見送ってくれた警察の方に頭を下げて、横を見ると


ハルオも深々と頭を下げていた。


車の後部座席に倒れこみながら、


「お母さん、ごめん。」


そして、「今日は午後から部活だから、少し寝る。」と言った。


反抗的なハルオだけれど、「ごめん」という言葉にウソはないな~と


思った。



結局この日は部活に行かなかった。


そして、次の日も次の日も行かなかった。


せっかく頑張っていたのに…。


ここからズルズルと崩れていくことになる。

夜中。


道に迷いながらも警察に着いた。


お巡りさんが言った。




「書類など書いて頂いて、30分ほどで一緒に帰れます。


初犯ということですし、事情も素直に話していました。


ハルオ君は反省しているようですので学校には知らせません。」




そうか。すぐに帰れるのか。


他の子どもが起きるまでには戻れそうだ。


反省しているなら良かった。


ハルオに早く会いたい。




ところが…。

夜、電話がなった。


「○○警察署です。ハルオくんが万引きをしました。迎えに来てください。」






受話器をにぎる手が冷たくなっていく気がした。警察から電話がくるなんて…。


私の様子を見て、他の子たちの表情が硬くなっていくのがわかった。


落ち着いて、落ち着いて、他の子を不安がらせてはいけないと


自分に言い聞かせてみるが、何をどうしていいのかわからない。





夫は出張中。○○警察署までは車で1時間以上かかる。


今から電車で行ったのではもどってこれない。


「明日の朝、始発で行ってもいいですか?」と聞くと


「いや、できるだけ早くきてください」との答え。





はあ~私運転自信がないのよ。高速乗ったことないし…。近所のスーパーに行くくらいなのに~。


タクシーで往復したらとんでもない金額になるし~。


もうっ!運転するしかない!とハンドルを握った。




23時をまわっていた。







不登校というと


繊細な性格のお子さんが何かで傷ついたり疲れたりして


学校に行けなくなってしまう感じかな…。


保健室登校が認められたり、場合によっては担任が迎えに行くケースも


あるかもしれない。



同じ「学校に行かない」でも


非行少年の不登校は「怠学」とよばれ、厳しく注意される。



ハルオの場合、中三から保健室で過ごす時間が多くなっていった。


保健室の先生は不登校気味のお子さんと同様に温かく迎えてくれたけれど、


担任の先生は保健室へ行くことは許さなかった。


私にもただサボっているとしか見えなかった。


だから、ハルオは学校でも家庭でも怒られてばかりだったし、


しっかり反抗してきたから余計に厳しく怒られた。




でもその度にハルオは傷ついていたのかもしれない。


私が思っているよりもずっと繊細だったのかもしれない。



学校と同じ視点で怒ってしまった未熟な私が


今となっては情けなく思う。






役員会で行った中学校の廊下。


ハルオの親友にバッタリ会った。なんだかマズイって顔をした。


おばさんトークで聞きだすと…


ハルオは初彼女A子ちゃんに呼び出され、


補習をさぼって、A子ちゃんに会いにいったということだった。




三者面談で「このままの生活態度、成績降下ではまずい」と


いう話があった直後なのに、


なんとか立て直すと言っていたはずなのに


優先事項の全てがA子ちゃんになっていくハルオ。




時代劇好きの友人に


花魁に吸い取られるアホ二代目のよう


と評されたりもしたが、


もっと親子関係の絆が太かったら、


ここまでA子ちゃんにのめりこまなかったのでは


と今になって思ったりする。