いっきり、自然に帰って、ストレスを解消されたらいかがですか?」

と誘ってきました。

 

明日に続く

酒を飲んだら眠くなってしまいました。

続きは明日書きます。

サザエさん―釣り(17)

 

海釣りで、撒き餌は、他の釣り人の邪魔にならないように、自分の撒き餌をバラ撒きましょう。

 

朝日文庫版44巻〔59頁〕・昭和48年

サザエさんのお父さんは、大きな川が海に流れ込むに海に、海釣りに来ています。その大きな川を跨ぐ、大きな橋のコンクリートの欄干にもたれかかり、釣竿を垂らし、楽しそうな笑顔で釣りをしています』

『すると、富有柿のような逆三角形の頭で、全く、一本も髪の毛のないツルツルハゲ頭で、鼻がやけに大きく、鼻の下には、毛がバラバラと生えている奇妙なお爺さんが、釣をしているサザエさんのお父さんの直ぐ横に来て、パアーツと魚の餌を撒いています。お父さんは、何するんだよーとばかり、ギョッとビックリしています』

『カゴから一掴みずつ掴んで海に餌をばら撒いていたお爺さんは、遂に、カゴ一杯の餌をひっくり返し、一気に、海の中に投げ入れています。お父さんは、お爺さんに向かって、「つりはワタシのレジャーなんだ!」と大きく口を開けて、ヤメロと怒鳴っています。すると、お爺さんは、「しかし じゃまするのがまたわたしのシュミなんだと!」と言い返しています』

お父さんは、お爺さんが、シッコク釣りの邪魔をするので、橋の上から釣りをするのを止め、お爺さんの邪魔を避けるため、ボートを借りて釣ることにしたようです。お父さんが、ボートに乗って釣りをしていると、ハゲ頭のお爺さんも、ボートに乗って、お父さんのボートの直ぐ傍までやってきました。お爺さんは、意地悪でしつこそうな顔をして、カゴから魚の餌をドサッと海の中に投げ込んでいます。お父さんは、頭から湯気を吹きだし、カンカンに怒っています』

 

人の釣りを邪魔するのが趣味の人がいるとは、思ったことはありませんね。

サザエさんのお父さんの前に現れた、こんな趣味を持ったお爺さんは、お父さんを標的にして、実にうれしそうな顔をして、釣の邪魔をしています。

 

どんな方法で邪魔をしているのかと思ったら、サザエさんのお父さんの釣竿の釣針の餌に集まってくる魚達の中に、餌をばら撒くのです。

魚達も、釣針についていない餌の方が、安心して食べられます。

 

サザエさんのお父さんの釣針に取りつけられた餌を食べには来てくれません。

ばら撒かれた餌の方に行くでしょう。

このように、お爺さんは、お父さんの釣りを邪魔するのです。

 

小学生の孫が釣りを始めたことは、以前、ブログしました。磯子や横須賀などの釣り場に、時折、海釣りに出かけ楽しそうです。

ある日、一緒に行くことにしました。

餌を買おうと、釣具などを販売しているスーパーに行きました。

餌は、釣針につける餌と、撒く餌を買うそうです。

アミと思いますが、小さなエビを煉瓦の大きさの冷凍エビの塊を売っていました。結構な値段のようです。

 

釣り場で、煉瓦のようなアミの冷凍な塊を、押しつけて解凍してバラバラにし、釣ろうとしている海の中にばら撒きました。

バラバラと撒き、釣り糸を投げています。

 

高い撒き餌をばら撒いても、集まらないのか、そもそも魚はいないのか釣れません。

 

その釣り場は、海辺がコンクリートの土手で固められ、そこには釣り人が沢山来ています。

お互いに隙間はそれほどありません。

そんな混雑している中で、暫く釣っても釣れないと別の場所に移るのです。

 

孫から離れ、一人で釣ることにしました。

孫の真似して、釣る位置に、そこに置いてある撒き餌を3掴み程ばら撒きました。

釣れません。

 

多少離れた土手から、大きなオジサンの視線を感じました。

睨みつけられているようです

何だコイツと思いましたが、素知らぬ顔で釣りを続けました、

全く釣れません。

 

嫌になって来た頃、孫がやって来て、

「釣れるジッチャン!、これを撒けば釣れるかもしれないよ」

と何かを差し出しました。

それは、冷凍アミの塊でした。

気付きました。先ほどばら撒いたアミは、場所を移動した「睨んでいるオジサン」が置いていた撒き餌のアミだったのです

「お高い撒き餌のアミを無断でばら撒いて、誠に申し訳ありませんでした」

と声には出さず、内心、謝りました。

 

その日は釣れませんでした。

サザエさん―釣り(16)

 

釣れそうにもない川で、魚拓するため大物を釣ろうと、寒い中、釣りをしている、呆れたサザエさんのお父さんでした。

 

朝日文庫版43巻〔63頁〕・昭和47年

『もう秋も終わりの頃です。葉もほとんど落ちた樹の下では、枯れすすきが揺れています。そんな田舎の川に向かって、厚手の服を着たサザエさんのお父さんが、釣竿を入れた袋を担ぎ、釣道具の入ったバッグを肩に担ぎ、さえない顔をして歩いています』

『いい場所を見つけて、川辺に腰かけて釣を始めました。釣竿を手にして、糸を垂らしていると、丹前を羽織った和服を着たオジサンが、お父さんの後ろにやって来ました。オジサンは、ジーッとお父さんの釣竿の先を見ています』

『釣竿の先を見ていたオジサンが、お父さんの直ぐ傍に視線を移すと、そこには、大きな硯と、大きな筆が置いてあります。オジサンは、不思議に思って、お父さんに、何か、と尋ねています』

『お父さんは、〈大きな魚を釣って、魚拓を取る準備をしているのです〉と答えているようです。オジサンは、エエッと驚いた顔をしています』

 

釣った魚の魚拓を取る、と言う話は聞きます。

しかし、釣れそうにもない、こんな田舎の川で、魚拓を取るための硯と筆を準備している釣り人がいるのに呆れている人がいました。

 

魚拓(ぎょたく)とは、釣りで釣ったの像を、墨を使って紙などに転写したものだそうです。

いわゆる、記録として残しておくのですから、記録として残す価値あるもの、釣った魚であれば、恐らく大物であることでしょう。

 

お父さんが、魚拓を採る準備ですと言うのを聞いて、地元のオジサンが、呆れた顔をしているのは、こんな川で、記録として自慢できる大物の魚は、絶対に釣れないたことがないと判っているからでしょう。

 

地元のオジサンは、魚拓出来るような大物は釣れない、この川で、寒い中、釣をしている人に、呆れたのでしょう。