療養〈6〉

 案ずるより産むがやすし。始める前は心配するが、やってしまえば案外容易く出来る事。僕にとってブログがそうであった。僕はブログを始める前は携帯中毒でLINEのタイムラインに頻繁にナンセンスな事を投稿していた。しかしある時、母親と占いのイベントに行ってタロット占いを女性の占い師にしてもらった時こう言われた。「あなたはブログをすれば良いと思う」と。僕はブログに先入観があった。難しいのではないかと。それから僕はブログの広範な世界、タイムラインと同じような自由な活動的発散を知った。それから高校の通学中にブログをアプリで書いたりしていた。それなりにアクセス数もあった。男子高校生というブランドが生きたのかも知れない。しかしそれもどういう訳だか倦怠を感じ新たな今のブログに変えて、もうかれこれ5年以上は継続している。やる前は浮世離れと言うか、自分とは無縁の事のように思える事でもやってみれば容易い。高校の修学旅行のスキーもそうであった。僕は最初、美味く滑れなかったが、スキーを教示してもらう一群の中で随一の上達だと指導者に言われた。話を戻そう。ブログは人によれば一生に一度も縁のないものかも知れない。時折露悪的に、時折本音を交えて話す習慣のない人は非常に多いと思う。

 僕はそういう人こそ、門扉を開き、大いなる錯乱を感じ、病気にならない限りで生を堪能して欲しい。他の事柄でも同じだ、案ずるより産むがやすしとは。僕はブログで得た経験を他の事にも応用しないといけない。僕の作品には誤謬が多い、誤字も、論理的錯誤も、世間知らずが故の近視眼も。しかし僕はそれも肯定する。また会話も案ずるより産むがやすし、だ。勇気を持って行動すれば、幾らでも望む自分を演出できる。

 ヘルパーのヒグチさん女性の方が僕の家に来た。開口一番に僕は「僕、今小説書いているんですよ」と言った。「すごい、順調ですね」とヒグチさんは言った。

「食料はレンジの中だったり落とさないところにおいてください」

「そうですよね、せっかく作ったのに落ちたら大変」

我々は買い物に出かけた。昼間の酷暑の中である。

「観光客多いですね、最近は」

「そうなんですか?」

「はい」

僕らは道行きながら「僕はグループホームに住んでいた事があるんですよ」と僕が言った。

「どれくらいですか?」

「一年に満たないくらいです。苦手な居住者がいて、髭もじゃで知的の入ってそうな」

「何歳位ですか?」

「当時の僕が20歳なので40歳ですね」

「親と子ほどの年齢差ですね。でもいやですねえ、同居者が合わないのは」

ヘルパーの女性は明るく、僕は俄然非常に元気が出た。無手勝流の人生、歩んでいこうじゃないか。

僕達は僕の自宅に戻った。ヒグチさんは調理を始めた。おもむろに僕はこう言った。「今日の金曜ロードショーはジュラシックワールドですよ、USJとかで人気な」

「ああいう場所行きます?」と彼女が応じた。

「子供時代は何度か行ってましたが、今は全くゼロですね」

「乗り物とか乗ります?怖いですよね?」

「怖いですね、身の危険を感じる」

そして僕らはその他もろもろの会話をして別れた。