多くの天文学者はプティの主張に疑問を持ったが、一部の天文学者は、この衛星の存在によって月の軌道の不規則性を説明できると考えた。
現在では、地球の上空12kmまでは、大気によってそのような軌道を維持することは出来ないことが明らかだが、当時は誰にもそうした知識がなかったのである。
プティは、自説を強く主張したが、フランスの天文学者ユルバン・ルヴェリエは、これを荒唐無稽だと考えた。
ルヴェリエは、この少し前に、海王星の発見につながる軌道計算を成し遂げた偉大な天文学者である。
ルヴェリエに否定されたプティの説は、科学界で注目されることはなかった。
そうした経緯を持つプティの説が後世に伝わったのは、フランスのSF作家ジュール・ベルヌの小説のためである。
ベルヌの1865年の小説 『月世界旅行』 で、主人公たちは宇宙旅行中にこの天体と遭遇する。
彼らはそれを、地球の重力に捉えられた小惑星で、プティが発見した衛星だと説明しているのである。