ホテルの場所は本当に近くだった。城門から百メートルも離れていなかった。
「ふー」
キノは案内された部屋のベッドに突っ伏した。
「ねえキノ。まだ外は明るいけど国見てまわらないの?」
エルメスは何か物足りなそうだった。
「今日は疲れたからホテルで休む。国を見て回るのは明日にしよう」
キノは突っ伏したまま答えた。
「そういえばさ、そんなに針太かったの?」
「太かった。注射が可愛くみえるくらいに」
「へー」
「ちょっと昼寝する。夕食の時間になったら起こして」
キノはそう言って仰向けになって寝息をたてはじめた。
次の日、キノとエルメスは観光と必需品の買い出しをするために国をまわった。特に変わったことはない平凡な国だった。キノが店の人に献血をしたことを伝えると、全て無料でくれた。キノ達は一回り国を見て回り、買い物を済ませ、ホテルに戻った。
「なんとも言えない国だったね」
エルメスが言った。
「そうだね。まあいろいろとタダでもらえるのは嬉しかった。明日はさっさと出国しよう。必要なものはもう買いそろえたしね」
「三日経つしね」
「まあね」
キノはそう言ってから付け加えた。
「そういうことだから明日は早く起きてね」
「努力するよ」
「ねえキノ。他の人からあの国どうだった、って訊かれたらどう答える?」
キノとエルメスは出国して森の中を走っていた。
「そうだな、普通の国だったって答えるかな。危険なこともなかったしね」
キノが答えた。
「入国の時のあれ以外ほんとになにも言うことなかったもんね」
「まあ、注射が苦手じゃない旅人にとっては天国みたいな所だろうね。いろいろタダでもらえたしね」