先日、偶然にバス停でKくんと逢った。

 

 Kくんとは、近所で若者向けのBARを経営している人物で、昔からの知り合いである。

 

「この前はどうも。楽しかったよ。その後は、いかがですか」

 

 と、初めて彼のお店に伺った時のお礼と挨拶を述べると、Kくんはちょっと寂しそうな表情になり、

 

「こちらこそありがとうございました。実は、今月でお店を閉める事にしたんですよ」

 

 と話した。

 

「えっ、そうなの。繁盛しているような感じだったけどね」

 

 と自分が言うと、

 

「お店に関しては、続けていける程度の儲けは出ているんですが……」

 

 などと、苦虫をかみつぶしたような顔で、Kくんが語る。

 

 要するに、親の介護で実家に戻らねばならなくなった、とそういう事なのだそうだ。

 

「へえ、君の実家は確か九州だったね、遠くなるよね。でも、いいお店だったのに、残念だね」

 

 自分がそう言うとKくんは、

 

「店の方は、人に任せようと思ってるんですよ。後継ぎですね。あのほら、この前にきていた女子3組がいたでしょう。あの子たちが後を継いでもいいって言ってるんですよ」

 

 と言いながら、ソフトハットのつばを指で押し上げる仕草をした。これは、彼の昔からの癖である。

 

 それはよかったね、というような事を話しながら、自分はやって来たバスに乗り込むKくんを見送った。

 

 

 なんとなくこんな風にして、若者達のコミュニケーションの場は繋がっているのかもしれない。

 

 それにしても、あの時、偶然スーパーでKくんに声をかけていなければ、彼のBARに伺う機会はなかったろうし、またこんなところでその顛末を知ることもなかった。

 

 偶然とは、面白いものである。