仕事に行くだけでも僕には大変な疲労だ。通勤もまた疲労。統合失調症になったことでストレス脆弱性が剥き出しになったのだろう。数限りもない抑鬱の一群、僕を不幸にしたのは紛れもなく僕自身だ。この世の妖術的な、蠱惑的な魅力に僕は成す術なく屈したのだ。この淪落と昏睡、僕の人生は順風満帆ではなく、最終的には僕自身が自分に対し人間失格の烙印を押した、しかしそれでも良い。人間失格だからなんだ、そんなものは主観的な産物かも知れぬし、偏見や差別の最上級の形容であるのだ。また僕は現存する珠玉のような作品を愛読するにつれて僕は自分でも傑作を書けるのだと驕慢になった。僕は内的世界で偉大になったが、現実世界での舌戦は惨憺たるもので、何も反抗できなかった。周囲の具体的に何らかの主張を標榜し、革命の機運に若さ故か包まれている人々が僕の目には非常に羨ましく感じた。僕はいわゆる阿鼻叫喚の中で生きてきて、見るも無残な僕の貧窮がただ僕の人生に残った。いや、僕は笑うんだ。前向きに、明るくなるんだ。僕にはユーモアの才能がある。その片鱗を僕はついぞ見せた事はない。それどころか人の眼前ですらまともに議論の熱を上げる事すら出来ない。僕は学者として、議論に没頭するタイプの人間ではない。まあそもそも僕はもう学問とは決別した。大挙して押し寄せた知恵の量、それらを余念なく、遺憾なく僕は発揮してきた。学問を辞めた事に僕は特段残念至極だと思っていない。