ひろの家に泊まって朝の苦手な私たちがゆっくり起きた土曜のお昼。
布団を干そうと小さなベランダに出たら、本当に天気が良くて思わず小さな感嘆の声が上がった。
起き抜けの身体を太陽の光が暖かく包み込む。
「どしたー?」
動きを止めていた私を不思議に思ってひろがベランダに顔をのぞかせた。
「天気良いから気持ちよくって」
「ん、あー確かに」
陽の光に目を細めて笑うその顔が好きだなぁと思っている時に、良い考えが浮かんだ。
『真昼の恋人たち』
「「カンパーイ」」
缶ビールをぐいっと二人飲み込んだ。お昼から飲むお酒はいつもの平凡な午後を特別な時間にかえてくれる。
天気が良いから外でご飯食べよう。
そう言って直様お弁当を作った。近所のお気に入りのパン屋さんで買ったパンに冷蔵庫にあったものを挟んで簡単にサンドイッチを作る。
近くの川は両脇を芝生の斜面で囲まれているのでそこにチェック柄のシートをひいた。2人で十分横になれる程のシートは雑貨屋で見つけて2人で即決したものだ。
歩いて向かう途中のコンビニで飲み物を買う時にひろがビールを指差した。ちょっとずつ耐性ができててひろも飲めるようにはなっているがウコンを買うのは忘れなかった。
「あー、青空の下で飲むビール最高だな」
「お、言うようになりましたね」
「わりいかょ!」
「ぜーんぜん」
寧ろ良い。いや、とても喜ばしいし嬉しい事です。其れはきっと私の表情で伝わった筈だ。
青空の下でお酒を飲む土曜のお昼。其れは何とも気持ちがいい。2人してサンドイッチを頬張る。夏の香りを含み始めた風が青いワンピースをたなびかせた。
「もーすっかり夏になるなぁ」
この前まで雨続きだった梅雨を抜けて、季節は夏に変わっている。久しぶりの快晴に気分も晴れ渡る。
何処か遠出にでるのも良いけど、普段見ている景色の中で季節の変化を感じるのもとても心地いい。隣にひろがいて、一緒に季節が変わるのを感じると幸福に包まれる。
共に時間を過ごしているのを感じる。其れは、共に生きている事を感じる。
「お腹が満たされると眠くなるねぇ」
「子供かよ」
素直な欲求を口に出すとひろが大きく口を開けて笑っている。ほんのり赤くなった顔して笑う顔がかわいいなって思う。Tシャツに短パンのラフな格好で髪も風に乱されているひろの姿の方がよっぽど子供みたいだとは言わなかった。
「しょーがない、特別に枕をかしてやろう」
大きな手が後頭部に触れたと思ったら優しく力を込められてひろの膝の上に導かれたので自然と身体を横たえた。
ひろはもう片方の手で体を支えて上体を起こしている。
見上げるとアルコールに加えて照れのせいか赤い顔してはにかん笑うひろと
目があった。
「お昼寝していーよ、おこちゃま」
余りにも優しく笑うから文句を言うのも忘れて見惚れてしまった。
暖かな真昼の陽気と2人の空気に微睡み始める。ひろの膝枕は硬いし寝心地は良くないけど暖かい。
「贅沢だなぁ」
大きな手が頭を優しく撫でるのを感じながら、その言葉を最後に私は土曜日の真昼の陽気の中で夢の世界に旅立った。
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芝生とか河原とか青空とか
お昼ビールとかたまらない
日常の中にあるもので幸せを
感じるのはやっぱり
それを一緒に過ごす人がいるからだすね
あぁ、男の膝枕って良いと思う
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「あ、何してんのー?」
うとうとしてたら背後から声をかけられたので振り返ると伊藤さんがいた。
「天気が良いからここでご飯たべてました」
伊藤さんと俺の家は近所。徒歩3分圏内だ。近所のスーパーにでも行ってたのかパンパンのエコバッグの中からネギが見えた。
「んで、寝てたの?わ、本気で寝てるなぁ」
膝の上に乗る小さな頭覗き込み関心するように言う伊藤さん。確かに何処でも気にせず寝る事ができるのはこいつの特技だろう。
「わぁ~何その顔~」
「ね、気持ち良さそうに寝てますよね」
「そっちじゃなくて」
疑問に思い伊藤先輩へと視線を向けるとにやけた顔が俺をみていた。
「かわいいなぁーすっごい幸せー、って顔して見てたょ」
顔が熱くなるのを感じた。高笑いをする伊藤さんにうるさいですょ!と大声で言ってしまい膝の上の頭が身じろぎと同時に動き焦った、幸せでくすぐったいような暖かな真昼の事。