モナ・リザがやってきた | むーのブログ

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 私が小学生の頃、親に連れられてモナ・リザの絵を観に行ったことがある。

 それは約半世紀前の1974年、上野にある東京国立博物館で展示されていた。入口前には長蛇の列ができていて、何時間も待たされてようやく入場できた。中に入ってからも3列になって並行して並びながら牛歩のごとく進んでいき、やっと名画とのご対面となった。

 その時は他の絵を観た記憶はないので、たしかモナ・リザ1点のみの展示だったと思う。さすがに小学生ではまだ絵に感銘を受けた、ということはなかった。しかも意外とこぢんまりとした絵であった。ネットで調べてみたら、絵のサイズは77㎝×53㎝ということだ。ちなみにモナ・リザは1911年、ルーブル美術館から盗み出されているが、その時犯人はコートの下に隠して逃走したそうである。それくらい小さい絵だった。

 高く掲げられた、その小さな絵は当時子供だった自分にはインパクトに欠けているものだった。その3年前にはパンダが初めて日本にやってきて上野動物園では2キロの長い行列ができるほどの一大フィーバーを巻き起こした。子供から見たら、もの珍しいものを見物するという意味ではモナ・リザもパンダも変わりはなかった。もっともパンダを初めて見るのはもっと先の話になる。

 すごい絵だと言われればすごいとは思うが、具体的に何がすごいのかは大人になった今でもよくわからない。当時、約150万人がモナ・リザを観に訪れたという。絵を見て心からすごいと思った人は何人いたのだろうか。果たして私たちは絵それ自体を見ているのか、それとも有名画家の名前に納得しているだけなのか…。

 子供の頃大好きだった童話の本の表紙がゴッホのアルルの跳ね橋の絵だった。その時は誰の絵かも分からなかったが、成人になってからゴッホの絵だと知る。今もゴッホの絵が好きなのは、その童話を何度も繰り返し読んでいるうちに、何度も目にした、誰が描いたかもわからないその絵が子供心に印象に残っていたからかもしれない。絵が有名かどうかは二の次なのである。