1986年(昭和61年)12月4日(木) ロンドン
梅本さんがお別れに部屋へやってきて起きた。岡本君はまた明日会うらしいけれど私たちはもう会うことはないだろうと、コーヒーを出してお別れした。
それから二人で朝食を済ませ、久しぶりの家計簿づけ。三日もつけなかったら、金額を忘れている。現金と会わなくて1ポンドぐらいは不明金扱いにする。
たんすの引き出しを引いたら取っ手のついている板が外れてしまった。焦って中身を全部出し、セメダインでくっつけた。中身を出したついでに整理する。昨日の夜夫に言われて気が付いたことがある。なぜ私はいつもかたづけたり、掃除しているのかと。それは「~しなければならない」といって自分を縛り様々な不安から逃れようとしているのではないかと。
確かに私は小さい頃からきれい好きでよく整理整頓していた。しかし、それは異常なほどではなかったが、最近特にヨーロッパへ来て周りがきれいだしいろいろ言われて神経質になってしまった。自分のことだけでなく、夫にも言う。夫は本当にうっかり屋さんで食べ物やコーヒーをよくこぼすし、タバコの焼け焦げもすぐつくる。夫は「もし汚してもお金で解決できると思えば楽じゃないか」というが、私はできるだけこの部屋を汚したくないのだ。
TravelCardの期限が今日までだから、掃除は適当にして大英博物館に行くことにした。場所は大体わかっていた。入り口を入ったらインフォメーションがあり、パンフをもらって大まかな配置を確かめる。時代順に部屋の番号を捜してチェックした中世辺りで閉館の5時。とにかく広く今日一日で見れるものではないから、何回も通い少しずつ見ようと思う。今はシーズンオフで入館は無料なのだ。出る前にショップでガイドブックを買う。これでしっかり下調べして鑑賞したい。

博物館前で本屋に行っていた夫と待ち合わせ。陽が沈んで暗くなってくると、早く部屋に帰りたいと思うのは帰巣本能か。夕食は和食にした。ご飯は洗ってすぐ炊いたから少し芯が残っていたけれど、久しぶりの味噌汁と炊きたてごはんにふりかけだけでおいしかった。
夜になって夫とこれからのことを話し合う。夫が多久へ手紙を書いていたからだ。私は「赤ちゃんができました」と書いて送りたい。これまで「跡継ぎはまだか、まだか」と言われてきたから、子どもが早くできて出産して帰るか、帰って出産するかしたいからだ。そのあたりは夫とあまり話し合っていなかった。夫も子どもは欲しいらしい。ただいつ妊娠し出産するかは旅行のルーティングと大きくかかわる。来年のお盆まで不在にするわけにはいかないから、やはり来年の前半には帰国しなければならない。もし、妊娠したら南米やアフリカなどハードな行程は無理だろう。かといって、物価の高いヨーロッパはお金が足りず長居できない。いろいろ考えていたら、朝方の4時くらいまで眠れず。〈Mrs.HARVEY’s Flat〉