東京やその近辺の一部地域では、7月13日から16日までを「新盆」、あるいは「7月盆」と呼び、お盆の行事を行うことが多い。
これは明治以降に太陽暦を採用したことで、新暦の7月15日がお盆となったのだという。
だが、この風習は東京以外では広まらなかった。
しかし、少し前までは東京では、家の前で焙烙(ほうろく)という素焼きのお皿に麻幹(おがら)を燃やして、お鈴(りん)を鳴らしながら、「いらっしゃいませ」と祖先の霊を呼び込む老人もいた。
そんな新盆の最後の日は、のんびり過ごそうと思い、夕方から最近できたワイン専門店に行った。
そこではワインの角打ちもやっていて、グラスで好きなワインが立ち飲みできる。
外は暑くても、お店の中は涼しく、心地よい。
せめても、この時間だけでもと、常連客たちと楽しく会話しながらワインを飲んだ。
常連客の中には、今日のお盆のことを知らない人もいて、話はやや混乱しかかったが、若い女の子が、
「それなら知ってますよ。うちのおばあちゃんがいつも仏壇に、七夕過ぎになるとほおずきや足を生やしたなすびとかきゅうりを飾っていましたから」
と言ってくれた。
彼女は、東京生まれの東京育ちのようだ。
自分は、久しぶりに美味しいワインを飲んで、機嫌よくお店を出た。
すると目の前に、1匹のトンボが現れ、まるでナビゲーターのように自分を誘導してくれた。
これはきっと、ご先祖様がトンボに姿を変えて現れたのではないだろうか、などと空想しながら帰路についた。
今夜は、外で送り火でもしよう。
焙烙も麻幹もないので、ささやかだがアロマキャンドルの灯りを点しながら。