もっと詳しく言えば、そのカフェの特別な一角に入るのが好きなのだ。
地下の改札口から入ってすぐ横にある。
見たところ、何の変哲もない店なのだが、そこのカウンターの横に、まったく目立たない秘密の扉がある。
そう、喫煙スペース。
これが、暗くて狭くて穴倉みたいで、非常に居心地がよい。
なんか、秘密の部屋に入ったみたいな感じやね。

金曜日の夕方なんか、けっこう人が多い。
このまままっすぐ家に帰りたくないが、同じ会社の人間と一緒に酒を飲むのは嫌だ……そんな感じの人がぼんやり煙草をくゆらせながらビールだのサワーだのを一杯やってから電車に乗る。
その気持ちはようわかるぞ。
わしもサラリーマンをやっておったからな。

壁の写真をぼんやり見つめながら……
