港町 | ゴトーを待ちながら

ゴトーを待ちながら

尽きかけている命の日々に、こぼれていく言葉のいくつか。

 我々は、港へ向かう緩い坂を下っていった。途中の交差点で、ランドセルを背負った小学校低学年の子供達が列を作って下校していた。

 我々は、日陰を選んで歩くようにしていたが、それでも汗が吹き出して止まらなくなってきた。引き返して、マップを頼りにホテルのレストランまで行こうかと思案していたとき、妻がうどん屋の看板をみつけた。ガソリンスタンドの横にあり、前は広い駐車場だ。

 店内は、予想していたほど広くなかった。カウンター席の一人は漫画雑誌を読みふけっている。椅子席の二人は、ぼんやりとテレビのワイドショーに目を向けていた。

 我々は、小上がりで食べることにした。ビールでも飲んだら、と妻が勧めてくれたが、私は首を振った。かえって汗が止まらなくなるよ。それは夕方の楽しみにとっておくさ。

 ねえ、あなたが卒業した中学校って、ここから遠いの?
 少しね。さっきの運河を上流に歩いていったところにある。どうして? 見たいわけ?
 いや、私は別にどうでもいいけど、あなたが見てみたいんじゃないかなと思って。
 特に見たいとも思わないね。いや、どちらかと言えば、避けて通りたいかな。
 どうして、と妻が目を丸めた。そんなにイヤな中学生時代だったの?