最も良いと思われる策を考え、それをひたすら実行するという、
いわゆる「対処行動」


Aという状態があるから、Bをする。

私はサロンパス指導とも呼んでいた。
 

「ここが痛いからサロンパスを貼る」のと同じで、
「ここが良くないから〇〇をして対応する」ということだ。
 

対処行動はとても大切だ。

しかし、対処行動ばかりだと、とても忙しく、
高い臨機応変力が求められ、かつ、多くのサロンパスが必要になる。

実は、多くの集団組織(学校も企業も、家庭も)の再建があまりうまくいかない
ことがあるのは、この「対処行動」の段階で、疲れ切ってしまうからだ。
 

簡単に言えば、貼るサロンパスがなくなってしまうのだ。
 

前例を打ち破ることを恐れない、スーパーイノベーションを起こすような
人材が組織にいれば、次々と打つ手を考えだし、ありとあらゆる出来事に
対応できる行動が生まれるだろう。
しかし、そういった稀有な人材に頼るだけでは、組織は必ず頓挫する。

最初は対処行動。

ペタペタとサロンパスを貼りまくって痛みの出るところを
消していく。
 

対処行動が痛みの出ていることころに追いついてきたら、その次の段階に
進まなければならない。
 

それが「予測と準備」。ルールや仕組みづくりである。
わかりやすく例えれば、

今度は痛みが出ないように、ストレッチをしたり、
準備運動に力を入れたり、痛みが出やすい部分を支えるために、
体の他の部分を鍛えたりすることである。

最初は、対処行動がもはや日常。
もぐら叩きやイタチごっこというと言葉が悪いが、そうとしか言いようがないくらい、
再建の初期段階では次から次へと問題が起きる。
想定ができていないような事態も起きやすい。
そうやって目の前の事態に対応することを繰り返していくうちに、
知恵がついてくる。

 

つまり、その事態がどんな時に起きやすいのか、ということや、
その事態を起こすのは誰なのか、ということがよく見えてくるようになる。

そこで、今度はその事態を

「起こさない」ためのルール・仕組みを先取りして作っていく。
 

その積み重ねで、ある日、逆転が起きる。
それまでは対処行動>ルール・仕組み、で、対処行動が日常だったのが、
ルール・仕組み>対処行動、となり、
ルールや仕組みを守って運営していくことが日常となるのだ。
そうなると、再建は一気に加速する。

この順番、まず対処行動に取り組み、
そのあとで並行してルール・仕組み作りと運営に取り組む、というステップを間違うと、
再建の道のりはますます厳しいものとなる。
 

例えば、厳しい状態の組織で、いきなりルールや仕組みを提示して、
とにかくこれを守りなさい、と伝えても、おそらく全く相手にされないだろう。
むしろ反発を喰らうことになる。

ステップをまとめると
1.目の前の事態をまずは把握する
2.対処行動に取り組む
3.事態を分析する
4.その事態を起こさないための先取りの仕組みを作る
5.仕組み運営と対処行動の両方に取り組む

そのルールや仕組みを作る際に、
「その事態を起こさないために」という目的以外に必要なもの、
いわばステップ「0」と呼べるものが、
 

未来の理想の姿、つまり理念やビジョンを描くこと、である。
「その事態を起こさないために」という目的は、
マイナスをゼロに持ってくるためのもの。
未来の理想の姿、理念、ビジョンは、
マイナスをゼロから一気にプラスへと導くためのものである。

再建には「再建メニュー」はない、と書いたが、
再建を支える核となる理論や哲学は、間違いなくある。
森信三先生の「再建の三原則」などはその最も有名な一例である。
私が再建の際に用いるのは
 

再建の三原則はもちろんのこと、
 

心づくり指導やABC理論、一人一役、リーダー育成、事前指導と事後指導。
そして何よりも「未来思考」だ。

組織再建の道のりはいつも厳しいものであるが、
目の前のことに臨機応変に対応することと同時に、
常に「この先はこうなる、この未来へと必ず事態が進む」という「目論見」が大切。
目の前の状況が厳しければ厳しいほど、人は近視眼的になってしまう。
意識をして、強い意志を持って、常に目指す未来を視界に入れながら、
「遠近両用」で取り組みたいものである。