療養〈29〉

 僕の小学生時代昵懇だった男に健吾という人がいた。学校の近くに家を構えていた。家中に野良猫だろうか、多くの猫がいた。それが関係しているのか分からないが糞尿の匂いが家の随所で充満していた。僕は健吾が好きであった。彼はゲームが得意だった。一緒にカードゲームをプレイした事もある。僕はカードゲームなら得意であった。しかし他の多くの友達が非常にゲームが得意であった。僕は赤貧だったのでゲーム機やゲームソフトは買えなかった。まあ赤貧というのは誇張が過ぎるが。僕は過去の健吾との経験を非常に大事にしている。中学が別々になって頻繁にやりとりする仲にはならなかった。お互い形態も所持していなかったからだ。それでも小学校時代を彩った、彼が僕は好きであった。無論性的な意味ではない。僕は彼と外で良く遊んだ事もあるゲームのバイオハザードのマーセナリーズというチャプターがあるのだがそれに影響を受けて自衛隊に入隊する気は毛頭ないのに体術を練習しまくった。バイオハザードのハンクが僕は非常に好きだった。ガスマスクを被った、非常に魅力的なキャラクターがハンクであった。僕は他にもいろいろなソフトパワーに触れた。日本のソフトパワーは今では大人が大人げなく熱中するという印象を持たないのだが小学校の自分はそれに臆面もなく没入していた。

 健吾、彼は今元気だろうか。高校を卒業してから自衛隊に入ったというが、適応障害などを起こしていないだろうか。彼から見れば僕が統合失調症になるという事も想定出来ない事だっただろう。人生何が起こるか分からない、予断を許さない。僕はもっと早くに他人に自分の懊悩を相談していけば良かったと思う。本当にあの頃は自分の醜い部分を曝け出していた、何の遠慮会釈もなく。僕は健吾とのあの記憶を何度も言うが大事にしている。彼は非常に魅力的な男で、アニメや漫画に博識であり、絵も上手かった。僕は彼のような友達を今後も作れるだろうか。その為には自ら統合失調症だと無闇矢鱈に露見させない事だ。僕はまるで大震災の罹災者のように統合失調症を饒舌に語るが、誰もそんな七面倒くさい病気に興味を持っていない事を僕は良い加減に理解すべきだ。まあそういった現状を変えようとプログレッシブツイストを自ら勃興したという経緯もあるのだが。僕は今後も生き続ける。死ぬまで希望を持ち続ける。それが豊饒なものであれ、一縷のものであれ、僕は幸福になる権利がある筈である。