しかし、店を出た後で、必ず僕らは何か買い忘れていたことに気づくのだった。
水溜め、蛇腹、火箸、包丁、グラス、水差し。全部をまとめて計算すれば、できるかぎり節約したにも関わらず、アントナンは六百フランも使ってしまった。
これ自体はそれほどでもない金額であるが、しかしあの二千フランを大きく減らしてしまったことは確かだ。しかも、当時、すでに二千フランは無傷のまま残っていたわけではない。
「千フランもあれば」と彼は僕に言った。「僕とエルミーヌの二人で五か月は暮らせる。彼女が針仕事を、僕が職を見つけられなくてもね。でも五か月もあれば、何とかできるだろうさ」
