【僧侶視点の小説、独特なり】

  現役僧侶である著者の、第125回芥川賞受賞作。
  生と死、それに纏わる超常現象などを、臨済宗の僧侶である主人公の視点で、周囲の関係人物に巻き込まれながら描く。

  これは僧侶にしか書けない作品、という点で面白かった。
  僧侶という生業の人の超常現象や成仏などに対する考え方を、科学的知見などを交えて炙り出していたり、そんな主人公が自らをプラクティカルだといって一歩引いた立ち位置で語っていたりと、独特な視点が新鮮だった。
  柔らかいものいいの文章も質感が優しく、物語の世界観によく馴染んでいたと思う。

  ただ、小説としてはもう一つ刺激に欠けていたと思う。
  中盤までは一僧侶の日常できごとを語っているだけの平凡さで、最後の非日常的な体験もクライマックスにしては面白みに欠けていた。
  神通力を持っているウメさんも強烈なキャラクターなんだから、もっと生きている時の存在を活かすストーリーを盛り込めばいいのにと思った。

  視点の斬新さという点では充分面白かったけれど、それ以上はなかったかなー。
  でも文章は優れていると思うので、その点が賞の選考に繋がったのかもしれない。