神様
どうか どうか
子どもたちをお救い下さい…

祈る事しかできなかった…

まだ薄暗い夜明け

みんな気がもうろうとして
いた時

生きてるかー!
生きてるかー!

バサーッと壊れはてた窓ガラスにふたをしていたカーテンを開けられた

お父さんだった

生きてたかー!

もう お互い泣くことしか
できなかった

お父さんが危険をかえりみず
引き波押し波の中
瓦礫とまだ頭まで被る海水が流れる中 探しにきてくれた


お父さん!お父さん!

安心して子どもたちが
泣き叫んだ

オヤジやオフクロたちは?



お父さん!助けようとしたけど 助けられなかった

お父さん ごめんなさい

辛くて 泣くしかなかった



わかった わかった
おまえたち生きててくれて
良かった

よく頑張ったな

辛かった

一緒にいた親、祖母、叔父叔母を助けられず
自責の念だけがあった

早くここから逃げるぞ!
気丈にも お父さんが幼子を
抱き 他のこどもたち、私を
誘導し 海となった瓦礫の中を
一歩ずつ 避難させてくれた

逃げる道という道は無く
瓦礫をくぐり 海水中を

ロープを張り、お互いの身体を

しっかり固定して進んだ



途中 亡くなった方たちが
何人も目にして 心の中で
お経を唱えた…


夜明けが次第に明かるくなり
私とこどもたちは
足の感覚、身体の感覚が鈍く
なり 身体中がケガしていても
感覚がなかった

ただ一歩ずつ 一歩ずつ
安全な所へ

1キロの避難するのに
3時間は過ぎていたと思う


水が無い小高い場所に
着いた時

その先は何も変わらない風景
自分たちがいた背後は
この世のものではないもの

現実なのか まだ錯乱していた

低体温症が襲った私とこども

たちをなんとか暖めようと

お父さんがあちこちから

着替えをもらってきてくれた



お父さん お父さんが一番
辛いのに 本当にごめんなさい

夫の背中を見て 泣くしか
なかった

地震は続いた

夫が乗っていたトラックで
すぐに地震の影響が少ない
病院へ向かった

こどもたちとケガの治療

をしてもらい また現地に戻った


助けられなかった家族

どうか  どうか 生きていてほしい


行方不明になった家族を探し

ながら トラックでの避難生活

が始まった

 

燃料はある分だけ

夜暗くなるまでは焚き火を

しながら暖をとり

まだ瓦礫で埋もれた海へと

お父さん、息子が毎日向かった


早く見つけてあげたい

オヤジ … オフクロ…


そう背中がいつも泣いていた

私たちの前では決して辛い顔

を見せない夫…


日にちが一日一日過ぎ

身内が  現地にかけつけて

きてくれた


数日 こどもたちが何も食べて

なかった


親戚が作ってきてくれた

塩おにぎり…


みんなで少しずつ

泣きながら食べた…


なんでじいちゃんが

なんでばあちゃんがいないの?


みんなに聞かれるたび

胸が張り裂けそうだった


私はあの時

どんな事をしても

救えた方法があったのでは

ないかと

今生きている自分が

暖かい白湯を飲む自分が

ふがいなくて

情けなさと重い十字架を

背負った自分を責めた…


早く家族を見つけたい

早く   早く…


夜中  トラックのラジオからは

各地の安否情報が流れてた


もしかしたら家族の名前が

流れるかもしれない

静まりかえった車中で

夫と静かに聞いていた


どうか  生きていますように

誰かに救出され

生きていますように…